4-20 向川高校VS灯之台高校 5『ゼロ爺連』
思いもかけぬ出来事に人は皆弱いものだ。何気ない日常に平坦な人生にふと気がついてみれば、遠くで誰かが神輿を担いで大はしゃぎしている。
あなたはそれをとても楽しそうだと思い、すりきれた魂に陽を充てるようにして近づく。
たとえそれが人為的に作られた物でも構わない。いやむしろ、それを考えないようにしたほうが、余程そこに近づけると本能的に知っているのだ
{……もしもし、アプリ坊主連盟さん?}
{ワシは今しがた、金色のオーラを出した者じゃが}
「はい、こちらからも観測できております」
「ハワイ旅行おめでとうございます」
{…それで…あのぅ}
{つかぬ事をお聞きしますが、ダブルアップはできますでしょうか?}
金色オーラの景品であるハワイ旅行は通常、3泊4日であるが、ダブルアップという手順を踏まえる事で、どんどん滞在日数を増やすことができる。
それはもう、どんどんどんどん増える。
無論、失敗すれば旅行自体が水泡に帰すが、せっかくなのでということでチャレンジする人も、まぁまぁ居るのだ
「勿論できますが、お客様の場合ですと…」
「まず、TENGOを叩いてくださるかたを」
「先に見つけねばなりません」
本来ならばパートナー、つまりこの瓦割り屋のお爺さんの場合だと、嫁であるお婆ちゃんがTENGOを叩く事になるのだが
{はい…}
その当人は数年前、バンジージャンプにチャレンジしている最中、心臓発作で亡くなっている
{今探してきますぢゃ…}
「はい、御武運をお祈りしております」
老人が通話を切り、ひょこひょこと歩き出すとそこに
『ふぇっふぇっふぇ…』
『お困りのご様子で』
一人の老婆が現れた
{なんだばばあ}
{この小説本当にジジババしかおらんな…}
『…?』
『ナニを言ってなさる』
『探しておるのじゃろ?』
『叩ける奴を…!』
アゴを伸ばす老婆
{探してはおるが、貴様の様なばばあでは勤まらんわ}
{誰か他におらんかのー?}
『じゅぼじゅぼ…』
{…!ちょっとナニ}
{ナニしゃぶってんだコノヤロウ!!}
『ふぇっふぇっふぇ…』
『それはお買い上げになったお客様だけが解るのでございます』
{言ってる意味がわかんねぇんだコラ!!}
キャラが崩壊する2人
{…やめっ…ひっ}
{やめてくださいまし…}
『じゅぼぼぼぼ』
{うひっ…}
{うひっ…}
{うひひひひぃーんぬ!!}
ポコチンポコチンと、緑色のオーラを放つじじい。今時緑色では擬似連にも満たない。
『ふぇっふぇっふぇ…』
『出ましたな』
『これでそなたも、認めざるを得まい』
{…ああっ!}
{やるなおぬしよかろうそなたと}
{叩こうでは無いか。ハワイを懸けて}
『もしもしハワイですか?』
{ああっ…いつの間に}
いつの間にか端末をくすねられていた爺。
「はいアプリ坊主連盟です」
『みつかりましたですぢゃ』
『それでは早速…』
「はい。いつでも良いですよ~」
「そちらのTENGOを抽選モードに変えました」
『シャッッ!!』
『(ガツン)』
さっそく一撃目をかます婆。
『(ポコチュワワワ)』
じじいの目がぐるんと白目を向き、一周して元の場所に戻る。どういう構造になっているのかは知らない。とにかく白目のままにならなければ倍々方式でハワイが増える。
{う痛ぅぅぅ…}
{いきなりとは何事じゃ}
『シャオラッ!!!』
『(ガツン)』
『(ポコチュワワワ)』
{まてまてまて}
『シャオリホイっ!(裏拳)』
『(ガツン)』
『(ポコチュワワワ)』
聞く耳を持たない婆
{ひぃーっ!ひぃーっ!}
{ゆ、ゆぐっ!!}
{連続でゆぐぅぅうう!!}
股間を押さえて悶絶する爺。いろとりどりのオーラがそこらへんに混ざり合う。
『押さえんなや!!』
『股間押さえんなや』
『叩けんじゃろがい!!』
{そうは言われましても…}
『……』
『あっ、あんな所にセクシー女優が!!』
{ファッ!?}
{どこじゃどこじゃ}
『(ガツン)』
『(ポコチュワワワ)』
{おほぉーっ!!}
{出ない。…もう出ない}
『…根性の無いじじいじゃの』
『…どれ、今何日くらいまでアップしたかの』
老婆が端末を見やると、そこには48日当選の文字が浮かんでいた




