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デス子様に導かれて  作者: 秀弥
3章 お金お金と言うのはもう止めにしたい
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73話 大変な事態が発生した

 




 親父の使った神技は、技の発動から発動後の効果まで一切合切全て見通せなかった。デス子の加護でも見通せないものがあるという事は理解できたが、それ以上の価値は無く、親父があそこまでする必要は無かったんじゃないかと薄情にも思ってしまう。

 いや、本当に価値が無かったとは思っている訳では無いけど、親父のダメージを考えると、まあ余計な事を考えてしまうのだ。


 ただし収穫もあった。

 それまでは黒い靄のようにしか感じられなかった竜の呪いだが、親父の魔力を食って活性化したそれははっきりと見えた。

 まあ見えただけでまるで理解できなかったのでどうしようも無いのだが、しかし見えるのは見えた。

 私の知っているどの魔法とも構成がまるで違うので魔法の勉強だけでは足りないだろうが、いつかはどうにかできるようになるかもしれない。

 まあそれはそれとして、当面は現実的な問題にあたるんだけど。


 謝罪金として貯金全額を寄付金にあてたので、お仕事を頑張る羽目になりました。

 いやまあ、私の収入が無くても家計の方は問題なくなっているのでそんなに焦る必要も無いんだけど、貯金額がゼロというのは心の健康によろしくない。

 特に一度散財のイベントが起きると、立て続けに何かしらおかしなことが起きそうな経験則に基づく不安があるので、早めに自由にできる纏まったお金を確保しておきたい。


 しかしそうは言っても私は中級のギルドメンバー。

 そしてベテラン勢からも新人たちからも、お前みたいな子供と組めるかよとハブられたのでソロでやっております。

 ソロの場合、獲物を見つける手間や戦闘の難易度、また奇襲を受ける危険性の向上やいざというときの対応力など、もろもろの問題がある。

 なのでよっぽど自分に自信があるか性格破綻者でもない限り、好んでやるような事では無い。


 もちろん私は自信があるわけでも性格破綻者でもないのだが、パーティーメンバーが見つからないので、近場なら大丈夫だろうし、いざというときはすぐに逃げ帰ろうと、試しに出てみました。

 そしたら意外に問題なくやれました。


 いやね、スーパー魔力感知があるから獲物は割と簡単に見つけられるし、奇襲を受ける事もほぼ無くむしろ逆に奇襲が出来るし、そもそも相手を選べるという利点がとても大きい。

 たまに先に捕捉されて望まない戦闘に陥る事もあったけど、それだってかなりの遠くからこちらを発見できる異能持ちの魔物に限られた。まあ初見の時は死にそうになったけど。


 そんな訳で、案外ソロでもやれた。

 そしてソロだと分配する必要が無いので、利益率がとてもよかった。

 この仕事は安全のため魔法の力が込められた高価な消耗品を用意するのだが、私はそれも自分の物だけを用意すればいいので――しかも使わずに済むことも多い――経費がすごく安い。

 しばらくして以前に声にかけた新人さんたちが、一緒にやってやってもいいんだぜなんて声をかけてきたが、丁重にお断りさせてもらった。

 もうソロでのお仕事にも慣れて困ってなかったし、どこからか親父の事を聞いてきて、手のひらを返した相手は信用できなかったのです。


 少し話がそれたが、そんな訳でお金は結構簡単にたまった。恐れていた追加の散財イベントも発生しなかった。


 だいたい一か月ほどお仕事をして、そのたびに支援要請に駆けずり回ったが、まあお手当が追加されるのでよしとしよう。

 ただギルドのお仕事って給与明細を貰わないから、いくらぐらい増えてるかまるで分らないんだけど、まあきっと増えてはいるだろうから良しとしよう。


 ……今度、アリスさんに聞いてみようかな。

 ミルク代表の商会はちゃんと給与明細を付けている。

 私の時は税金やら児童労働に関する法律やらで記録に残しづらかったので、ミルク代表のポケットマネーから支払われていたから無かったけど、納税の関係でそこら辺はちゃんと記録に残さないといけない。

