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デス子様に導かれて  作者: 秀弥
3章 お金お金と言うのはもう止めにしたい
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80話 課外授業開始

 




「セルビィ、どうしたの?」

「うん? うん、アニキが遠くにいる」

「ああ、今日だけいっしょにじゅぎょう受けるんだよね。よその班になったんだ」

「きょーとーセンセーは嘘つきだ」

「でもちゃんと連れてきてくれたんでしょ」

「うん、でもいっしょだと思ったのに。それに――」


 課外授業当日。

 グラウンドに整列したセルビアたち新一年生はそこで出席の点呼をとり、そのまま開会式が行われた。

 そこで今回の授業で護衛をやってくれるギルドメンバーたちの紹介が行われ、その最後にみんなに仲良くするようにとの言葉と共に、セルビアの兄であるセイジェンド・ブレイドホームの一日限りの体験入学が知らされた。

 ちなみに当のセージは注目の集まる簡素な壇上に立って転生して転校生気分と、脳内でよく分からない楽しみ方をしていた。


 そしてセージの紹介が終わって、次にかつての英雄ジオレイン・ベルーガーが護衛に加わると告げられる。

 セージの出した安全のための条件とは、護衛役にジオを同行させるというものだった。


「なんでオヤジ?」

「セルビィのお父さんってすごく強かったんでしょ。私のお父さんがファンだって言ってたよ」

「んー、強いけど、ダメオヤジだよ。トイレ掃除くらいしかできないよ」


 セルビアが言っているのは家庭内の家事分担の話である。

 ちなみにジオの名誉のために明記しておくと、ジオは料理以外の家事はそれなりにできるしやっている。

 それもみんなが最も嫌うところを率先して行っているので、セルビアの中ではそこをやっている印象が強いだけだった。

 別に家庭内ヒエラルキーがまるで駄目な最低親父だからトイレ掃除を押し付けられているワケでは決してないのだ。



 ******



「セイジェンドくん、今日はよろしくね」

「ええ、よろしく。僕のことはセージと、長いから呼びづらいでしょう」

「えへへ。セージくんだね。よろしくね」


 屈託のない笑顔を見せる同じ班の少女に笑顔を返しながら、セージは離れたところで妹が不機嫌になっているのを感じ取っていた。

 課外授業の目的は結界の外で緊張感を味わってもらうことなので、家族で集まって馴れ合うのはよくないというのは分かっていた。

 ただ妹はそんな正論で納得してくれないだろうなと、家に帰ってからの事を不安に思っていた。


「それでね~……」


 なるべく仲良くするようにと親から言い含められている班のリーダーである少女は、整った顔立ちと落ち着いた雰囲気を持つセージに俄然やる気を出して、あれこれと世話を焼く。

 これからの日程も注意事項もすべて把握しているセージは、そんな少女に愛想よく笑顔と相槌を返して聞き流していた。



 ******



 友達と楽しそうにお喋りをしているセルビアと、同い年の女の子に言い寄られてあしらっているセージを見ながら、ジオはぼんやりと過ごしていた。

 腰元には名工カグツチを襲名したドワーフから借り受けた刀が差してあった。


「そうしていると、本当に子を慈しむ父親に見えるから不思議ですね」

「む」


 声をかけてきたのは教頭のグライだった。

 本来は課外授業に参加するような立場ではなかったが、魔人の参加を受けて、いざという時に即座に判断が下せる場所に居たほうがいいだろうと今回は同行をしていた。

 ちなみに教頭よりももっと自由で大きな権限と責任を持つ校長は逃げた。


「失敬。道中、くれぐれも諍いを起こさぬようお願いしますよ。あなたを止められるような人物はさすがに手配しきれませんでしたから」


 グライ教頭はむしろ止められる可能性のある少女の耳に万が一でも入らないようにとここ数日の間尽力していたが、そんな事はわざわざ口にはしなかった。

 聞けば必ず私も参加すると言い出すであろうかつての卒業生であり、養成校史上まれに見る問題児であり、ついでにグライ教頭が仕えている名家当主の孫娘である少女の耳に入れずに、当主を含めた家の主要人物に話を通すのはとても骨の折れる作業だった。

