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⑫―5

 

 

 

「メメメ、やめろ」

「うあっ、な、なぜ叩くっ!?」

「そんな殺気立った目で青野さんを見るな、怖がるだろうが」

「そ、それは不平等だぞっ。なんで私だけ……」


 ぐう、と頭を抱えてその場に縮み込むメメメ。

 すると青野さんが俺の肩を叩いてきた。


「真也君、わ、私も不平等だと思う」

「え?」

「ど、どうぞお願いします」


 そう言ってなぜか頭を差し出される。


「えっと、何ですかね」

「平等に私の頭を叩いてください」

「いやそれはちょっと……」

「真也君、お願いします」

「じゃ、じゃあ……」


 言われるがままにその小さな頭をポンと叩くと青野さんは「うふふふ~♪」と笑ってしゃがみ込んだ。 何がそんなに嬉しいのかはナスカの地上絵が描かれた目的よりも謎だが、その笑顔に鼻血が出そうでした。

 って、こんなことしている場合か。


「コココさん、あの」

「ん、どうした変態王子」

「なんですかその呼び名……あの、やっぱり俺、青野さんを助手にしない方がいいと思います」

「えっ、それはダ……ダメだっ!」


 俺の言葉にすぐに反応したのはコココさんではなかった。青野さん……正確に言えばうさのんだった。


「直里てめえ、本人の前でどうしてそんなひどいことが言えるっ!? 茜が嫌いなのか?」

「いや、そういう訳じゃなくてだな」


 性格が一変したかのような青野さん。手に付けたうさぎのパペットが俺の胸に何度も体当たりしてくる。何が起こったのか理解できないという顔のメメメ、そんでコココさんは「また出たか……」と眉間に手を当てている。


「バスケ部のマネやっているだろ。うち強豪だから部活忙しいじゃんか。その上、メメメの助手まで受け持ったら、プライベートの時間なくなるぞ」

「なんだ、そういうことなら心配はいらねえぜ。そこのボインなお姉ちゃんが『部活のない時間だけでいい』って言ってくれているからな」

「だ、だが自分の時間が減るのには変わりないと思うぞ。そ、それにひょっとしたらこれから大事な予定が沢山入るようになるかもしれないだろ」

「はあんっ、大事な予定って何を言ってるんだ?」

「いや、だからそれは……好きな奴とデ、デートとか」

「……え?」


 うさのんの動きがぴたりと止まった。俺を見ている青野さんの顔がみるみるうちに赤く染まっていく。


「そ、それはどういう」

「おい、バカ助手っ!」

「うぎゃいっ!」


 俺の膝に回し下痢を食らわしたのはメメメだった。


「今のはマジで入った」

「私の断りなく青野をデートに誘うなっ!」

「はっ、いや別に誘ってないだろ……好きな奴とって言ったんだ」

「だから……ん?」

「真也君……」

「と、直里真也は言っているがどうする青野茜、助手を引き受けるか?」

「や、やります」

「お、おい俺は青野さんのためを」

「や、やりますっ!」


 俺の言葉に青野さんは聞く耳を持たずだった。これでは流れを変えようにも無理だ。

 しかし謎だ。客観的に考えても青野さんにメリットのない話なのに、本人はやると言ってきかない。

 もしかしてコココさんに弱みでも握られているのか?

 

「コココさん、でもメメメが」

「……別に、いい」

「おいおい勘弁してくれよ。さっきはあんなに嫌そうだったじゃないか」

「……いいのっ!」


 どんな風の吹き回しか、真っ先に反対していたはずのメメメが意見を変えるなんて。

 俺がトイレに行っている間に何が起こったんだ。


「決まりだな」

「……青野さん、ちょっと」

「おい、どこへ行く」


 俺は彼女の気持ちを確かめるべく、青野さんを外へと連れ出した。

 

 

 

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