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宝くじ当たりました!!  作者: ありあ翼
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5


‥‥言ってしまった‥‥。


考えるより口が先走ってしまった。

顔に熱が集まるのを感じる。お酒のせいでないことなど理解している。


ヤバいヤバいヤバい!!


時間が先に進まない。こんなときにドラマのような”気付けば家にいる”などの編集が羨ましくなる。

現実逃避をしている場合ではない。でも、恥ずかしすぎて、そうしなければ立っていられないような気持ちなのだ。



「アハハ、いいね、意外性っていうの?面白い!!」

「は…?」

「朝の6時まで仕事してるから会うのは無理だけど、連絡はできるよ。


 はい、ここに連絡ちょうだい」


胸ポケットからボールペンを出したイケメン店員さん。その横に名札がついていて、この人は佐々木という名前らしいと、いまさら思う。

渡されたレシートの裏に書かれた11桁の数字。


「え?佐々木さん…?」


「うん、佐々木です。じゃあ、ありがとうございました~」


レジ袋を持たされ、頭を下げられると、条件反射で歩き出す。



「あれ?」

首をかしげながらコンビニを出ると、自動ドアが閉まった。

その音で我に返り、振り向くけれど佐々木さんはレジにはいない。

店内を見渡しても見つからなかった。












教えてもらった携帯番号に帰り道に電話を掛けた。が、案の定、仕事中の佐々木さんは出ることはなかった。

それどころか、待てども待てども折り返しも来ない。

朝の6時って言ってたよね?いったい何日後の6時だよ!!?


ハッ!!実はキモイって思って適当にごまかしたのかも…。

あり得る。


忘れよう、そしてあのコンビニにももう行かないでおこう。

このご時世、仕事って大事だし。邪魔はしません、できません…。








でも、イケメンだったなぁ‥‥。

あの人の子ども、絶対可愛いんだろうな。

もっとボンキュッボンで、綺麗な顔だったら私でも相手をしてもらえたのかも。なんて考えたってきりがないけれど。




「はぁ…」


今夜もバーに飲みに出たが、お酒だけが進む。

いいことは続くと思い込んでいたが、よくよく思い出してみたら、厄年中だった。宝くじのせいで忘れていた。







まだ夜は肌寒い日もあるけれど、もうすぐ夏がやってくる。

バーからの帰り道、トボトボと歩きながら空を見上げた。

星が見えない。

都会は四角い空なんて比喩をよく聞いたけれど、本当にそうだ。


田舎みたいに大空に星がキラキラ輝くなんてないし、お隣さんだって知らない。

毎日いろんな人とすれ違って、満員電車でギュウギュウに押され、関心も持たないし持たれない。


だから、忘れてしまえばいい。


子どもを産むなんて高望みだったって。笑ってしまえばいい。






「泣きそうな顔ですね」




コンビニまで距離500m。

空から視線を移せば、漫画のように‥‥


ちょっと意地悪そうに笑った彼がいた。










トクンと鳴ったのは、心。

無意識に決めてしまっていたのかもしれない。


この人の子どもを産もうって…!

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