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アプリ坊主  作者: 蚊取TENGO
第四章
75/82

4-17 向川高校VS灯之台高校 3『抜けない』

宇宙の始まりから終わりまで、物理的なものからそれこそ人の思想に至るまで、慣性という性質は常についてまわるものだ。

都川上流における激戦も、宮崎法如(みやざき ほうにょ)の放った究極奥義も、なんらかの意思が慣性として現れたものなのかもしれない



{実家の土産にくらうが良い!!}

{デリヘル・インザ・ホー…む”っっっ!?}


{(ドボーン!!)}


宮崎の放った究極奥義は三平にあっさりとかわされ、その先には都川が待ち構えていた


{ぶはぁ!!}

{おまえこの!かわすなよ!!}


「実家の土産にゃ、そんなもんいらねえ」

「そりゃ、かわすべ」


照れくさそうに股間のポジションを直す三平。別に観客が居る訳でもない試合で、相手の技をあえて受け止める必要も無いのだ。


『……』

『隙ありっ!!』


死んだフリをしていた 恩師(おんじ)が背後から急に羽交い絞めに拘束する。


{ぐぬっ!}

『ぐももも!!』


不意のヘッドロック。じじいとじじいのもつれ合い


『今ぢゃ、三平!!』

『こやつのTENGOを引き抜くんじゃ!!』


{やめろ!!離せ!}

{離しなさい!!}


宮崎がいくら強くても背後から関節技をかけられてはひとたまりもない。じりじりと近づいた三平は


「…(ごくり)」


{…痛っ!!}

{あ”い”だだだだ!!}

{やめなさい!!やめ”っ”!}


TENGOを引き抜こうと頑張るが、興奮醒めやらぬ宮崎の股間は硬く守られていて一筋縄ではいかない


「恩師、(宮崎は)やめろって言ってるけど?」


チラ見する三平


『なりません』


顔をくわっと硬直させて答える恩師


「(…)」


{痛っ!!}


しばらく考えた三平がもう一度引っこ抜きにかかる



「(……)」


{いだだだだ!!}


困り顔の三平


『やめてはなりません』


やめてはならない恩師



「(オラはどうすれば?)」

「(…)」


{いだだ!!よしなさい!!}





しばらくそのやりとりを続けた後、三平が考え付いたのは【冷水に漬けてみる】事であった。熱中症対策としては勿論、ハチやアブなどに刺された時等、冷水は意外と効力を発揮する。


「恩師、冷水に漬けてみるというのはどうだっぺか?」


『イイネ!』


恩師も納得


{よしなさい…そんな事をすれば…}

{そんな事をすれば、地球は滅ぶ!!}


半泣きの宮崎


「嘘つけよ…」

「ハァ・・ハァ・・」


三平がTENGOを引っ張り、一歩、また一歩とじりじり川へ誘導する(元々近いが)。―そして30秒後



{痛っいだぅ!!}

{ひゃっ!ひゃっこい!!(冷たい)}


羽交い絞めになったまま座らされた宮崎の先端が川に入水した。


『どうだ?三平』


「だめだ恩師、固いままだっぺ」


『もう少し根元のほうまで漬けてみなさい』


「ぐぐっ!!」


{いだぅ!冷だぅ!}



「ぐぬぬっ…!」

「ぐぐっ・・!(スポッ!)」


冷水に浸かり、フィット感が緩めになったTENGOはなんとか引き抜くことが可能となった。余談ではあるが、スッポンに噛まれた時もこの方法が有効である


{ああっ!!}

{返せ!!返せよコノヤロウ!!}


クリスマスツリーを取り上げられて駄々をこねる宮崎


「MEN-!」

「(ゴチーン!)」


すかさず三平の釣竿型TENGOが脳天にクリティカルヒット


{っく、ひっく}


半泣きの宮崎


「ヘイ!恩師、パース!」


『オーライ、オーライ!』

『ヘイ!パース』


{っく、ひっく…返せよ~}


キャッチボールの如く三平と恩師の間を行ったり来たりする宮崎のTENGOはやがて


「…あっ(手元が狂った)」

「ドボーン!!」



都川にゴールインして、プカプカと浮きながら下流へと漂い始めた。


{ああ…}

{なんという事を…}


宮崎のTENGOは巨額を投じて 雲天堂(うんてんどう)に作らせた特注品だ。クリスマスツリーのような外見の中にも城壁をあしらい、優雅さを引き立てている。

海外のよく解らない数々の芸術祭にも度々受賞している美しい城なのだ。

その城が今、なんかの昔話のようにプカプカと川を漂う事になるとは誰も想像だにしなかった。ある意味芸術的ではあるが。



「すげえ、なんだか感動的だっぺ!」


『うむうむ』


キラキラと流れ行く水面に逆行のシルエットを漂わせ、興奮の渦中を感動へと昇華させる二人。エンドロールが流れてきてもおかしくない程の場面に、宮崎が逃走を計る


{…(そーっと、そーっと)}


『突きぃぃ~!』


{ふぐっ!…うぬ”っ!!}


「ほーっ!ほーっ!」


恩師が背後から突きをいれ、すかさず三平が正面からTENGOをくわえさせる。これは野試合であって、公式ルールは採用されない。つまり【明確な勝ち負け】が存在しないのだ。それが無い以上、宮崎にこの後襲われないようにする為には、

お互いの優劣をはっきりさせておく必要がある。


{がぼがぼ!!}

{ふがっ!ふごっ!!}



「お、恩師オラもういぐっ!!」

「ポコチーン!ポコチーン!!(赤オーラ射出)」


『んほぉぉぉっ三平!!ゆぐっ!!』

『ポコチーン!ポコチーン!!(白オーラ射出)』


{…ふぐぅぅぅ!}

{…あへぇ…}


ぐったりと倒れこむ宮崎。あくまでスポーツです





「…恩師!試合時間が…!」


『…すっかり忘れておったわい』


それぞれ1回ずつオーラを発射してご満悦の2人が急に我に返る。気がつけば準決勝第二試合開始時刻直前であった


「恩師!オラの修行の成果、今見せちゃっていいかな?」


『いいとも!』


軽い感じのやりとりの後


「…うらうらうら~っ」

「うらうらうらうら~~~っ!!」

「(ブバババババ!!)」


ブリッジした三平が腰を回転させ、遠心力を発揮する。その力は釣竿型TENGOへと伝動されて爆音と共に周囲の草々をなぎ倒す。

厳しい修行の末に三平は、TENGOを凄まじい勢いで回転させて人間ヘリコプターの如く浮遊する術を身に着けていた。


『くっ・・!見事ぢゃ、三平』


右腕で衝撃波をかばいつつ、感嘆に浸る恩師


「恩師、今です!!」


空中浮遊に成功した三平が手足を逆関節に伸ばす


『とぅっ!!』



『(グキッ)』

『…』


「…」





恩師はアクロバティックに飛び移ろうとしたが、今ひとつ届かず。着地に失敗して足を捻挫してしまった。三平はそれを見なかった事にして、無言で試合会場へと飛び去ったのだった。


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