 しかしそんなことはわざわざ口に出したりしないのだった。


「ふん。そんなことは騎士連中に言え。

 今日は血を見る気分でもないからな、襲って来るなら峰打ちで済ませてやるさ」

「騎士が剣を向けねばならないような状況を作らないようにと、言っているんです」

「ふん」


 グライ教頭はジオの態度にやれやれと頭を振った。


「……随分と印象が変わりましたね、昔のあなたはもっと剣呑だった」

「知るか」

「ああ、そう言う感じでしたね。親になると、やはり人間というのは変わるのですね。半分魔物のあなたでもそうなのですから」


 半分魔物というのは、グライ教頭の使う魔人という言葉がジオの蔑称でもある理由の一つであった。


「なんだ、お前が喧嘩を売ってくるのか?」

「失敬」


 ジオのからかうような声音に怒りの成分が入っていないことを確認して、グライ教頭は眼鏡の奥の目元を緩めた。


「いつぞやの話ですが、私はマージネル家のご当主様からセイジェンドさんの勧誘を依頼されています」

「だろうな」

「ただしあなたとの関係をこれ以上悪化させたくないと、ご当主様にはきつく言い含められておりましてね。

 なかなか難しい話なんですが、セルビア君を学校に入れて、セイジェンドさんを入れない理由をお聞きしても?」

「セルビアが入りたいと言った。

 セージは入らないと言った」

「なるほど、わかりやすい」


 その後もグライ教頭は普段の食事や子供たちの過ごし方など、当たり障りのない会話をジオに投げかけ、ジオはぶっきらぼうに短い言葉で答えた。



 ◆◆◆◆◆◆



 さて始まりました課外授業。

 とは言っても私がやることはぶっちゃけ何もありません。

 装備に関してはちゃんとしたもの――カグツチさんから貰った短槍と予備武器としての鉈に使いきりの呪練装具など――を持ってきましたが、周りが初等科の子供たちなのでとっても浮いてます。


 これはあれでしょうか。

 生徒さんたちが帰ってから色々と御家族に言われてまして、お母様方の間で『まぁ~、ジオレインさんのところのお子さんは子供なのに立派なものを身につけて、やっぱり英雄様だからお金持ってらっしゃるのね~。え? 妹さんの方は普通だった? あらいやだ、そのセルビアって子、虐待でもされてるんじゃないかしら、や~ね~』などと変な噂が立ってしまうのだろうか。

 妹がイジメにあったら親父のせいだな。うん。間違いない。

 まあ友達は多そうだから、そんな心配はしてないんだけど。


 さて結界の外に出ましたが、産業都市からそう離れたところまでは出かけないのでぶっちゃけ安全です。

 魔力感知を広げるとおよそ三キロの半径で半円状にギルドパーティーが配置され、魔物を狩っています。

 実力的には下級上位から中級下位ぐらいのパーティーがほとんどで、一番強そうなところが中級上位で顔見知りのケシアナさんたちのパーティーだった。

 ケシアナさんたちは二年前のハイオーク・ロードの時のパーティーです。

 たまに仕事終わりが重なった時は、一緒にご飯を食べたりすることがあるぐらいには親しく付き合っています。


 ギルドパーティーが狩り漏らす魔物もいるにはいるけれど、子供たちの周辺には騎士の人が配置されていて、子供たちのところまでは通さないように配慮されていた。


 一応、私も神経を張って小型の魔物などが抜けてこないか注意しているが、周辺には念入りに探査魔法が敷かれているし、騎士の人たちは管制から連絡を受けて狩り漏らしが無いよう細心の注意を払っていた。


 ちなみに騎士の人たちが親父とグライさんに恐怖混じりの警戒心を向けながら緊張感を保っているのは、なんでなんでしょうね。

 いつも真面目に働いているはずの騎士様が、今日だけはちゃんとやらないとなんてそんな不謹慎なこと思うはずがないから、全然想像もつかないや。



 さてさて結界のお外を歩いて最初はビクビクしていた子供たちですが、魔物に出くわさないとなると緊張感の薄れるというもので、しばらくするとどんどんやかましく雑談するようになってきた。

