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アプリ坊主  作者: 蚊取TENGO
第一章
19/82

1-19 帰路 2『試合会場に戻ってみる』

東京湾に到着した珍海とまゆげだったが、かなり沖合のほうで遭難しているらしく、宮崎の姿は見えなかった。


「くーん…」


不安そうに珍海を見つめるまゆげ


「大丈夫だ、まゆげ」


アプリ坊主は、厳しい修行の末、飛翔する術を体得できる場合がある。

珍海はその術を身に着けていたのだ。


「少し、じっとしててな。」


珍海は、先ほどコンビニで買っておいたペットボトルのジュースの中身をすべて捨てると、紐で結びつけ、まゆげのお腹あたりで浮き輪がわりになるように固定した。


「大した足しにならんかもしれんな…」


次に、その場にあぐらをかき、目をつぶり瞑想しだした。

そして、アプリ坊主のお経を唱えだす。



珍宝工 万宝工 毛万項万 穴荒開界 (ちんぽうこうまんぽうこうもうまんこうまんあなあれかいかい)


尿酸値 雲山地 若年壮年 是捨労流 (にょうさんちうんさんちじゃくねんそうねんこれすてろうる )


合力之 矢無宝 万無宝 天気予報   (ごうりきのやむぽうまむぽうてんきよほう)


拙者之 名前派 矢無宝 (せっしゃのなまえはやむぽう)


某之  名前派 万無宝 (それがしのなまえはまむぽう)


二人 合和世手 背供露素騨     (ふたりあわせてせくろすだ)


君人 僕人 出 背供露素騨 (きみとぼくとでせくろすだ)


大器名 穴空 小差名 穴間出 (おおきなあなからちいさなあなまで)


動加州 力打 亜振乃 猛出流     (うごかすちからだあぷりのもうでる)


