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アプリ坊主  作者: 蚊取TENGO
第二章
41/82

2-19 万南無高校VS熱来高校 2『粘土並みのゴテゴテ感』

珍海が店内を飛び回り天井の蛍光灯やらテーブルやらを破壊している頃、熱来高校の水無瀬は注文を終えるとアプリ坊主へと変身しだした。

実況を伝えるはずのアナウンサーや、カレーを食べていた人達、観客らはすでに店の外へと退避している


「勝期!!!」


水無瀬は壁に向かい助走をつけると、そのまま3角飛びの様に壁を蹴り、空中で珍海に肉薄した


「がああああ!!!」


制御の利かなくなった珍海はそのまま水無瀬の方へと猛スピードで突進する


「珍海、破れたり!!!」

MEN(めん)ーー!」


水無瀬のTENGOが珍海のTENGOを捕らえる・・いや、捕らえたように見えたが、角度が合わない。


「ぐおっふ・・!!」


着地した水無瀬は股間を押さえつつもすぐに手を離す。わずかばかり熱来高校のポイントが減った。両者どうやら痛み分けのようだ。


「ぬわっ!!」

「ドガシャーーン!!」


空中で鉢合わせした珍海も、近くのテーブルに墜落した


「なんの!!」


すかさず水無瀬は飛び上がり、


MEN(めん)ーー!」


体勢の整っていない珍海に襲い掛かる


「くっ・・」

MEN(めん)っ・・!!」


珍海の方もよろけながら立ち上がるととっさに応戦のMENの掛け声を出す


「ドッ!!」


両者のTENGOは互いの側面を叩き、決定打には至らない。


「ドッ!!ドッ!!」

MEN(めん)ーー!」


そのまま2度3度打ち合いをしたが。実力は拮抗している様だ。いや・・・わずかばかりではあるが珍海の方が上手のように見える。そして


MEN(めん)ーー!」

「ズボアッ!!!」


何度目かの叩き合いの末、珍海のTENGOが水無瀬の口に突入した。そして水無瀬が脱出できないように頭を手で固定する。


「ガボアッ!?」

「ガボボボボボボボボボボボ!!!!」


飛翔する事すら無いものの、依然として珍海のTENGOは上下に激しく振動している。言うなれば「激TEN(げきてん)」と表現したら良いのだろうか。


「ボボボボボボ!!!」

「ゴババババババ!!!!」


口の中を、アゴを、そして脳まで達する凄まじい振動は水無瀬を恐怖に陥れた。


「~~~!!」

「ぶはっ・・・!!」


頭を固定され、脱出できなかった水無瀬だが、珍海が手を緩めた隙に引き離した。TENGOでどうこうする行為はどうということは無いのだが、

対戦相手の頭を、手で固定する行為は反則スレスレである。だがこれはスポーツであると同時に「エンターテイメント」でもある。試合を

盛り上げる為に多少のお茶目は許される場合が多い。


「うっ・・」


不利を悟った水無瀬は、2~3メートルほど後ろに飛び退いた。


「この一騎打ち、引き分けにしないか?」


水無瀬が提案する。お互いの合意があれば一騎打ちを取りやめることができるのだ


「引き分けとは無粋な。」

「どうみてもこちらが優勢だろう」


珍海は挑発的な言葉を投げかけると、


「納得がいかないのなら、このまま続けてもいいのだぞ」


クイッ、クイッとTENGOを自分の体のほうへと動かし「かかって来い」とのジェスチャーを示した


「・・・・・」

「こちらが4・5と、そちらが5・5だ」


水無瀬は、一騎打ち戦のポイントの振り分けを提案する。4・5と 5・5とは不利、有利を決める比率で、つまり水無瀬側が自分らの不利をいくらか認めた形になる


「いいだろう」


珍海のほうも出だしに早々とオーラを放出してしまい、次にしくじると試合中に出せなくなる可能性もあっただけに、引き際をわきまえた形だ


