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アプリ坊主  作者: 蚊取TENGO
第一章
16/82

1-16 万南無高校VS雲葛高校 11『もののはずみ』

古来より長蛇の陣、方矢の陣など様々な陣形が軍略家達によって敷かれてきた。その役割を現代に当てはめれば、目的に対し効率良く配置を変える作業なのである





『ちょっとちょっと待って』

『ナニコレ』


「ううむ、ワシもそう思っておったところだったタイ」


翼子は納得の行かない様子であったが、翼子自信その原因を特定できていない。



{ワシはちょっと喉が渇いたわい}


店主はそういうと、机の上に置いてあったしっとりサッカーボールのほうをちらりと見た。麦茶をコップ3杯分吸ったボールは水分を

たっぷりと含んでいて、とてもおいしそうだった。


{うほほ~っ!}


店主はそう叫ぶと、サッカーボールに飛びつくようにして吸い始めた。


『あっ…!ずるいぞっ!』


翼子もすかさず空いているスペースに顔をすべり込ませると無我夢中で吸い始めた


「わしも参加するタイー!!」


心技タイも残りの空いている方向から顔を突進させ、すばやく吸い付いた。


こうして、はからずとも3方向から同時に吸うという理想の陣形が組みあがった。何も難しく考えることはない、ただありのまま空いている

スペースに顔を入り込ませればよい。そう気づいた3人であった


ある者はじゅぽじゅぽ、とボールを吸い、またある者はぺろぺろとボールを堪能する。幸せの音が部屋に鳴り響いた。




よつんばいになりしばらくボールを堪能していた3人だが、コップ3杯分もの麦茶を吸収したしっとりボールは徐々に枯渇していき、やがてぱさぱさになってきていた。

店主が、ちらりと翼子のほうを見ると残された水分を求めて鼻をくんくんとさせていた


{待っておれ、今持ってきてやるわい}


よっこいせ、と立ち上がり台所のほうに向けて歩き出した


『ピエールくん。ちょっと待っててね』

『すぐに元気にしてあげるから…』


翼子がしなびたボールに優しく話しかける。このサッカーボールはどうやら、(ピエール)という名前であるようだ。

ボールと友達になる能力だけでは飽き足らず、名前まで聞き出してしまうとは恐ろしい能力である。

この土壇場においてしっとりサッカーボールはピエールという立派な名前で呼ばれることとなったのである


「翼子…その子と友達になれたんタイな…」


心技タイは、心から嬉しそうな顔をして2人(翼子+ボール)を祝福した


『うん…でも』

『こんなにしなびてしまって…』


翼子はそういうと目を細くしてピエールを抱きかかえた。


『タイも時々でいいから思い出してあげて』


ピエールをさすりながら翼子が続ける


『全盛期のピエールを思い出してあげて』


感極まった翼子はピエールに頬ずりする


「翼子…」


心技タイはそうつぶやくと、次の言葉が出てこずに絶句した


{またせたのう、諸君!}


新しい麦茶をペットボトルごと持ってきた店主は、得意気に現れた。


『店主さん、お願いします』

『ピエールを…ピエールを助けてあげて…』


翼子は持っていたピエールをテーブルの上に戻すと、片膝をついて、手を体の前で組んで祈るような姿勢を取った


{んぐっ}


店主は持ってきたペットボトルのキャップをはずすと、ひとくちだけ飲み、残りをピエールにそそいだ。

すると、いままでぱさぱさだったピエールは、水気を吸ってみるみるうちに膨らんできた


『わぁ…すっごい!!』

『ピエールすっごい!!』


翼子はすぐさま飛びつき、頬ずりしながらしゃぶった


『大きいの!!すごく』

『ん”っ…!!』


ハァハァと息を荒げて翼子が時折り痙攣した


『ん”ん”っ!!』


びくん、と翼子が打ち震える。だが、粘りを見せて引き続きしゃぶる


『き…来ちゃう~!!』

『いつもの来ちゃううぅぅぅ!!』


体を仰け反らせて痙攣する翼子


『あ”っ』

『あ”っあ”っ』

『ゆぐぅぅうっぅぅうう~~っ!』


咆哮をあげ、ぐったりとする翼子


「今じゃい!翼子!!」

「股間のレバーを叩くんタイ!!」


試合を決着に導く為に、心技タイがダメ押しの指示を出す。アプリ坊主が股間に装着しているTENGO(テンゴ)というレバーを叩くと

能力者にさまざまな恩恵が得られる。ただし、多くても一日に3回くらいが限界な為、あまり乱用はできないのだ。


『うっうぐっ…ひっ…!』


