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アプリ坊主  作者: 蚊取TENGO
第一章
7/82

1-07 万南無高校VS雲葛高校 03『ジブリ坊主』

両手をひざに当て、前かがみになってハァハァと呼吸を荒げる犬馬。かなりの精神力を使ってしまったようだ


「犬馬…」


心配そうに見つめる珍海


『あああっ!』


顔を赤らめ、股間を押さえる犬馬。そして、そのままその場に座り込んでしまった

ダメージは深刻のようだ


「大丈夫か!?」


受けたダメージを確認すべく珍海が駆け寄る


「どこだ!?どこをどうやられたんだ!?」

「おにいさんに内緒で教えてみなさい!」


そして、至近距離まで近づいた珍海は、目をつぶって耐えている犬馬の、匂いを、くんかくんかと嗅いだ


『あっあっあっ…!』


股間を押さえて苦悶の表情を浮かべていた犬馬であったが、ちらっとみると、珍海のTENGOが丁度良い角度でそそりたっていた。

苦しまぎれにそれに手を伸ばすと


「(ドガッ!!)」


思い切り強打した


「がっ…!ぐっ…!うわああああああ!!」

「(びゅー!びゅぅぅ)」


青いオーラを放ちながら悶絶する珍海。

そしてその青いオーラは、犬馬に降り注がれ、吸収された。

すっく!とまるで何事も無かったかのように立ち上がる犬馬。


股間に付属しているTENGOと呼ばれているレバーを叩くことによって、発射されるオーラは

さまざまな恩恵を受けることができるのだ


本来ならば、犬馬の「犬を散歩させる事」という能力がパワーアップされたり、入るポイントに倍率がかかったりするのだが

いかんせん犬馬が相当弱っていたため、パワーアップせずに回復にとどまったという事だ

また、珍海の放出したオーラの色にも問題があった


「白<青<緑<赤<紫<虹色」


この段階でレバーを叩いたものに与えられる恩恵が強くなっていくのだが今、出た色は「青」


すなわち、かなり弱い色だったということになる


ちなみに、黄色いオーラが出たときは病気なので、医者にみてもらう必要がある


又、一度オーラを放出してしまったアプリ坊主は、しばらくはモノの役にはたたないので

この場合は、切り札を手放してしまうという、ほとんど手詰まりという最悪の事態になってしまったのだ

格闘ゲームで例える所の、必殺技ゲージを全放出してしまった状態に近い


ともあれ、窮地をとりあえずはしのいだのも事実である

ぐったりして虚空を見つめている珍海のすぐ足元に仁王立ちしていた犬馬が


『…大丈夫?』


心配そうに覗き込む


「ありがとうございます!」


朝露に濡れた草の上を転がっていた為か、犬馬のパンツは濡れていた



清々しい表情で空を見る珍海。芝生のあおい匂いに包まれながら彼はしばしの余韻に浸った

しばらくの間は股間のTENGOも機能しない。

男性アプリ坊主は、オーラを放出するまでは


「ようし今日は3回くらいがんばっちゃうぞ~!」

「ぶっかけ放題だ!」

「かけ放題プランだ!」


とか思っていたりするものなのだが、いざ1回終えてみると案外


「…今日はもういいか」


と覚めてしまうものなのだ。これは、若いアプリ坊主に顕著に見られる。熟年したアプリ坊主達は己の気力をわきまえているのだ。




「――もしもしお嬢ちゃんたち?」


ふいに背後から声をかけられた。見るとメガネをかけた白髪の老人が後ろに立っていた。



『あなたは…?』


犬馬は思わず尋ね返した


「ワシは…」


老人は空を見上げて続けた


「ワシは…そうじゃの…自然を愛する者とだけ言っておこうかの…」


顔を見合わせて訝しがる犬馬と珍海。さっぱり解っていない。認知されていない。その気配を察知した老人は慌てて言い直す


「あー…ワシはジブリ坊主だ!!」

「ジブリ坊主の宮崎だ!!!」


その瞬間、2人は驚きを隠せない様子であった。無理も無い。ジブリ坊主の総帥である宮崎法如(みやざき ほうにょ)がいきなり目の

前に現れたのだから。



― 太古の昔、天をつかさどる法師が居た。その法師は電離層までのすべての大気を支配し、把握する事によって戦争を有利に進める連携を

国と取り、帝や君主から寄付金を貰い人々の願いを具現化していった。彼は、自らの思考の電気信号を、大気中に拡散し、人々に影響を

与える事ができた。

天振る星の坊主(あまふるほしのぼうず)通称アプリ坊主である。



一方、地をつかさどる法師は、大地の恵みを重視し、「科学の発展はいずれ人類に破滅をもたらす」とし、国とは一切連携を取らず

あくまで自然ゴリ押しで自らの能力を高めていった。彼らは、自らの思考の電気信号を、地表を通して拡散し、人々に影響を与える事がで

