さん こうして俺は時河萌々女のラボに連れて来られた。(修正ver)
メメメに連れられてやってきたのは特別教室棟の裏で『コ』の字で説明すれば北東部分、普通の高校でいえば体育館裏に当たる。
人が立ち寄ることのないこの辺りのエリアは、アニメの告白のシーンとしては最適だ。「おい、急にこんな所に呼び出して、どうしたんだよ」と尋ねたらヒロインが急に振り返って俺を押し倒し「ど、どうしたんだ急に」と慌てる俺に構わず目をとろんとさせてシャツのボタンを一つずつ外していく……っていかんいかん再生するディスクを間違えてしまった。
とにかくだな。俺は今、そんなスリーセブンの7が二つ揃ったリーチ状態にある。人気のない場所まで女子に腕を引っ張られてる辺り、すでに姉から妹譲渡のお言葉まで頂いている辺り。
そんでもってメメメは美少女だ。「全次元一可愛い」という姉の言葉は嘘じゃなかった。こんな妹なら俺だって欲しい。そんで一日百回は「お兄ちゃん」と呼ばせたいものだ。
しかし最後の目が「7」に揃いフィーバーフィーバーカーニバルかと思ったら、大量のメダルが出てきて逆にテンパるみたいな……うーん、うまいこと言えたと思ったけれど、イマイチだな。
つまり俺が言いたいのはメメメは恋愛対象としては圏外だということ。
スマホ振り回して電波を探してもせいぜい一本立つか立たないかという山奥の旅館クラス。
くそう、コココさんめ。妹をくれてやるなんてあっさりとほざいたのはこういうわけだったのか。仕返しに今度おっぱいに肘を当ててやる。
メメメに連れられてやってきたのは特別教室棟の裏で『コ』の字で説明すれば北東部分、普通の高校でいえば体育館裏に当たる。
人が立ち寄ることのないこの辺りのエリアは、アニメの告白のシーンとしては最適だ。「おい、急にこんな所に呼び出して、どうしたんだよ」と尋ねたらヒロインが急に振り返って俺を押し倒し「ど、どうしたんだ急に」と慌てる俺に構わず目をとろんとさせてシャツのボタンを一つずつ外していく……っていかんいかん再生するディスクを夜用と間違えてしまった。
とにかくだな。俺は今、そんなスリーセブンの7が二つ揃ったリーチ状態にある。人気のない場所まで女子に腕を引っ張られてる辺り、すでに姉から妹譲渡のお言葉まで頂いている辺り。
そんでもってメメメは美少女だ。「全次元一可愛い」という姉の言葉は嘘じゃなかった。こんな妹なら俺だって欲しい。そんで一日百回は「お兄ちゃん」と呼ぶのを強制するだろう。
しかし最後の目が「7」に揃いフィーバーフィーバーカーニバルかと思ったら、大量のメダルが出てきて逆にテンパるみたいな……うーん、うまいこと言えたと思ったけれど、イマイチだな。
つまり俺が言いたいのはメメメは恋愛対象としては圏外だということ。
スマホ振り回して電波を探してもせいぜい一本立つか立たないかという山奥の旅館クラス。
くそう、コココさんめ。妹をくれてやるなんてあっさりとほざいたのはこういうわけだったのか。仕返しに今度おっぱいに肘を当ててやる。
「……ふう、これで一安心」
ほっと肩を下ろしてメメメが立ち止まったのは真新しい建物の前だった。
『mememe lab.』と書かれた扉……メメメのラボって、この建物もしかしてメメメの所有物なのか?