痙攣しながら必死に心技タイのレバーに手を伸ばす翼子。そして


「ん”っ!!」


心技タイのレバーをおもいきり強打した


「(ポコチーンポコチーン!)」

「アプリぼぅぅぅうううず!!」


心技タイの咆哮とともに、レバーの先端から翼子に向けて紫色の液体とオーラが激しく放出された。


「ぐあおををんっっっ!!」


股間を押さえて悶絶する心技タイ。股間を能力者に叩かせるという荒業は並外れの精神力を要する。まだ学生のアプリ坊主には非常に過酷

なことなのだ。しかし、それによって得られる効果は抜群だ


『あうぅぅ』

『べとべとだよぅ…』


紫色のねばねばした液体を体にかけられて少し困惑する翼子だったが、すぐに気を取り直すと手ですくって口に運んだ


『うっ…にがっ…』


良薬は口に苦し、とはまさにこの事であろう。紫色の液体は苦かったようだ。


アプリ坊主のレバーを叩いたときに放出される液体とオーラは様々な色と味があり、青色のオーラと液体は、ソーダ味で比較的口当たりも良く初心者にもやさしいことが多い。

ただ、市販のプロテインに人工的に付けられている味と一緒で、どこかぎこちない味だったりする。


色は全部で5段階あり、順に受けれる恩恵が高くなっていく


白<青<緑<赤<紫<虹色 の順で強くなるので、紫色だった今回は相当強いオーラだったということだ


このうち、赤いオーラだけはレバーの叩きすぎでも放出されたりするので注意が必要だ


『ん”ん”ん”っーー!』


アプリ坊主の出した液体とオーラを自らの体に取り込み、身もだえする翼子。と、同時に彼女も紫色のオーラに包まれていた。


「来たタイ!!」

「ついに来たタイよ!!」


心技タイが手元の端末を見て震えていた。翼子と店主もすかさず覗き込む。


「おお」

「これは…」


そこには、勝利する条件が記されていた。「天井からボールを吊るして、スタイリッシュにボールをしゃぶれ!!(成功報酬:勝利確定)」


{ス…スタ?なんじゃと?}


店主はよくわかない様子であったが、翼子とタイはすぐに理解したらしく、早速準備に取り掛かる


「店主、ちょっとこの部屋を使わせてもらうタイ」


心技タイは、部屋に打ち捨てられていた荷造りひもと脚立はしごのようなものを取り出し、サッカーボールと結んだ。


『コレ借りるねっ!』


翼子は、部屋の片隅にあった電動ドリルで天井に穴を開けた。そして、サッカーボールの紐を通すと、あっというまに、天井からぶらさげ

られたサッカーボールを作り出してしまった。てきぱきと作業を終わらす。実に素晴らしい連携だ。


「問題はここからタイね…」


心技タイは、仰向けになると柔道でいうところの受身のポーズを取った。そして足を軽く上げて、折り曲げて止った。これは、この状態の足の

裏に翼子を乗っけて、ジャンプさせて高く飛び、スタイリッシュにボールをしゃぶるということだ


『準備いい?』


翼子が部屋の反対側まで後退して心技タイに尋ねる


「おう!」

「バッチ来いタイ!」


心技タイの準備ができたことを確認すると、翼子は助走して心技タイの足の裏に向けてジャンプした。そして3流CGムービーのように

ゆっくりになると、その瞬間「グシャッ!!!」という音が部屋に鳴り響いた


「痛っっい”ダイ~~~っっぅっああああああ!!」


翼子は心技タイの股間をゆっくり踏み抜いていた。どうやら狙いが少しはずれたようだ


『あっははは!ごめんね?』

『でも、ボールは友達なんだし』

『痛くないよねっ?』


翼子はそう言うと、少し考えてもう一度言い直して、新たに助走すべく部屋の隅に戻った


『踏み外したけど、愛さえあれば関係ないよねっ!』

『ほらおまえ、なんか適当にタイとか言っとけよ』


心技タイは悶絶する勢いの痛さだったが、勝利を導く為にはなんとしてもこれを決めねばならない。股間を押さえていた手を大の字型に戻し、

足を上の方向に戻すと翼子を激励した。


「う”ぅ”をを!!」

「翼子…いいからさっさともう一度来るんじゃあ!」


だだだっ、と再び助走をつけて走ってくる翼子に対し、


「TENGOしゃぶらすぞコノヤロウ!!」


心技タイは目を見開き叫んだ。少し根に持っていたらしい



「(グシャッ!)」

「ぐぁぁぁぁ!!」



翼子は動揺して体勢をくずし、再び黄金の右足がタイの球を捉えてしまった。

秘境を押さえて悶絶する心技タイ。翼子のほうも、踏み抜いたときにバランスを崩し、横に倒れていた

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