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アプリ坊主  作者: 蚊取TENGO
第一章
9/82

1-09 万南無高校VS雲葛高校 05『密航江戸村』

―― 一方対戦相手である心技&翼子ペアのほうはなんだか急に対戦相手が犬を連れて出て行ってしまったのでリングに取り残されていた。

ボールと友達になれる能力とは言っても、そんなにすんなり友達になってくれるほどこの世の中は甘くは無い。うざいだのキモいだの言われて追い返されたり、着信拒否にされたりするのが関の山なのだ。

だが今は急を要する。球と一秒でも早く友達にならなければならないのだ。




翼子はセコンドからバッグを返して貰うと、飴玉を取り出した。


『ようし、よしよし~♪かわいいでちゅね~♪』


そして、包装紙の上から擦る。ボール(飴玉)とのスキンシップだ。ポイントが入ったかどうかを確認すべく、ちらりと心技タイのほうを見たが、彼は端末からポイントを確認すると気落ちしたようにうつむいて首を横に振った。どうやら、有効ですらないらしい



『それなら、これでどうだ!』


次に翼子は飴玉を包んでいた包装紙を剥がすと、舌の上で転がし始めた。


『ボールは友達ぃ~~!』


れろれろと舌の上で飴玉を転がしていくうちに気持ちが昂ぶっていく


『ん…んっ?』

『ん”ん”っ??友達とても美味しいぃぃ~~!?』

『すごいっ!友達すごいっ…!』

『あ”あ”っ!気持ちいいぃぃぃ!!』


翼子はそう絶叫すると、びくんびくんと体を痙攣させてリングの中央に崩れ落ちた。


「翼子~~!しっかりするんじゃああ!!」

「友達をしゃぶって逝く奴がおるかぁ~~!!」


それを観察していた心技タイは翼子にアドバイスを投げかける


『頂戴ぃぃ!も”っ”ど友達頂戴ぃぃいぃ!!』

『飴”ェェェェ!!』


意識もうろうとしていた翼子は這いずるようにして飴玉の入っているバッグのほうに向かった


「落ち着くタイ!」

「飴玉ばかりが友達では無いはずタイ!」


心技タイは、極度の飴玉依存症になりつつあった翼子の身を案じて、飴玉と翼子の距離を取るべく、リングの中央にあがると

翼子の足をつかみ、リングの中央に引きずり戻した。

そしてうつぶせになってもがいている翼子の腰のあたりに馬乗りになり、ギブアップしない程度にキャメルクラッチをかました


『心技…私、間違ってたよ…』

『飴玉が、飴玉だけが私の友達だと思っていた…』

『でも、違うんだ…』

『世界にはまだまだたくさんのボールが、私を待っている』


翼子は、はっと息を飲んだ。そして、いかに自分が盲目的だったのかを悟った


翼子に馬乗りになった心技は、目を閉じ、腕を組んで翼子の言葉に耳を傾けていた。観客席も静まり返っていた。


『私…今まで色々なボール達と出会って…』

『でも、友達になりきれず別れていったりしたの…』


そういうと、翼子はちらっと、心技タイのほうを向いた。


「続けてタイ。」


目を閉じたまま腕の左手の指を、腕を組んだまま指し示す形にして静かにそう諭す


『あ、はい』


背中の上に乗っかった心技を、口を開きながら無表情で様子見していた翼子は、ゆっくりと話始めた。


『ある時、小高い丘の上で、謎のブラジル人に出会ったわ…』

『その人が言うには、ここから下の町に向かって、サッカーボールを蹴っ飛ばして欲しい、と。』

『【世界に羽ばたけ、翼子。】って言っていたわ…』


試合の流れを食い入るように見守る観客。さらに翼子は話を続けた


『私はおもわず、警察に通報したうえで、その謎のブラジル人を、蹴っ飛ばして逃げた…』

『お前が羽ばたけや!!』って叫んで丘の上から落としたの…』

『ジャコウネコがいなかったから普通の猫のウンチもついでに落としておいた』

『…帰りに買った缶コーヒーの味が今でも忘れられないわ…でも、』

『でも私は…』


翼子は両手で顔を覆うと叫んだ


『友達であるボールを見捨てて逃げたのよぉぉぉ!!』


翼子は号泣した。観客席も一同に涙を流した。来客用のテントの中にいた会長も涙を流していた。


『でもあきらめない』」

『私はボールと友達になるって決めたんだから・・』

『こんなの全然痛く無い!』

『ボールは友達!痛く無い!!!』


完全に立ち直った翼子は、そういって立ち上がろうとしたが、背中に乗っかっている心技タイが重過ぎて立ち上がることが

できなかった。

心技タイは翼子がさっきから飴にしか目が行っていないことを見抜いたのだ。


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