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アプリ坊主  作者: 蚊取TENGO
第一章
17/82

1-17 万南無高校VS雲葛高校 12『キンタ、マカオにTwitter』

物事には建前と言うものが少なからず存在する。危険な単語をありのままのストレートな表現はできないし、万が一してしまったら大問題に発展する場合もある。

ただそれは、言葉という記号上、発信者の悪意が有るか無いかで大分変わってしまう性質を持つ。

例えばたまたま同じ読みかたで、2つ以上の意味合いを持つ別々の単語であったりとか、連呼したりすると卑猥な言葉にだんだん聴こえてくるとか。

それに心がこもっていない限り、言葉とは単なる記号になってしまうのだ。



それを踏まえてあえて言おう。


【キンタ、マカオにTwitter】


であると。あんまり関係ないけど。





このままなんの成果もあげられなければ、紫色のオーラも無駄になってしまう。両者の顔に焦りの色が浮かんだ。事の推移を見守っていた店主がふいに声をかける



{あの…}

{ワシが思うに、バランスが取れていないのじゃよ…}


そうつぶやくと、店主は自分の右手の人差し指をかるくしゃぶり、部屋にかざした


{ふむ…風の影響はないようじゃの…}


続いて、顔面を畳すれすれにもっていき、ゴルフの芝を読むようにラインを見極めた。

実は、畳のラインというのは重要で、靴下で走り回るとよくわかるのだが、横を向いているか縦を向いているかで全然摩擦係数が違ってくる。

ましてや足の裏にジャンプして飛び乗るという、無謀極まりない精密な作業においては重要な役割を果たすのだ


{角度じゃ}

{角度がよろしくない}


店主は右手と左手を組み合わせて長方形を作り、そこから覗き込むようにして心技タイと畳とを交互に見定めた。



{少しこう…こちらのほうに体を向けるのじゃ}

{そうそうんな感じじゃ!}

{ストップ!}

{そうそう、そこじゃ}



身振り手振りでポジションを指示する店主




くわっと目を見開いて最善の位置を伝える


{あとは…}


そこまで言いかけて店主は顔を赤らめ、もじもじとし始めた。試合を急ぐ翼子は待ちきれずに、店主に質問した。


『あとは?』

『あとはどうしたの?』


店主はたまにちらちらと翼子と心技タイを見てもじもじしている。翼子が続けて質問する


『おしっこか?』

『おしっこ我慢してるのか?』


翼子はゆっくりと店主に近づいた。


『店主はそういうプレイスタイルがお好みか?』


ハァハァと息をあらげて店主に詰め寄る翼子。だが、彼女の期待するものではなかったらしく、店主はまったく別の事を言い出した


{ワシと…}


ちらちらと翼子と心技タイを見定めて店主は続けた


{ワシと手を繋いで一緒に飛んで欲しいんじゃ!!}


店主は緊張のあまり気をつけの姿勢になりながらも精一杯力強く答えた。


「そうか…!その手があったタイか…!」


心技タイは、すべてを悟ったらしく、


「翼子店主の言う通りタイ」

「2人で飛ぶんじゃ!」


翼子に向けて指示を出した


『……2人でおしっこ飛ばすの…?』


翼子は口を開けたまま右手であごを押さえてしばらく考えると、結論を出した


「いや…そうじゃなくて」

「うん…?待てよ」



心技タイの股間のレバーが、かすかにびくん、と震えた。




店主の提案した物と翼子の主張する物が食い違っていた為、一瞬否定した心技タイだったが、翼子のアイディアも素晴らしい物であった。

そもそもこの作戦は、「天井に吊るされたボールをスタイリッシュに舐める」事が目的である。ならば放尿しながらボールを舐めれば、

例え着地に失敗して少々綺麗に決まらなくても、充分スタイリッシュと判定されるかもしれない。欲を言えば、そこらの三流CGムービーのように、動きをゆっくりにして舐めればなお良いのだが、

