世界観用語悦明 ~~等級~~
等級には三つの種類がある。
一つは騎士やギルドメンバーに与えられる社会的地位。
実績によって与えられるため、後述の戦闘能力や魔力量とは乖離している事も珍しくない。
大雑把に言えば弱くともパーティーに貢献をできるものは高いランクが与えられるし、強くとも職務に不真面目なものはランクが低くなる。
また多くの権限が与えられ社会的評価も高い上級には面倒で危険な義務も課せられる。
そのため上級にはならない、あるいはなってもすぐに降格の道を選ぶことも珍しくはない。
加えて袖の下などで形だけのランクを得る者もいるため、実力者であればあるほど軍やギルドが与えるランクをただの肩書としか見ない傾向がある。
一つは当人の戦闘能力。
これは魔力総量に戦闘技量を加味したもので、個人の体感で推し量られることが多い。
セージは神子としての特殊能力があるため、大抵の戦士から後述の魔力総量以上の実力を認められている。
最後の一つは魔力総量。
霊格とも呼ばれるそれを目安として数値化すると――
初級(一般人) 1~10
下級下位 10~20
下級中位 20~30
下級上位 30~40
中級下位 40~50
中級中位 50~60
中級上位 60~70
上級下位 70~80
上級中位 80~90
上級上位 90~100
――となる。
この霊格には個々人に才能限界があり、心身の成長に伴い才能限界の半分程度には自然と身に付き、そして肉体の衰えによって限界値は下がっていく。
故カナン・カルムは若かりし頃は94の才能限界を持ち、そこにエルアリアからの加護を得る事で102の才能限界を手に入れ、自身の霊格をその限界値まで鍛え上げていた。
しかし老化によって限界値は著しく下がり、エルアリアの加護をもってしても70程度を維持するのが精一杯だった。
その状態でジオに善戦したのはカナンの技量が卓越していたこともあるが、活用していた魔力がジオと同格のエルアリアの魔力であった事が大きな要因となっている。
そんな身に余る魔力を運用した代償として、わずかな時間でカナンの余命は限界を迎えてしまった。
ちなみに人類最高峰の才能限界を持つマギーは限界値が100なため、特に何もしなくても中級中位程度の魔力総量を獲得できるし、日常的にちょっとしたエクササイズをするだけでも中級上位相当の魔力量を身に付けることが出来る。
マギーは本能的に自分が強い力を持っている事を知っているため、家で幼い子供を叱る際には手を上げる事をしなかったし、それ以外でも幼いころから無意識に力をセーブして過ごしていた。
そうしてなるべく体を動かさないように成長した現在では、立派な運動音痴になっている。
尚、限界まで心身を鍛えることで才能限界まで魔力総量を獲得することが出来るが、ある程度の魔力を持つ相手を殺す方が成長効率は良い。
また格上を屠る事で才能限界を突破する事も出来る。
最強を自負する魔王の騎士ライム・スーザーは99の才能限界を持っているため、格上を倒す必要なくこつこつ格下狩りを繰り返すことで誰よりも(※ライム主観)優れた魔力量を手に入れる事に成功している。
魔力総量に関してはセージのような神の瞳があれば小数点以下まで正確に見抜けるが、一般的には大雑把にしかわからない。
魔力の扱いを身に付けていればランク一つ分(10)の差は肌で感じ取れ、感覚的に優れたものであればランクの半分(5)の違いを感じ取れるが、それ以上は分からない。
尚、感じ取れるのはあくまで現在の霊格であって、才能限界ではない。
ただし才能限界の差は保有する魔力の質の差にも繋がっているため、繊細な感覚を持っていればどの程度の将来性があるかを予測する事も可能ではあるが、これに関しては卓越した戦士の予想でも半々の的中率になる。
基本的にはランクが一つ(10)違えばはっきりとした実力差になり、もしもランクが二つ(20)違えばどれほど技量差があっても一対一では勝ち目は無くなる。
そのため道場ではまず保有魔力量を上げる事が重視され、魔力を操る技量や肉体操作の技量はその過程で勝手に鍛えられるもので十分だと指導が疎かになる事も多い。
ただしどんな戦士も魔力を鍛えていく内に才能限界の壁を感じるようになり、その壁と向き合う意味でも技量の訓練に真剣に取り組むようになる。
もっとも何事にも例外はあるため、その限界の壁を上位存在との契約の加護で越えてしまえば面倒な基礎トレーニングなんて必要ないと考える柑橘系戦士もいる。
ランクの例外としては無魂症が1未満であり、霊格としての特級は100以上となる。
もっとも竜はその特異能力と脅威度から特級と認定されているが、保有魔力としての霊格には個体差がある。
3章でセージとケイが遭遇した若い竜は霊格では上級中位程度(80オーバー)の力しかなく、守護都市を半壊させジオを引退に追い込んだ大竜は特級の中でも破格の120の霊格を持っていた。
なお魔物のランクは軍が定める脅威度であり、同ランクの戦士や騎士であれば問題なく倒せるという目安なので、魔力総量で言えば人間よりも5~10ほど低い事が多い。
また皇剣に関しても、竜と対等に戦える事と事実上無限の魔力を行使できることから上級上位とは別格の特級とされているが、精霊エルアリアとの契約によって得られる才能限界の解放は最大でもランク一つ分(10)なので、元々の才能限界が上級上位以下(90以下)であればその魔力総量は特級(100以上)にはならない。
ワルンやアリーシア等がこれに当たり、契約の加護を得たうえで上級上位相当の魔力総量である。
ラウドも才能限界としては似たようなものであったが、過去に格上の竜を討伐したことで才能限界が拡張し上級上位に至り、契約の加護もあって特級の魔力総量を得ている。
それらは相応の実力を身に付けていれば感じ取れることなので、彼らは皇剣という精霊の代弁者という権威の意味での特級と、戦士として逸脱した実力者という意味での特級を別けて考えている。