「お互いにTENGOを収めるぞ」


水無瀬が、ルールに従いTENGOに手を伸ばす


「お互いにTENGOを収める事を誓います」


珍海もそれに続く。


2人はTENGOを取り外すと、お互いのパートナーの元へと歩き始める




こうして水無瀬の不意打ちから始まった一騎打ちは幕を閉じた。が、問題はここからである。犬馬と珍海が、合流してしばらくした頃、


「お待たせしました・・」


カウンター席のほうに陣取っていた熱来高校にカレーが到着したのである


「う~~!!」

「こっち(のカレー)はまだかなぁ・・」


テーブルをひっくり返されて注文があやふやになってしまった万南無高校側はその後、犬馬のとっさの機転によりカレー2つが注文されたが、

まだ出来上がってはいない様で、2人は待ちぼうけを食らわせられるハメになってしまった。


「ああ、ちょっと間が悪かったな・・」

「これでもくわえて落ち着くんだ・・」


珍海がさきほど取り外したTENGOを再び装着すると


「ん・・」

「ぺろぺろ・・・」


犬馬が席の下に潜り込み、


「んっんっ・・・」

「じゅぽじゅぽ・・」


しゃぶり出した。




「お、おい!アレ、まずいぞ!!」


カウンター席に位置する水無瀬がちらりと万南無高校側を見ると、珍海のTENGOがしゃぶられていた。元々、能力合わせ戦では「対戦相手の能力に合わせた側」

にハンデとしてポイントが行き易くなっている。互角の戦いをしているように見えても今現在は万南無高校側が優勢なのだ。

このままあちらにカレーが到着すれば、一気に試合が決まりかねない


「落ち着け・・」

「大丈夫じゃんよ・・」


パートナーの束少(たばすこ)マサラは、「辛さ10倍増し粉」を自身のカレーにどばどばと掛けると、


「ひぃ~!辛っ!!」

「辛っ、うまっ!!」


激辛になったソレをぱくぱくと食べ始める


「ほら、おまえも食べるじゃんよ」


続けてマサラは目の前に置いてある「辛さ10倍増し粉」を水無瀬のカレーにも施した


「どばどばどば!!」


マサラの手により水無瀬のカレーのカレーは、粉カレーへと変貌を遂げた


「あの、ちょっとこれは、・・」

「汁気ゼロなんですが・・・」


水無瀬はマサラとパートナーを組んでいるだけあって、辛いものは好きなのだが、限度はあった



「ピッピッピッピッ!!!」


マサラの近くに置いてある端末から不意に警報が発せられた。試合が大きく動いているのだ


「これは・・・?」

「一体、どうした事じゃんよ??」


見ると、万南無高校側が大幅有利の状態だ。さらにポイントの差は広がるばかり。激辛なものを食べてるはずのマサラ側が不利とは一体・・・


「どうってったって、俺にもさっぱり・・」

「・・・・」

「・・・・」

「解った!!!」


しばらく考えた末、水無瀬は何が原因なのか解ったようである


「解ったってなにがどうなってるじゃんよ??」


マサラは納得していない様子だ


「珍海のパートナーの・・・」

「なんだっけ・・まぁ、今は(時間が無いから)いい」

「とにかくだ」


水無瀬がカレーを食べながら


「あのパートナーがしゃぶっているモノが」

「・・・ひぃ、辛っ!!んぐっ!!」

「辛いんだ」

「それしか考えられない」


状況を説明する


「辛いってったって、TENGOがかぁ・・・?」

「・・・あっ!!」

「そうか!!」


マサラにも原因が


「つまり、TENGOを辛いモノで味付けをしているじゃんか?!!」


解った様だ


「その通り!!」

「今ここで、やつらにカレーが到着したら」

「うちらの負けだ」


水無瀬は先ほど取り外したTENGOを再び装着すると、両手を広げてマサラを呼び入れる構えを見せた


「望むところじゃんよ!!」