戸惑う俺をよそにメメメは扉の中央にある黒いカメラのレンズに視線を合わせた。
カシャッ、と小気味いい音がして、ロックが解除された。
……嘘だろ。ここ学校だよな。
「今のってひょっとして」
「……光彩認証」
おやまあ、SF映画でしか見たことのないような最先端技術ですこと。
お邪魔しますと足を踏み入れたそこは昭和感満載、十二畳程の小さな和室だった。
左右には資料を保管する鉄製の棚やパソコン、真ん中にコタツ机が置かれている。
バイオメトリクスの必要あんのか? 多分開けっぱでも誰も入らんぞ。
いぶかしげに部屋の中を見渡している俺に構わず、メメメは店舗に置いてあるような回転式のメガネスタンドにメガネを差し込むと、畳にばったりと倒れた。黒い髪がふぁさっと広がる。
「……つかれた」
身体を左右に揺らせながら「つかれたつかれたつかれた」とつぶやくその姿はデパートで駄々をこねる小学生そのものだ。足をバタつかせるとパンツ見えそうなのでやめてもらえませんかね。
「はぁー、しんどい。おやすみぃ……」
何も説明もないまま連れて来られた俺に一切構うこともなく夢の世界へ。勝手過ぎるにも程があるぞ。
「おい、起きろよ」
身体を揺さぶるが返事がない、ただの屍のようだ。
「メメメさんよー」
へんじがない、ただのしかばねのようだ。
「起きないとおにーちゃんがエッチなことしちゃうぞー、ぐへへ」
ただの屍のようなので、ちゃぶ台にあった鉛筆で手の平を押してみることにした。直接触れない辺り、紳士、俺。
ぐりぐり。
……おっ、時河萌々女が抵抗している。嫌がってるようだ。
「やめろやめろー……うふふふ、でも気持ちいいぞよ」
……なんの夢見てるんだよ。
これなら起きるだろうとぐりぐりの箇所をほっぺたに変えてみる。
「だからダメだってえ……そんなものでほっぺたを刺したらうみゃうみゃ……うあっ!」
だからなんの夢みてんだよ! という怒りを込めた後頭部チョップ。会心の一撃が眠り状態から現実に引き戻す。
「な、何すんだよお!」
やっと目覚めてくれた。
やれやれ……
「あれ……ここ、私のラボ。うわ、いつの間にか人類に侵略されてるっ!?」
「あたかも宇宙人のような発言ですね」
君も僕と同じホモサピエンスだよ、と鏡のアプリを突き付けてやろうとしたが、メメメは小動物らしい敏捷な動きで俺から距離を取った。そして、すちゃっとさっきのメガネをかけると、THE・ガキだった雰囲気が一転した。
「……お前、直里真也だろ」
「そうだけど……」
ギッと鋭い目つきでこちらを睨むメメメ。ちっこいくせに大人ぶった態度。お前は不思議な薬で小学生の姿に変えられた類のやつか? でも俺は黒づくめの男じゃないぞ。名前もお酒じゃないし。
「お姉ちゃん、何か言ってなかった?」
「お姉ちゃん? ああ、コココさんのことか。そうだな……」
俺はお前の様子を見てくるように頼まれただけだが……
あ、そういえば。
「『メメメをくれてやる』って言われたけど、ひょっとしてそのこ……痛えっ!」
不意打ちの蹴りを膝に受け、痛みの余り叫んでしまった。
そんな俺の正面で茹でダコ並の赤い顔で「この変態っ!」。
手が早すぎだろ。
「わ、私をもらうって……な、何言ってるんだこの変態エロダヌキッ!」
「言ったのはお前の姉ちゃんだっ! 悪いのは俺じゃないっ!」
「お姉ちゃんの言葉を真に受けた時点でNGなんだよっ! これだからリアルは嫌なんだ。もぉ~っ! 車のプレス機で一次元減らしてアニメの世界に送り飛ばしてやりたいっ!」
いや死ぬって。普通にヤクザ映画のやつだろ、その手口。
「お姉ちゃんッ!」
「……おお、メメメか」
スピーカーから聞き慣れた声。デスクトップ画面にコココさんの顔が映っている。スカイプ通話か。
お姉さん、よくもまあ騙してくれやがりましたね。
「ほらっ、ちゃんとこれ連れて来たから、約束通り今月分振り込んでよ」
「教室の中には怖がらずに入れたのか?」
「と、当然でしょっ!」
「嘘付け、『ううううう』とか言って耳塞いでたくせに」
「うるさい! もう片方の膝も蹴ってやろーかっ!?」
おお、こわ。
「まあいいさ。小遣いは後で振り込んでおいてやろう」
「……よしっ」
「直里、どうだ私の妹は。理性を忘れて無理矢理手籠にしたくなる可愛さだろう?」
「ええと、全力で否定させていただきます」
まあ美少女というのは否定しないが、俺にロリ属性はない。性格に難ありまくりだし。
「じゃータヌキ。お前の用は済んだからもう帰っていい、バイバイ」
「はっ? 何だよそれ。っつーか、何で俺をタヌキって」
「直里真也をラボに連れてくれば今月分のおこづか……給料を払ってくれるって言うのがお姉ちゃんとの約束だったの。だからもう用済み」
「なぜ給料と言い直した。っつーか、俺をそんなことで」
「まだ話は途中だぞ、二人とも」
兄弟げんかを制す母親のように、コココさんの声は少し怖めのトーンだった。反射的に俺とメメメは姿勢を正し、気を付け状態になる。
「途中って……お姉ちゃん、もう私じゅーぶん頑張ったでしょ。これ以上何をさせる気?」
「別に大したことじゃないさ。直里」
「はっ、はいっ、サ―ッ!」
「お前、このラボで働け」
「サー、イエス、サ―ッ! …………えっ?」