 産業都市からそう離れていないから、緑が多くて空気がおいしいし、天気もいいのでピクニックとしてはいい条件だ。

 やはりお弁当には気合を入れてきて正解だったのだけど、まあそんな楽しい気分は課外授業の趣旨から外れる訳でして。


 先生たちは毎年のことでこんな事態には慣れているようで、すぐに子供たちの前に魔物を用意した。

 角付き兎(ホーンラビット)だ。

 見た目はそのまんま兎だけど、一メートル前後の体長と、名前の由来でもあるでっかい角がある。

 突進して敵を突き殺すぐらいしか能のない下級下位の魔物だが、子供からすると十分な驚異だ。あとお肉が柔らかいので、血抜きして持って帰ったらお小遣いがもらえる。

 ただそうは言っても見た目は兎で、可愛らしい外見とつぶらな瞳をしている。


 子供たちは初めて見る魔物に怖がっているのが半分、興味津々で目を輝かせるのが半分とで分かれており、後者の中には露骨に可愛いと黄色い声を上げる子もいた。ちなみにうちの妹です。


 先生たちはそんな生徒の反応を予想していたようで、おもむろに綿と布で作られた人形を取り出した。これまた女の子受けしそうな、可愛い女の子の人形だった。

 先生の一人はその人形をホーンラビットの前でちらつかせ、そしてその突進を人形で受け止めた。

 ただの布と綿でできた人形が鋭い一突きに耐えられるはずもなく、人形はあえなく串刺しになった。

 子供たちから悲鳴が上がる。


 その先生はそんな悲痛な叫びを気にもとめず、今度は一刀でホーンラビットの首を切り落とした。

 悲鳴は絶叫に変わった。


「黙れっ!!」


 子供たちの叫びを、その先生が一喝して収めた。


「魔物を甘く見るな! 油断するとこうなるのは君たちだぞ!」


 そう言って先生はポッカリと胸に穴の空いた人形を掲げた。首がだらしなく垂れ下がるように持っているのには悪意がありませんか?

 そして次はホーンラビットの首を高々と掲げる。


「見た目に騙されるな! 魔物は殺せ! 魔物は君たちを殺す! 君たちの家族を殺す! 隣人を殺す! 友達を殺す! 殺される前に殺せ! 

 わかったな! 騎士とは友を守り、隣人を守り、家族を守り、そしてこの国を守るものだ! そのためにも魔物は殺せ!

 ――復唱!!」


 そういって先生は騎士とは何ぞやといって、子供たちがそれに倣って先生が口にした言葉を叫ぶ。

 ちょっとしたカルト教団の集会の様相を呈してきた。

 班のリーダーの女の子も、私の脇を突いて、言わないとと促してきたので、口パクで誤魔化すことにした。


 妹をこの学校に通わせ続けていいんだろうか。

 でも危険な都市だし、魔物に対して冷酷になれるっていうのは必要なことかな……。ああでも、情操教育的にははっきりアウトだよね。

 私が深刻な顔で悩んでいると、いつの間にか親父が近づいてきていた。


「お前も気づいたか」

「まあ、ね」


 守護都市に一つしかない学校だからそんなに悩まず入れちゃったけど、もうちょっとちゃんと学校のことを調べておけばよかった。

 いや事前に調べた限りでは、普段の授業はもっとちゃんとしたものなんだけど、こんな洗脳まがいのこともやっているとなると妹の将来が怖い。


「匂いが変わった。魔物が来ているな、それも大勢」

「――え?」


 何を言い出すの、このバカ親父。





ジオ(――新しい武器、セージとセルビアが見ている。ふっ、燃えるな)


~~ちょっと離れたところで~~


友人A 「セルビィのお父さん、笑ってるね」

セルビア「き、きもちわるくなんてないよ!!」

友人A (せくしーでかっこういいって言いたかったんだけどなぁ……)

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