きた。

地振りし星の坊主(ちふりしほしのぼうず)通称ジブリ坊主である


2つの派閥の関係は、宗教上の違いにより不仲であり、やがて現代になりスポーツ化した現在も変わらぬものであった。彼らの子孫は繁栄

し、次第に能力が薄れていったが、「能力を発言できるかできないかは別として」大勢の人類において「潜在的に能力を持つ」事となった。


アプリ坊主がドラフト会議で選手を獲得し、プロとして給料も出し、育成していく物なのに対し、ジブリ坊主は、あくまで非営利に徹し

、「社会人で気の合う人たちがやっている」いわば「慈善事業」としての道を歩んでいるのである。

ある程度給料は出るのだが、びっくりするような金額では無い。


アプリ坊主 = プロ = 国営 = 給料アリ

ジブリ坊主 =社会人= 非国営=給料アリ(但し、会社で支給されるごくわずか)


わかりやすく、図にまとめると以上のようになる



そのジブリ坊主の宮崎がなぜ犬馬と珍海前に現れたのか。彼は遠い目をしながら話を続けた。


「2人供、ジブリ坊主に来る気はないかの?」


宮崎は風に白髪を揺らしながら尋ねた


「いえ…うちは…」


珍海はそういって顔を背けるようにして犬馬のほうを見た。彼はマスコミにも注目される高校アプリ坊主であり、本人もプロ入りを熱望して

いるのだ。今更、先行きの見えないジブリ坊主にはなりたくはなかった。


『わたしもちょっと…』


犬馬はそう言うと、その場に腰を下ろした。まゆげもその場に座り込んだが、散歩中に人と立ち話するのは散歩の範疇に入っているので

ポイントは入り続けた。


「人々はな、自然を軽んじ過ぎておる…」

「科学はいけないんじゃよ、科学はな…」


宮崎がさらに続ける


「そして、プロのアプリ坊主…アレはいかん…」

「アレは娼婦の匂いが…」


そこまで言うと、宮崎ははっと我に返り、言葉を訂正した。


「い、いや、ちがうんじゃ、正麩しょうふっていう…」

「ほら、そばを茹でたときにでる、あのドロドロしたやつじゃ」

「でんぷんなんだよ…、でんぷんなんじゃよ!!」

「これ、豆知識な!!な?!!」


あたふたしながらもなんとかとりつくろった宮崎だが、犬馬と珍海は納得していない様子であった。補足しておくと正麩しょうふとは、

でんぷんの事で、主にのりとして加工される成分である


「へぇ?それで、そのでんぷんがどうかしたの?」


珍海は宮崎の懐をえぐるような攻撃を繰り出した。


「ぐっ…!」

「こ…この話はもうええじゃろ!!!」


宮崎は痛いところを突かれて、顔を真っ赤にしてブチキレた。



「とにかくじゃ…」

「ワシは2人に、自然を大事にしてほしいのじゃ」


足元の露に濡れた草を見つめる


「ほほう…」


宮崎はとても興奮してその草を引き抜いて食べた。


「自然っ…!こんなところにも素晴らしい自然がっ…!」


次々と草を引き抜いて食べてゆく。みるみるうちに宮崎の股間は膨張し、ジブリ坊主としての本領を発揮してゆく。


通常、アプリ坊主というのは、犬馬と珍海のように、「女性アプリ坊主」と「男性アプリ坊主」2人セットで真の能力を発揮する。つまり

は二人三脚のように、お互いを助け合うのだ。

だが、ジブリ坊主は一人で能力を発揮し、一人でサポートできる。そこがアプリ坊主とジブリ坊主の大きな違いである


「うっ…うっうっ…!」


興奮のあまり宮崎は白目をむいて痙攣したが、力を振り絞り自分のズボンに手を伸ばすと、パンツごとずりさげた。



「ジブリ坊ぅぅぅぅぅ主!!」


そしてTENGOの装着と共に咆哮し、辺りに緑色のオーラを撒き散らした。


「(この人ただの変態なんじゃ…?)」

『(すごく大きい…)』


見事な変身ぶりに犬馬と珍海も驚きを隠せないようだ。


「うぉぉぉぉぉ!!!」


宮崎が吼える


変身を終えた宮崎は、俊敏になり、中学1年生男子の平均タイムくらいのスピードでダッシュした。とても老人とは思えない動きだ。

大自然の力をわがものとしている宮崎の攻勢はさらに続く。


「みておれ!!」


公園に自生していた木につかまると、えいさ、ほいさと登りつめて行く。そして幹が細くなり、これ以上登ると危険、というラインまで

行くとそこに体を休めた。


「わんっ!!わんっ!!!」


宮崎の素晴らしい走りをみて、釣られて走っていったまゆげが、木の下で無邪気にはしゃぐ


「…犬って元気だな」

『お~、まゆげ速い~』


宮崎とまゆげを振り返りながら遠目に見ていた犬馬と珍海だったが、そのうちに飽きてしまい疲れて腰を降ろした

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