 そして給与明細があるなら労働者に交付されて当然なのだが、ギルドでは一度も貰った事は無い。

 アリスさんからお金入ったよーと、ギルドカードを渡されて終わりだ。

 ギルド・メンバーはだいたい脳筋の集まりなので、明細貰ってもすぐに捨てるのが多いせいで渡さないのが当たり前になっているのだろう。


 まあ仕事を受ける際に大まかな金額は計算できるけど、そこから税金やらが引かれたり、あるいは支援要請受諾などの何かしらの理由で追加手当が入る事も多く、実際に貰える金額は違ってくる。

 あんまりお金に汚いとは思われたくないけど、モチベーションの問題もあるし、一回ちゃんと聞いてみよう。



 ******



 さて、ちょっと落ち着いて近況報告などしてみようと思う。

 家の道場で預かっていた不良たちは、この一年でめでたく卒業して社会人になりました。ギルドに登録した人間は少なく、だいたいがミルク代表の所に就職した。

 ミルク代表は口が悪い割に面倒見がよく子供好きなので、あれこれ問題を起こす不良たちに根気よくつき合い、お袋と呼ばれていたりします。

 普通にいい話なんだけど、マフィアのボスを連想してしまったのはなんでだろう。


 ギルドに登録した少数は外縁都市に接続した際に降りて、ハンターとして頑張っています。

 最初から守護都市とか身体張りすぎだもんね、そうだよね、普通はハンターからだよねー。


 彼らが降りる頃にはまあ少なからず情も移っていたので、送別会を開いていくらかの支度金も渡した。

 四年後には必ず戻ってくるから、その時はまた道場に入れてくれと言っていた。

 付き合ってみると不良連中も結構ピュアなハートの奴らだった。

 まあもともと育児放棄されて育った子供たちだし、優しくされることに慣れてないんだろうなーと、プアなハートの持ち主な私は分析してみた。


 親父はあれから元気にやっている。

 呪いや怪我はたいしたことが無いと言った様子で、いつも通りに振る舞っていた。

 呪いは少し進行してしまったが、魔力を通さなければこれ以上は進行しないから気にするなと、様子を聞いたら逆に気を遣わせてしまった。


 親父の呪いは竜が死の間際に力を振り絞って残したもので、それを解呪できる人材はこの国にはいないらしい。

 アーレイさんなどにも話を聞いてみたが、それが出来るのは伝説上の人物ぐらいだと言われた。どうやら呪いへの対処は独学で何とかするしかないようだ。

 なお、あんまり自信はない。


 兄さんは相変わらずミルク代表の所でバイトしながら、道場で体を鍛え、最近はシエスタさんと一緒に勉強をしている。夜の保健体育とかそんないかがわしいことでは無く、真面目な勉強だ。

 シエスタさんも忙しい人なのであまり時間は取れないようだが、兄さんが解いた問題集や書き込んだノートを見てアドバイスなどしていた。

 せっかく保育士さんを雇って家の手伝いの時間をする時間を減らしたのに、まるで楽になったような雰囲気が無いのが最近の兄さんだ。何を焦っているんだろう。


 対して、姉さんはぼんやりすることが多くなった。

 ずっとブレイドホーム家の託児係をやっていた姉さんだけど、さすがに大人の保育士さんたちほど仕事が出来る訳では無い。

 いや、姉さんは子供が好きで慣れているから色々と気が回るんだけど、体力とか身体の大きさとかあとは子供に読み聞かせをやったりする学力とか、大人にはかなわない部分がどうしてもあると言う話なのです。


