石ころの行先
「宮崎 知里です。ここで子供達と呉服屋を営んでいます。
一応、一番の年配って事で、この商店街の問題事とかは私に来ています。
ふふ、でも、どうか気は遣わないで下さいね?」
大きなお店に、沢山の着物が並ぶ店。
隣には秋吉と、目の前には真っ白な髪に真っ赤な目をした、着物の女の人が立っている。
初めましての挨拶をするよって秋吉が言っていた。
目の前の女の人は、年配っていうけど20歳前半くらいに見えた。
「ご丁寧にありがとうございます。
僕は鳳 秋吉です。今週末より、喫茶店を開業させてもらいます。
この子は息子の春樹です。
ほら、春樹。ご挨拶は?」
「…………」
目の前の女の人を顔を見るのが、ちょっと嫌だと思って秋吉の後ろに隠れた。
なんか、優しく笑うところ、ママに似てて嫌だ。
「はは、ごめんなさい。この子、女性には照れてしまう年頃みたいで。」
「あらあら、可愛らしいですね。
なんだか息子の小さな頃を思い出します」
「それはよかった!ところで、お子さん達は今どちらに?」
「あぁ、皆丁度、学校に行ってしまってて。夜には帰ってくると思うのですが…」
淡々と進む大人の話は、退屈で嫌いだ。
大事な話は、いつも俺を置いて進めちゃうんだ。
退屈で、道端の石を蹴り飛ばして遊んでいた。
でも思ったより、石が遠くへ飛んじゃって、思わず追いかける。
「よければ今夜、挨拶も込めてうちの広間で宴会を開かせてください」
遠く、後ろの方で秋吉の話す声が聞こえた。
それでも転がった石を追いかける。
やっと飛んだ先まで辿り着いて拾うと、ふと視線を感じた。
「ねぇ。」
春樹視点からのスタートになります。
幼い頃の物事の見え方を思い出しながら、あの独特な世界観を書きたいです…。