今の疲弊している翼子には無理だろうと、心技タイは判断した。


「翼子…行けるか?」

「いや、出せるかタイ?おまえにその必殺のシュートが」


心技タイは仰向けのまま腕を組んで瞑目しながら翼子に問いた


『大丈夫。やりとげてみせる!』

『ガッツはまだ充分さ!』


翼子は闘志をみなぎらせると、自分に言い聞かせるように答えた


{ワシはお嬢ちゃんについていくだけじゃあ!}


店主も闘志をみなぎらせると、自信の頬を両手で、ばしっ、ばしっと叩いて気合を入れた


翼子と店主は助走のラインを再確認すると、位置についた。2人の手はがっちりと繋がれている


「来いーーーー!」


心技タイの号令の元、2人は一斉に走り出した。だだだっ、と勢い良く心技タイに駆け寄る


{うわぁぅう!!}


店主がバランスを崩し、心技タイの股間に倒れこむような形で頭突きをしてしまった。


「!!!ふぐっ!」


白目をむいて気絶する心技タイ。


『オゥゥバァァドラァィヴ!!』


すかさず店主の手を離して巻き添えを回避しようとした翼子であったが、間に合わず、店主と供に崩れ落ち、浴びせ蹴りのような形で

タイを蹴っ飛ばした状態で失禁した。尿がじょぼじょぼと太ももをつたって流れていく。


『あっあっあっ!!』


黄金色の水を流しながら打ち震える翼子。ついでにタイに尻を揉まれる。


――そしてしばらくして


「決着!!」


部屋の隅に置かれていた、心技タイの端末から、試合終了を告げるボイスが流れた。


『…えっ?』


しばらく痙攣していた翼子だったが、我に帰ると心技タイの端末を覗き込んだ。そこには勝者、犬馬&珍海ペアとはっきりと記されて

いた。やはり、最後のお題目が3回連続で失敗したことが査定にかなり響いたらしい。加えて、心技タイと店主が戦闘不能に陥った事

によりもはや手詰まりと判断されたのだ。ボール(股間の)を痛めつけてしまったことも大きい。


つまりサッカーに例えると、自分で自分のゴールにシュートして、相手に点を入れてしまったようなものなのだ


『…いかない』

『納得いかない』


納得いかない翼子は大会本部に直接文句を言いに行こうと思い、荷物をまとめると部屋を出ようとした


{…待ちなされ}


『うるさい!』

『くらえモンゴリアンチョップ!!』



首筋を痛めた店主は周りの状況を確認すべく、見渡すと心技タイの顔のほうに近づきながら言葉を続けた


{決着はもう着いてしまったんじゃろ…?}


気絶している心技タイは大の字型で白目をむいていたが、店主は心技タイのまぶたを指でそっと閉じるとさらに、腕を胸の辺りで祈るようなポーズに組み替えてあげた。


{じゃったら…現実を受け入れなされ}


さらに店主が続ける。


店主に諭され、口を開けたままうつむいて考える翼子。そして


『わかったよ』

『素晴らしい試合だった…』



{おじょ…}

{ギヴ。ギブギブ}


翼子が店主にチョークスリーパーをキメる。そして履いていたパンツを脱ぎだした。股間にはモザイクがかかっている。これは大会運営側の配慮であろう。


{うむうむ…}


店主も釣られてパンツを脱ぎだした。言葉は少なかったものの、意思の疎通は取れていた。これは供に戦った”仲間”として

お互いの身に着けている衣服を交換するという儀式なのだ。


{達者でな}


店主は翼子の尿がたっぷり染みこんだパンツをビニール袋に保存すると、しみじみと語った。


『うん』

『来年…来年また必ず来る!』



{うむうむ}



翼子は店主から受け取ったブリーフをかばんに詰め込むと、会場に待機している顧問の先生と合流すべく、雑貨屋をあとにした。





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