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アプリ坊主  作者: 蚊取TENGO
第四章
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4-21 TだSこにあるOき去りの幽体

最近の電話というのは本人の声に限りなく似せた機械で合成した音声である。いくら相手の事を思っていようが、助けを呼ぼうが、ある意味あなたの声は永遠に届かないのだ。

故に真の心を届けようとするならばそれは直接相対せねばならぬ物であり、四角い箱を頼ったその時から用件の収束という意味ではどこかしらの不確定要素を含むものになるのかも知れない




{(ジリリリリン♪)}



例の件以来惨憺たる有様の国際競技場のVIPルームに電話が鳴り響く。

従者から受話器を受け取った 珠須(たます) 雪次郎(ゆきじろう)の顔色が一変した。




「よぉ~?、お久しぶり」



『…変わらずだな』

『親が観たら悲しむぞ』



「…チッ。糞が」

「どのクチがそのような事をほざくかなぁ?」

「あのなぁ~?」

「俺達の親は」

「赤ちゃんポストだろぉがぁ~?」

「ああ~。そうだった」

「裏切り者の珠須先輩は」

「遊びで施設に入ったんだっけ?」

「親が人間の奴は、言う事が違いますなぁ~?」




※【赤ちゃんポストとは?】(一部ウィキペディアより抜粋)


諸事情のために育てることのできない新生児を親が匿名で特別養子縁組をするための施設、およびそのシステムの日本における通称である。

ここの日本においては少し事情が違うようで、主に権力者や政治家が中高生相手に妊娠させた時、その役割を果たすようだ。

なにせ欲望を満たす為に権力を手に入れるような連中だ。それの欲するままに使われるのは正にこの世の歪みであろう




『…悲しい事を言うな』

『お前も立派な人の子だ』

『人間の血が通った、人間の子だ』



「はぁ~?何で上から目線なんですかぁ~?」

「…人間の血が通っている親が」

「自分の子供を鉄の箱に放り込むかよ」

「それは化け物のする所業だ」

「そんな腐れ外道を親と思えと?」



『…憎しみを捨てよ』

『…弁護士の夢はもう叶ったではないか』

『例えもとの職場には戻れずとも』

『私が向こうに渡りをつけてやる』

『そこで穏便に暮らすのだ』



「俺が外国で暮らせば、日本が「平和」になるからなぁ~?」

「政治家もその御子息も、乱交パーティーし放題だ」

「いくつポストがあっても足りねえよなぁ~?」



『……』



「あー、あー、今日も日本は平和ですってか?」

「もみ消しまくった挙句に」

「「日本の闇」とかでごまかすんじゃねえよ。滅びろよそんな国」

「あんたの兄貴だって…」



『…よしなさい』



「……。」

「…俺が正義を執行しなくて他に誰がやるというのだ」

「どこぞの裏切り者の先輩が、もう少ししっかりしてくれれば」

「心を踏み潰されながら生きていく少年少女が」

「鉄の(しせつ)から生まれずに済むのになぁ~?」



『…私だって闇を取り払おうと』

『白く染め上げようと努力している』



「あまり笑かすなよ、先輩」

「毒をいくら白く、透明にしようとも」

「毒は毒のままだ」



『…いいから早く 人質(けんま)を解放しなさい』

『あの子は何も関係ない。…それに』

『正義も何もおまえがまず、大犯罪を犯しているではないか』



「俺はよぉ~。いずれ法律とやらで裁かれてやんよ」

「だがなぁ、先輩。」

「それは、カネと権力ですべてをうやむやにしている連中をすべからく」

「この世から消し去ってからだ」

「…忘れるなよ」

「そのときにあんたはどこに立ってんのかなぁ~?」

「じゃあな、先・輩!」



『…!待てっ!』

『話はまだ……』




この世の運というものは一人で完結するものでは無い。不幸のままに生涯を終えようとする人間の間際に突如10億の大金が舞い込んで来てプラスマイナスゼロになったりはしないのだ。

とある一人の幸福の方向に歪んだ力場が収束するときに、また別の人間の不幸を以って 対価と成すこともある。この世は昔からそういうふうに出来ているのだ。


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