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さんのに

 

 

 

 まさかまさかのマサカリ投法。いきなりとんでもない話題をブン投げられ、状況が理解できないでいる俺。


「ラボデハタラケ? なんですか、その冗談」

「冗談ではない。大真面目だ。放課後はこのメメメのラボに来て、一緒に仕事をするんだ」

「仕事って……」

「私は反対っ! 反対反対反対反対は~ん~た~い~っ!」


 両腕を上下に振り、強く強く拒絶するメメメ。その姿はデパートの玩具売り場で泣き叫ぶ子どものようだ。

 しかし、コココさんは駄々をこねるメメメに同情一つ見せず、「そうやって嫌がる姿も可愛いな、メメメ。二人の思い出として大切に保管しておこう」と画面を録音モードに切り替えた。

 何なんだ、この状況は。


「えーと、コココさん。俺もここでやんわりと拒否権を行使させていただきたいんですけど、ダメですかね?」

「何を言っている直里。お前とはすでに朝、契約を交わしたではないか」

「またまた~。確かに、気にかけるとは言いましたけど、それだけだったじゃないですか。具体的には何も……」

「ん? 本当にそうだったかな」


 と、ここでコココさんがスマホをカメラの前にかざした。

 そこには玄関先での今朝のやりとりが映っていた。



『直里に妹のことで頼みがあるんだ』

『妹……ああ、俺と同じA組でしたっけ』



 スマホから聞こえてきたのは、俺とコココさんの声だった。

 っていうか、この会話、今朝のだ。


「コココさん、いつの間に録音を」

「契約内容についてはきちんと残しておかなければいけないからなフフフ」


 コココさん、その笑み何ですか。邪悪すぎるんですけど。

 と疑問に思ったのもつかの間、俺はすぐにその意味を理解した。



『妹はその非凡さ故に他人とコミュニケーションを取るのが苦手でな。学校生活がうまくいっているか心配なんだ。気にかけてやって欲しい」

『別にいいですけど』

『意外だな。てっきり断られるものだと思っていたぞ』

『…………ラボに入るラボに入るラボに入る!』



 ……えっ、何すか、これ。


「ほら」

「『ほら』じゃねえええっ! 音声編集して作った偽の会話じゃねえええかあああっつ!」

「ん? 聞き捨てならんな。証拠でもあるのか?」

「証拠も何も最後の俺の一言、明らかに会話の流れから不自然だし、そもそも急に叫ぶ意味が分からないでしょうがっ!」

「そんなこと言われてもお前が言ったんじゃないか、なあメメメ」

「……お姉ちゃん、もし断ったら?」


 その時、メメメがディスプレイの前に近寄った。


「その時は、来月からの小遣いは無しだ」

「……私に死ねって言うの?」

「その替わり、直里を雇えば、今後は無条件で毎月、一定額の小遣いを約束する」

「……いくら?」

「仕事の出来次第だ」

「……でも、こいつ男だぞ。放課後に二人っきりなんて、お姉ちゃんは私がこの鬼畜に襲われてもいいって言うの? 妊娠したらどうするのよっ!」


 あのさ、出会った時からそうだけど、何であなたはそう俺を悪く言うんでしょうか。過去にあなたを虐めたりしたんでしょうか? 全然、身に覚えがございませんが。


「安心しろ。流れに沿って生きるのが奴の信条だ。高校を中退して工事現場で働くリスクを取ってまで一時の性欲を満たすなんて愚行は起こさない」

「ほめてねえ」

「まあタダ働きもかわいそうだから、日々の食事は私が作ってやる。その替わり、メメメのことを頼んだぞ」

「……はぁ」

「よし、契約完了だな」

「まっ、まだ私はOKしてな……」

「なら断るのか?」

「……も~分かったよっ、雇えばいいんでしょっ! お姉ちゃんのバカバカバカッ!」

「ふてくされる顔もかわいいぞ」

「にやけている所すみませんが、そもそもの話していいっすか?」

「何だ」


「こいつ、ここで何をしてるんすか?」


  

  

   

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