マサラがすかさず水無瀬のTENGOに吸い付く。


「~~~~~!!!!!」


水無瀬の顔が


「待て、ちょっと待て・・」


途端に険しくなった


「んっ・・!!じゅぱっ!!!」

「じゅぽっ!!」

「待つったって、もう待てないじゃんよ・・んっ!!」


マサラは、万南無高校に負けじとTENGOをしゃぶりつくす


「いや、ちょっと、ちがうっ・・」

「しみ、染みる~~~!!」

「がっ!!!あっ!!あっあっ!!」


マサラの口内の激辛成分が、水無瀬のTENGOを刺激する。


「ピピピピ・・・ピッ、ピッ・・」

「ピッ・・・ピッ・・・・」


だが、水無瀬の苦痛とは正反対に頭上の端末は、急激にポイントが増減する発信音から緩やかな方へと変わって行った。効果が認められたのだ。


「ズボぁっ!!ぷはぁ~・・・」

「・・・(チラッ)」

「お、いいじゃんいいじゃん!!」


喉の奥までTENGOをくわえていたマサラは、一瞬端末を覗き込むと


「これで形勢逆転じゃん!!」


好機と見たのか、


「どばどばどばどば!!!」


そこらにあった「辛さ10倍増し粉」を水無瀬のTENGOに直接ぶちまけた


「ま”ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」

「~~~~~~!!!!」


カレー屋に水無瀬の絶叫が鳴り響く。無理も無かろう。TENGOは内部構造上、人間の体の大事な部分と神経系統を共有している。

そこらへんの筒を、ただかぶせてある訳では無いのだ。


「み”ゃっふ!!!!!」

「み”ぁぅっふ!!!」


水無瀬は死にもの狂いでTENGOを取り外そうとするも、腫れあがり膨張した大事な部分と、その先端が内部に引っかかり一向に外れない


「む”っふ!!!」

「む”っふっっ!!」


すでに全泣きの状態の水無瀬は尚もTENGOを外そうとする


「お、おい、大丈夫じゃんかよ・・?」


パートナーのマサラはどうしていいか解らず、ただオロオロするばかりだった


「め”っ!!!め”っ・・・!!」


手元のポッドから氷水をかけてTENGOを洗い流すが、全然足りない。そこらのテーブルに水を探しに行く水無瀬。だが、その瞬間




「突きぃいいぃ!!」


ふいに背後から声がしたかと思うと


「ズボアッ!!」


水無瀬の尻に珍海のTENGOが突き刺さった


「ぐうっ!!!?」


顔を歪める水無瀬。彼は完全に油断していた。油断と言うか予断を許さない状態ではあったが。


「突きっ!」

「突きっ!」

「突きっ!」

「突きっいいい~~!」

「ハァ~♪突き突き~~♪」


背後から両手を回して腰を固定し、ガクガクと前後に突きを放つ。これでもかとポイントを入れまくる(※1)珍海とは対照的に


「うっ・・・うっうっ・・」


水無瀬は目の前にある水のポッドに手が届かず、まるで「リング中央で関節技を掛けられているプロレスラー」

のように、ただ、ただ、手を伸ばすしかなかった


「おっと・・」


水無瀬の腰を掴んでいた珍海が手を離す。あんまりしつこいと反則になる為だ。そして


「突きっ!!」


一瞬、間を置いてから再びTENGOを突き入れる。


「ヴッーー!」


えびぞりになった水無瀬の


「ブシューーー!!」


TENGOの先端から緑色のオーラが放出された。


「はぁはぁ・・・」


ぐったりと脱力する水無瀬の体は


「まだまだぁ!!」

「突きぃ!!!」


珍海の荒ぶるTENGOにより再び捕まってしまう


 (※1 ルール上、水無瀬はTENGOを完全に隠してる訳では無いので、最高ポイントが入り続けている訳では無い)


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