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アプリ坊主  作者: 蚊取TENGO
第一章
11/82

1-11 万南無高校VS雲葛高校 07『ゴーヤだからさ』

しゃぶる行為というのは飲む動作の代替品であり、決して効率の良い事とは言えない。だが侮る無かれ。生まれたての様々な生物がそうするように、本能として秘められた潜在能力のひとつなのだ。





心技タイが翼子のほうを見ると、彼女は唐突に男の子の指をしゃぶっていた。続けざまにビニールボールを舐める



『ん”ん”っ!』


一瞬、体をびくん!とさせる翼子


『ぴりっとしたっ…ぴりっとした味がしたのっ!』


母親はぐったりとした様子でバスの天井を見上げた。目には涙を浮かべている


『ん”っ!?…そしてこっちっ!』


再び男の子の指のほうをしゃぶる翼子


『こっちにも友達(ボール)の味がするのっ…!』


じゅぽじゅぽと男の子の指をしゃぶり、またボールを舐める。舌先に2つの異なる物質の絶妙なハーモニーが加わる。男の子の指は今まで持っていたビニールボールの味がかすかにしたようだ



『指っ!!』」

『ん”ん”っ!…』

『友達っ”っ!』

『ううっ!!』

『指っっ!!』

『ハァハァ…』

『どもだぢっっっ!!』


一心不乱に指と友達ビニールボールを交互に舐め尽す。火照り切った体に最後の一撃が加わる。


『ん”ん”っ!…凄いのっ…!』

『凄いの来ちゃうう”ぅっっ~~~~!』


そう言って翼子は体を激しく痙攣させて、男の子の体の中に顔をうずめた。ぐったりとしているが全力を出し切った、とてもさわやかな顔をしている。


そうこうしているうちに、1つ目のバス停を通り過ぎた。

心技タイは端末でスポーツ用品店の場所を確認していたが、ここからあと、2つ先のバス停で降りなければならない


「時間が無いタイ。翼子。」


心技タイは、なるべく翼子を刺激しないように落ち着いて呼びかけた


『…えっ?』


幸せの絶頂に包まれていた翼子は急に現実に引き戻され、男の子の膝の上から、ちらり、と心技タイのほうに視線を向けた。心技タイは、うつむいて首を横に振った。

男の子の母親はぐったりとしたまま、空中を見ていた。


『…嘘だよ?』


現実を受け入れられない翼子は、再び男の子の膝に顔をうずめた。

しかし、タイは翼子を現実の世界へと引き戻す為に、肩を掴むとぐいっと引き離した。彼女の顔は涙でぬれていた


『そんなこと…そんなことってないよ』

『せっかく友達になれた』

『分かり合えたと思っていたのに…』


翼子はまだ未練を断ち切れていない。

心技タイは翼子に決心させる為に、今の状況を冷静に伝えた


「翼子、今試合を逃してしまえば…」

「次は来年タイよ?」


タイがそう言うと、翼子はすかさず


『来年でいいじゃない!!』


と、答えたあと、少し考えて


『来年でいいんじゃない!?』


と言い直して、小首をかしげたが、心技タイはバスのつり革につかまったまま一方の手で、友達ビニールボールの持ち主の母親を指差してこう答えた。


「母親を見るタイ」


翼子が男の子の母親を見ると、母親はうすら笑いを浮かべて白目をむいて、気絶しながら失禁していた。


「次に、男の子を見るタイ」


男の子は、翼子のよだれまみれの指をよそに、きょとんとした顔で放心していた


「みんな、翼子のことを認めてくれているんだよ」

「なのに、キミがそんな状態では友達が悲しむだけタイよ…」


心技タイにそう悟され、翼子はハッと。友達ボールのほうを見た。

友達ボールは、翼子の涙とよだれでべとべとになっていたが、それは泣いている様にもみえたのだ


『わかったよ』


そう言って翼子は、降りる準備をすべく、友達がいる席の前から離れようとした

心技タイも降車口のほうに向かう


その瞬間くるりと反転して、すばやい動きでボールと男の子の指に翼子は吸い付いた。


『ん”ん”っ!!?』

『今度はしょっぱいのぉぉぉぉ!』


『ん”っ!ん”っ!…』

『まままた来そう!』

『す…すぐ来れちゃうのぉぉぉぉ!!』

『く…来るー!きっと来るー…!』


そう絶叫して痙攣して崩れ落ちた。心技タイはすかさず翼子を引き剥がすと、降車口から降りた。

すでに2人分の料金は支払っていた。こうなる事を予期していたのだ


『うっ…うっ…』


痙攣から立ち直った翼子は、心技タイの腕の中でしばらく泣いた。

心技タイも泣いていた。彼の股間は膨らんでいた。


こうしてバスの中のアプリ坊主戦は終わった。非の打ち所のない素晴らしい試合内容であった。

良く解らなかった方も居るだろうが、スポーツとは得てしてそういうものである。

アナに入れたり、穴から出したり、棒をひっぱったり、しごいたりするのになんらかの付加価値をつける。

それを電子決済するのがこのスポーツなのだ。



試合の優劣を決める表示は「やや優勢」にまで回復し、傾いていた

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