 それに保育士さんは二人雇っているので、姉さんと三人でやれば休憩時間というのもちゃんと取れるようになる。

 今まで取れなかった辺りブラックすぎる労働環境だったけど、姉さんはそれに慣れてしまったため、休憩時間に何をすればいいかわからずぼーっとすることが多くなった。


 若いうちからボケるんじゃないかと心配になったので、家庭菜園の草むしりでもやってみたらとアドバイスしてみた。

 家庭菜園は妹が学校に通うようになったので、手の行き届かない部分が出始めていた。

 そして姉さんは三日で草むしりに飽きた。まあ向き不向きってのはあるよね。

 草むしりは私と妹が定期的に、さらに保育士さんたちや意外なことに親父も暇なときにやってくれているので、どうしても必要な事でも無い。

 姉さんには何か趣味が必要だと思った。


 次兄さんは料理屋のバイトを頑張っている。

 すぐに飽きるかなーとも思ったのだが、意外と長続きしている。というか、料理のバイトが楽しいようで毎日楽しそうにバイトに向かっている。

 そんな次兄さんなので、バイト先のご主人にも大分気に入られていて、冷やかしに行ったらずいぶんと仲良さそうにしていた。


 家での料理も手伝うようになり、最近では料理は私と次兄さんと、あと妹の三人が担当することになった。

 ……担当から外れた一人の事は、そっとして置いて欲しい。

 デリカシーのない次兄さんがポロっと、マギー料理下手くそじゃねなんて暴言を、一緒に料理した際に漏らしたのが原因だ。

 次兄さんは一週間ほど姉さんから無視されて、泣いていた。そして姉さんも周囲の評価にはうすうす気づいていたようで、二度と厨房に立つことは無かった。

 そんな姉さんをフォローしに行ったら、どうせ味音痴だもん。マヨネーズがあればいいもんとふて腐れた。


 そしてもっとも大事なのは妹の事だ。

 妹は前に話した通り騎士養成校に通っている。赤いランドセルは背負ってないけど、ぴかぴかの一年生だ。

 最初は嫌々通っていた妹も、すぐに学校に慣れ、新しい友達もできたようだった。

 騎士を養成する学校という事で、幼い妹たちにも模擬試合をやる機会もあり、クラスの誰に勝ったとか、誰に敗けたとか、先生が強くてすごいとか、そんな話を毎日している。

 そんな妹だが、つい先日、学校で身体測定というイベントが起きたらしい。


 まだ七歳という事で、恥じらう様子も無く身長体重を仔細に記録した用紙を見せてくる。

 私はそれを見て今さらながらに思った。

 託児の仕事してるんだし、家にも身長計と体重計ぐらいあった方がいいよねと。

 預かっている子供たちのお母さまがたは当然のことながら自分の子供への関心が強い。

 三か月に一回ぐらい学芸会や運動会などのイベントごとをするようにしたのだが、どのお母さんも特別な理由が無い限り見学に来る。

 子供の成長記録は、ちゃんとつけて渡した方がいいよね。



 そんな訳で、外縁都市に接続した――今回は産業都市でした――際に、身長計と体重計を買ってきました。

 安くは無かったけど、特別無茶って言うほど高くは無かった。税金対策のためにも領収書はちゃんともらって、託児の仕事の経費として計上します。


 そしてまずは家族の記録をとります。

 シエスタさんも面白がって参加したけど、体重計には断固として乗りませんでした。細いんだから自慢すればいいのに。


 さて、それでは計測結果だが、

 親父、身長は二メートル越えで計測できず。体重98㎏。

 シエスタさん、身長168cm、体重たぶん50~55㎏(私予測)。

 兄さん、身長164cm。体重53㎏。

 姉さん、身長148cm。体重41㎏。

 次兄さん、身長144cm。体重39㎏。

 妹、身長12()cm。体重22㎏。

 そして私、身長12()cm。体重20㎏。



 どうやら買ってきた身長計は不良品だったようだ。通販じゃないけど、クーリングオフ効くかな。

 うん。不良品、不良品。





セージ「……」ゲシゲシっ!!

アベル「壊れるよ、止めなよ」

セージ「いや、壊れてるんだよ、これ」

カイン「壊れてねえよ、つーか、壊れてたってメモリの位置が変わるわけじゃねえんだからお前が一番チビなのは変わんねえだろうが」

セージ「うわーん、姉さーん。次兄さんのくせに正論言ってるよー」

マギー「ちょっとカイン、セージをいじめないでよね!!」

カイン「はぁ!?」

ジオ「……やれやれ」

シエスタ「みんな可愛いですよね」

セルビア「……(どやぁ)」

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