※ 繰り返し



サビまで歌い終えると、股間のTENGOが激しく振動し、「ブーン!」という音と供に珍海の体が、地上70センチほど浮き出した


「おいで、まゆげ」


珍海はまゆげを抱きかかえると、沖合いへと飛翔した


{うぽっ!}

{がはっ…!}

{…万策ぅ~}


クロールで陸地を目指していた宮崎だったが、寄る年波には勝てず、そろそろ走馬灯が見え始めている頃であった。

だが、丁度そのとき、珍海がまゆげを連れて、遭難現場に到着した


「じいちゃん、つかまって…!」


ペットボトルをくくりつけたまゆげを、海に着水させ、自身は空中を飛びながら、端末を操作し、陸地への最短距離を探した。


コンビニで買っておいたゴミ袋も浮き輪がわりにし、およそ40分後、2人と1匹は、最寄りの陸地へとたどり着くことができた

どうやら、そこまでは遠くに行っていなかったらしい


{ふぅ…珍海君には借りができてしまったな}


宮崎は珍海にお礼を述べると、何度もおじぎをして、帰っていった。


「おお!」


端末を覗き込んでいた珍海は、喜びの声をあげた。


人命救助が幸いしたのか、試合に勝利していたのだ。画面の隅に小さく、


「珍海君、おつかれさま by会長より」


と書かれていた。なんだか照れくさくなった珍海だったが


「あ…」


ふいに、置き去りにしていた犬馬の事を思い出し、とりあえず合流すべく珍海は公園へと向かった。






珍海とまゆげが公園に着くと、すでに犬馬の姿は無く、荷物もきれいさっぱり片付けられていた。


「あー…」

「他に何か、忘れ物無かったっけ」


珍海がうろうろしてると、側にいたまゆげが「さっ」、と身構えた


〔会長からです〕

〔とりあえず会場に戻るようにとの事〕


黒服でサングラスを掛けた、会長の従者らしき人物が、ふいに背後から現れてそう告げた。


「ああ、うん解った」

「のり子は?」


珍海がそう尋ねると、黒服は手元の端末を操作して情報を集め始めた


「ああ~…」

「やっぱ、いいよ、ごめん」


のり子の事を把握して無い事を悟った珍海は、制止した


〔では、そういう事で〕


操作しかけた端末をポケットにしまうと、黒服は姿を消していった


「見た目あやしいんだよな~、あいつら」

「…給料どんなもんなんだろ?」


珍海は笑いながらまゆげにつぶやくと、ぼーっと昔の事を思い出しながら会場に向けて歩き出した。



犬馬とは高校のアプリ坊主部にはいってからすぐに知り合った。顧問の先生に紹介され、すぐさま他の部員とともに修行

にとりかかる事となった。


― これはそのときの事。


アプリ坊主は精神修行のフェイズがあるのだが、それはとても厳しいものであった。まず、生徒のアプリ坊主が正座をし、目を閉じて瞑想する。

このとき思い描くのは、晩御飯のおかずの事であったりとか、新しく発売されたゲームの事であったりとか人それぞれなのだが、珍海は「今の日本」の事についてであった。

治安は素晴らしく維持され、さしたる犯罪もおきず、自殺者数も他の国に比べれば、圧倒的に少ない。

外国からは褒めちぎられ、男女は仲良く手を取り合い…

ここまで考えたとき、珍海は何か心に引っかかるものを感じた。


「手を取り合い…」

「手…?」


だが、珍海が作り出した妄想中の男女が、手を取り合った末に、ラブホテルで調合金合体し始めた事によって、頭の片隅に引っかかっていいた物は引っ込んでいった



「ハァハァ…」


興奮した珍海は、代わりに、股間のTENGOが、むくむくとそそり起っていった。― その瞬間


《喝ぅぅぅつ!!》


アプリ坊主顧問の先生の、特大TENGOが珍海の肩を直撃した


「いっ…痛づぅ…!!」


苦痛に顔を歪める珍海。だが、


《喝ッ》

《喝ッ》

《喝ッ》

《喝ッ》

《喝ッ》

《喝ぅぅぅうつ!!》


容赦なく顧問の先生は、様々なポージングを取りながら、珍海のいたるところを特大TENGOでなぶり叩く。

そして、一旦、修行部屋の奥まで行き、走って助走をつけると空中に跳躍し、膝とTENGOを抱えてくるくると回転しはじめた。

このまま空中から、かかと落としのようにTENGOを打ち付ける気なのだ


《食らうが良い珍海!!》

《先生の愛のムチをなぁぁぁぁ!》


己の未熟を恥じ、観念した珍海が目を瞑る。今まさに、TENGOが珍海をとらえようとした矢先、ふいに隣に座っていた犬馬のり子が間に割ってはいる。

そして両手で白刃取りの要領で


「バシッ!!」


という音と供に、先生のTENGOを掴んでみせたのだ


〔おおおおお…!〕


〔どよどよ…〕


すべてのいきさつを固唾をのんで見守っていたほかの部員たちも、思わず驚きの声をあげる


『先生っ』

『…ぐぐっ』

『やりすぎだと思いますっ…!』


犬馬は、先生のTENGOの圧力に耐えながら、下腹に力を入れた声で言い放った


《ほほう》

《では、先生の愛のムチは…》


剣豪同士のつばぜり合いのように、先生のほうも、ぐぐぐ…とTENGOのほうに力を入れる


《どうしてくれるというのかね?》


ぐいっと顔の前にTENGOを突き出す先生に対し、犬馬は


『…』

『……こうします』


と、側面から口にくわえてみせた。


《うっ…!》


まるでハーモニカを吹くように、先生のTENGOをくわえている。先端部分を右手で丸く球を描くようにこすり、余った左手で棒の部分をこする。しかも口は高速で左右になめつくす。



《うっ…うっ…!》

《うわぁぁぁぁぁぁぁ!!》


先生はあっという間にTENGOの先から白いオーラを出し、その場に崩れ落ちた。


『ん…』


顔や体にかかったオーラを手ですくって口に運び、飲み尽くす犬馬。そして


『うわぁ』

『先生早すぎぃ~!…(笑)』


犬馬は、意地悪い笑顔を浮かべながらとどめの言葉を放ち、先生のプライドをへし折ってみせたそして


『ほら、あんたも』

『いつまでもへたりこんでないで』

『しゃきっとしなさいよ』


落ち着いた感じでそう言って、その場に座り込んでいた珍海をそっと抱きしめたのであった





パーツから放出されているのは「オーラ」です

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