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アプリ坊主  作者: 蚊取TENGO
第一章
20/82

1-20 帰路 3『犬馬と合流してみた』

犬馬と合流する為に、珍海とまゆげが会場に到着したのは日も暮れようかとしている頃だった。


「あ~…」

「あの、会長に呼ばれてるんですけど…」


会場の受付嬢にそう話すと、顔をじっと見られたが、納得した様子で


『はい、承っております』


と受付嬢は返答した


視線を受付嬢から奥の方にずらすと、そこには会長の従者がパイプ椅子にこしかけていた


「こちらへ」


従者に先導され、階段やらなにやらを通過して、段取り良く会長の待つVIPルームへと向かう珍海だったが


「あの…すんません」

「シャワーかなんかないっすか?」


自分の服をつかみ、よく見えるようにぐいっと前方に引き出すと、自分の「海水に濡れて半分乾いた塩まみれの姿」をアピールした。


「すいません…」

「気づきませんで…」


従者はそう言うと、シャワー室に珍海を案内した


「あ…」

「申し訳ないんだけど、まゆげの事、いい?」


珍海は従者に犬を預けて、続けざまに質問した


「荷物どこっすかねぇ?」


珍海が従者にたずねると


「あ、犬馬選手のワンちゃんですね、了解しました」

「荷物のほうは、取り急ぎ用意させてありますので、少々お待ち下さい」


従者は答えた。どうやら、荷物は会長周囲の人間が保管してくれていたらしい。

自分の高校の制服に着替え終えた珍海は、別の従者に連れられてVIPルームへと到達した。


「(絨毯敷いてある…)」


そんなことを考えながら、歩いていると、


「こちらです」


どうやら到着したらしい。珍海はドアを開けて中に入った。ところが、


「あっ…」

「これ、なんなん?」

「何がおきたん?」


会長、会長の従者、犬馬、犬馬の妹達、全員が、コの字型に配置されたソファーにぐったりと寄りかかり、寝ていた。


「あっ、わか子ちゃん、来てたのか」


犬馬わか子は、犬馬のり子の年の離れた妹で、年の近いエメリアに気に入られたらしく、一緒のことも多い。


〔エメリアちゃんと、わか子ちゃんが…〕


一人だけ起きていた女性の従者が、苦笑いを浮かべて子供のほうに視線を向けた


「ああ~…」

「ガキんちょって凄いよね」


エメリアとわか子は寄り添うようにしてお互い寄りかかり、双眼鏡を2人の小さい手で覆うようにして寝ていた。どうやら全員、2人の子供パワーにやられてしまったようだった。珍海も思わず、笑みを浮かべる



『はい、全くです』

『…会長、会長』


女性の従者は周りを起こさないように気遣いながら、耳元でそっとささやくようにして会長を起こした


〔ん”…?〕

〔んんっ…〕


くぐもった声と供に会長が目をさました


「犬馬様と珍海様がお見えです」


会長にそう伝えると女性の従者は、ソファーに逆側からもたれかかって寝ていた従者と、床に大の字で寝ていた他の従者を起こして一緒に部屋を退出して行こうとした


〔ああ、キミは残って〕

〔この子達を〕


部屋から出ようとしていた女性の従者だけを引きとめ、寝ているエメリア達の方を見て


〔頼んだよ〕


そういって会長はにっこりと笑った。女性の従者は、笑顔で頷いた


〔のり子ちゃん〕

〔のり子ちゃん、起きなさい〕


「犬馬、朝だぞ」


会長が声を掛けているのを見てとった珍海は、一緒に声を掛ける


『夜でしょ…まったくもう…』



すぐに犬馬は起きてまわりをキョロキョロと見渡すと熟睡している妹達を見て思わず笑みを浮かべた



〔珍海くん〕

〔のり子ちゃん〕


〔こちらへ〕


会長はそう言うと、VIPルームのさらに奥にある短い廊下へと、犬馬と珍海を案内した。

3人が廊下に出ると、すぐ目の前に頑丈そうなドアが一枚用意されていた。会長は鍵を使ってそれを開けると、個室へと入った


「なんか居酒屋みたいですね」


珍海が部屋を見渡して会長につぶやいた


〔かっこいいだろ〕


会長は、かすかに得意そうな顔で返答した。


頑丈そうなドアとはうらはらに、内部は、土間と畳の居酒屋チックな作りになっていた。左側は、カウンター席になっており、椅子が並べ

られている。


『…うう~ん。もうダメナリ』



「ああ~…」

「づがれだ~(疲れた~)」



畳みに転がる2人



わか子達の相手をして精神的に疲れた犬馬と違い、珍海は、海を泳いだりして肉体的に疲れていたらしく、すこぶるぐったりしていた


『あれ?そういえばまゆげは?』



「あ~…従者さん達に」

「シャワーして貰ってる」



『ああ…うん、…ありが…と』

『(ごそごそ)』


完全に寝にはいる犬馬


「(ゴトッ!)」


会長が、コーラの入ったジョッキを2つ、畳の上に配置されたテーブルに置いた


〔ほいほい、2人供、おつかれさま〕


一度カウンターのほうに戻った会長は、今度は自分の分を持ってきた。


「似合いますね」


珍海は、正座に座りなおすと会長を褒めた


〔まぁまぁ、楽にしてくれて構わんから〕


会長は、テーブルを挟んで、向こう側に座った


「おまえちょっと楽にしすぎだろう」

「ほいほいっと…」


珍海は、横で寝たままだった犬馬の胴体を掴むと、無理やり起こして、自分に寄りかからせた。半分、抱っこに近い。

自らはあぐらに座りなおした。犬馬は珍海の胸の中で、眠りに入ろうとしている


「か、会長これでいいですか?」



〔ああ、全然構わんよ〕



「おい犬馬、会長困ってんぞ」



『う~ん…』

『いいの…』


犬馬はぐったりとしたまま、珍海の胸の中で半寝になってしまった。甘えた顔が愛くるしい。


〔いや構わない。そのまま聞いてくれ〕

〔これは、とても大事な事なんだが…〕


会長は、珍海を制止すると、本題を切り出した。





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