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アプリ坊主  作者: 蚊取TENGO
第四章
78/82

4-20 向川高校VS灯之台高校 5『ゼロ爺連』

思いもかけぬ出来事に人は皆弱いものだ。何気ない日常に平坦な人生にふと気がついてみれば、遠くで誰かが神輿を担いで大はしゃぎしている。

あなたはそれをとても楽しそうだと思い、すりきれた魂に陽を充てるようにして近づく。

たとえそれが人為的に作られた物でも構わない。いやむしろ、それを考えないようにしたほうが、余程そこに近づけると本能的に知っているのだ




{……もしもし、アプリ坊主連盟さん?}

{ワシは今しがた、金色のオーラを出した者じゃが}



「はい、こちらからも観測できております」

「ハワイ旅行おめでとうございます」



{…それで…あのぅ}

{つかぬ事をお聞きしますが、ダブルアップはできますでしょうか?}




金色オーラの景品であるハワイ旅行は通常、3泊4日であるが、ダブルアップという手順を踏まえる事で、どんどん滞在日数を増やすことができる。

それはもう、どんどんどんどん増える。

無論、失敗すれば旅行自体が水泡に帰すが、せっかくなのでということでチャレンジする人も、まぁまぁ居るのだ



「勿論できますが、お客様の場合ですと…」

「まず、TENGOを叩いてくださるかたを」

「先に見つけねばなりません」



本来ならばパートナー、つまりこの瓦割り屋のお爺さんの場合だと、嫁であるお婆ちゃんがTENGOを叩く事になるのだが



{はい…}



その当人は数年前、バンジージャンプにチャレンジしている最中、心臓発作で亡くなっている



{今探してきますぢゃ…}


「はい、御武運をお祈りしております」




老人が通話を切り、ひょこひょこと歩き出すとそこに




『ふぇっふぇっふぇ…』

『お困りのご様子で』




一人の老婆が現れた




{なんだばばあ}

{この小説本当にジジババしかおらんな…}



『…?』

『ナニを言ってなさる』

『探しておるのじゃろ?』

『叩ける奴を…!』




アゴを伸ばす老婆




{探してはおるが、貴様の様なばばあでは勤まらんわ}

{誰か他におらんかのー?}



『じゅぼじゅぼ…』



{…!ちょっとナニ}

{ナニしゃぶってんだコノヤロウ!!}



『ふぇっふぇっふぇ…』

『それはお買い上げになったお客様だけが解るのでございます』



{言ってる意味がわかんねぇんだコラ!!}




キャラが崩壊する2人



{…やめっ…ひっ}

{やめてくださいまし…}



『じゅぼぼぼぼ』



{うひっ…}

{うひっ…}

{うひひひひぃーんぬ!!}



ポコチンポコチンと、緑色のオーラを放つじじい。今時緑色では擬似連にも満たない。



『ふぇっふぇっふぇ…』

『出ましたな』

『これでそなたも、認めざるを得まい』




{…ああっ!}

{やるなおぬしよかろうそなたと}

{叩こうでは無いか。ハワイを懸けて}




『もしもしハワイですか?』



{ああっ…いつの間に}




いつの間にか端末をくすねられていた爺。




「はいアプリ坊主連盟です」



『みつかりましたですぢゃ』

『それでは早速…』



「はい。いつでも良いですよ~」

「そちらのTENGOを抽選モードに変えました」



『シャッッ!!』

『(ガツン)』



さっそく一撃目をかます婆。



『(ポコチュワワワ)』



じじいの目がぐるんと白目を向き、一周して元の場所に戻る。どういう構造になっているのかは知らない。とにかく白目のままにならなければ倍々方式でハワイが増える。




{う()ぅぅぅ…}

{いきなりとは何事じゃ}



『シャオラッ!!!』

『(ガツン)』

『(ポコチュワワワ)』




{まてまてまて}



『シャオリホイっ!(裏拳)』

『(ガツン)』

『(ポコチュワワワ)』



聞く耳を持たない婆



{ひぃーっ!ひぃーっ!}

{ゆ、ゆぐっ!!}

{連続でゆぐぅぅうう!!}



股間を押さえて悶絶する爺。いろとりどりのオーラがそこらへんに混ざり合う。



『押さえんなや!!』

『股間押さえんなや』

『叩けんじゃろがい!!』



{そうは言われましても…}



『……』

『あっ、あんな所にセクシー女優が!!』



{ファッ!?}

{どこじゃどこじゃ}



『(ガツン)』

『(ポコチュワワワ)』



{おほぉーっ!!}

{出ない。…もう出ない}



『…根性の無いじじいじゃの』

『…どれ、今何日くらいまでアップしたかの』




老婆が端末を見やると、そこには48日当選の文字が浮かんでいた


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