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アプリ坊主  作者: 蚊取TENGO
第一章
6/82

1-06 万南無高校VS雲葛高校 02『犬馬の散歩術』

「アプリ坊ゥゥーー主!!!」


珍海めずらみあつし が咆哮し、勢い良くズボンを降ろす




俗世の縛りを心の迷いを苦しみを遥か彼方に置き捨てて、ついでにブリーフも置き捨てる


我慢汁ほとばしる刃の先に、無数の血管を浮かび上がらせながら、ちょいと握ればごんぶとサラミ


びゅっと出たら一等賞。ちょっぴり臭うごんぶとサラミ



「臭うとか言うな」



カメラ目線のままに謎の独り言をつぶやきながら着替えを進める


ショルダー(肩)ロース(背中)TENGO(股間)


各部のパーツを手動で取り付けていく。

着替えが終わったところで、右ストレート、左ストレートと拳を突き出して、最後にそれらしきポーズを取って仁王立ち。

尚、この主人公はボクシング等の格闘技経験はゼロである



彼の役割は、パートナーである 犬馬けんまのり子 の能力を増幅する事であり

彼女の能力は 「犬を散歩させる事」である

犬馬の愛犬である「まゆげ」もはちきれんばかりに尻尾を振っている


対戦相手の能力者である、翼子は、犬馬の術中に嵌り、不利を悟って後方に飛びのいた

追加攻撃するなら今がチャンスだ。



「アプリ坊主タイー!」


続いては対戦相手の変身だ。ユニフォームを脱ぎ、全裸になる心技しんぎタイ


彼も又、パートナーである そら翼子つばさこの能力を高める事ができる。


基本的に学生同士の「男性アプリ坊主」の役割はパートナーの能力増幅であり、思春期のアレな願望を行使するとロクな事にならないので男子学生が能力を行使する事は禁じられている


「いっタイでもニンジン~♪」

「にタイでもサンダル~♪」



『適当か』


口を開けたままの翼子の激励を受けつつ上機嫌に着替える心技。


『ア”-…。』

『オーバーヘッドしてえ』


翼子がリング上に寝転がり、シュッシュッと足を上げる。心技は己の心がいまいち奮いたたず、股間部分のパーツ(TENGO)が装着できない。

フニャフニャのままでは試合が成り立たないのだ





―2分後




『いつまでかかってんだ』

『やる気あんのかインポ野郎』



ついに翼子がブチ切れる








『…時間かかりそうだし、いこっか?』


「そうだね」


まず先手を取ったのは、珍海&犬馬ペアである。先に着替え始めたのが功を奏した


『まゆげ、行くよ』


犬馬は、愛犬である「まゆげ」を大会関係者から譲り受けると早々とリングを降りた。犬を散歩させる能力は狭いリングの上では十分に発揮されないのだ


試合に勝つには、「犬を散歩させる」ということを、全世界にしらしめねばならない。

そして、全世界に能力が勝っているということが認められれば、その気迫により対戦相手になんらかのダメージが入ったり、自身もポイントを増やし決着がつく。

2人はリングの下に控えていた大会の関係者から、それぞれの荷物を引き取ると、出口へ向かった


「犬馬、コースは決まっているの?」


珍海が不安そうな顔で犬馬に問いかけた。


『うん・・近くに公園があったからそこに行こうと思って』


若さ溢れるまゆげ(犬年齢的に実際は若くも無いが)に、半分引きずられるようにして犬馬は答えた


資材搬入用のコンクリートむき出しの通路を早足で歩いていくと、通行止めの柵の向こうに外の明かりが見えた


『アプリ坊主の選手です、ここを通らせてもらいます』


警備員にそう告げると犬馬はまゆげを柵のスキマに誘導して会場を出た。

白いもやをかき消すように、近くの喫煙場から酔っ払い達が手を振る。

先々に警備員が手を回し、遠巻きに人だかりが割れていき、試合は場外戦へともつれ込む



道中コンビニに立ち寄って立ち読みをしたり、自宅に帰ってシャワーを浴びたりと、割と自由な感じの対戦が続く。


『…あっ。忘れてた』


しばらくして珍海&犬馬ペアは近くの公園に無事に到着した。中学校のグラウンド4つ分ほどある比較的大きな公園だ。

日曜ということもあって、親子連れや、ジョギングしている人などもいる。外人の姿もあった。


二人はとりあえず試合の優勢がどちらに傾いているのか把握するべく端末に目を通した


「うむぅ、意外と優劣はついてないな…」


珍海が詳しく分析する


『そうだね、相手も善戦してるのかも』


犬馬もまゆげに引きずられながら端末を覗き込む


2人が端末を覗き込むようにして見ているので、自然と距離が近い。すかさず、珍海が犬馬の匂いを嗅いだ。

犬馬がその行為に気づいて『ふふっ…』と顔を赤らめる




犬を散歩させる能力とは、リードをつけて道中を練り歩いている間は勿論の事、そこらに放していても散歩とみなされる。


という事は珍海&犬馬ペアにポイントは入っているのだ。それでも試合の優劣に差がないということは、相手も善戦してるという事。


すなわち、相手もポイントが入り、相殺されてしまったということである


「まだ出番ではなさそうだな…」


珍海は匂いを嗅ぎながらそう言った。彼の役割は「パートナーの能力を高める」事であるが、一旦能力を高めてしまうと

しばらくの間、再度使用できなくなってしまうので、まだ温存したいという意思である


『うん…でもどうしよう…』


自分の能力が発揮できているのか不安になった犬馬は愛犬の、まゆげを見てつぶやいた


「いつもの犬馬らしくしていれば大丈夫だ・・!」

「なにも不安がることなんてないよ・・!」


『うん…そうだね…ありがとう』


珍海は、犬馬の背中とおしりの匂いを嗅ぎながら、すがすがしく言い放った





リラックスし終えた犬馬は、首輪と手綱を結ぶ金具を外して、犬をフリーの状態に持っていく。

次に、フリスビーをバッグの中から取り出し、空中に向けて、放り投げる


「わんっ!!」


すかさず、まゆげがキャッチし、珍海&犬馬ペアに高得点が入る


くわえたフリスビーを、まゆげが口にくわえたまま小走りになって持って来た

犬馬はそのフリスビーを受け取り、まゆげの頭を撫でる。遠隔操作型の能力を活かした見事な連携。

まさに、怒涛の攻勢である

しかし、珍海はある異変を感じ取っていた


試合の趨勢が変わらないのである

手元の端末から現在の有利、不利などが確認できるのだが、どうにも優劣が付いていない。

これは対戦相手の能力もうまく発現できているということを示す


「お…お手だ…お手をさせるんだ!」


あせった珍海は犬馬にお手の指示を出した。


『う、うん』

『まゆげ!お手!・・・・お手よ!』


犬馬はあせりの表情を浮かべてまゆげにお手を命令する


しかし、まゆげは、くぅ~んと寂しげに鳴いたきり地面をみつめてしまった。

飼い主のあせりは、ペットに影響してしまったようだ。

そして、一旦動揺が広がると、流れは悪い方向へと波及してしまうもののようである。


『まゆげ!…お座り!』


続けざまに命令する。しかし、動揺している「まゆげ」は微動だにしないで地面をみつめている。

それならばと、今度は元々見ている地面を見るように指示してみようと思いつく


『まゆげ!・・地面をガン見!!』


そう命令したとたん、地面を見つめていたまゆげは激しく視界をあちこちに映し出し、急にキョロキョロしはじめる。

すかさず、犬馬が次の指示を飛ばす


『まゆげ…挙動不審!』


まゆげはそういわれるや否やお座りをして背筋を伸ばし、きりっとした表情で遠くを見つめた。ことごとくまゆげに

手玉に取られてしまい、どうみても噛み合っていない





あくまで「スポーツ」です

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