104話 寝起きの機嫌はあまりよくない
お待たせ。
プッツン系エンジェル、セイジェンドの出番だよ。
長い夢から覚めて、目を開ける。
視界に映るのは知らない白い天井で、寝ているのは知らないベッドだ。腕には注射針が刺さっており、チューブでつながって点滴パックがあった。
ぼんやりとした思考で、ここが病院で、今の私は入院をしているのだと理解した。
ただ私にとって大事なのは現状のことよりも今まで見ていた夢のことだ。
あれが夢であって夢でないということは理解できたが、具体的な事はまだわからない。
あの夢は、ある意味では人の寿命を見せている。
その人がどうやって生まれ、人生を送り、そして閉じるのか。
デス子の手によってセイジェンド・ブレイドホームが私という異分子に変わったことで、その運命は変わったのだろう。そうでなければ夢の中の次兄さんが死んでいることや、ブレイドホーム家に弟がいないことに説明がつかない。
あの夢の中で、ケイ・マージネルの一生を見た。ただしそれだけでは話はよくわからなかった。
同い年の子たちからハブられ、親父に憧れ、そしてぼっち街道を突き進みながらもメイドと仲良くなって、悪いことをしている次兄さんを殺して、一年後に殺される。
ケイは徹頭徹尾、死ぬまで何も知らずに死んだから、何もわからなかった。
だが私は同時にクライスさんの夢を見た。
クライスさんの人生は波乱万丈で、壮絶な親子ゲンカを繰り広げて実家を飛び出し、さらに二度の結婚と離婚を経験しており、一度目は何も言わずに奥さんに子供を連れて夜逃げされ、二度目は財産の全部を持ち逃げされていた。
まあそれはさて置き、夢の中ではクライスさんは私ではないセイジェンドの父親の指導員を勤め、父親の死後は母親の面倒を見てそのまま再婚し、義理の父親となっていた。
クライスさんはそこで良き父親となり、親父を支える立ち位置に収まっていた。
それだけならいい話だったが、夢の中の親父はケイを殺した。
ケイの視点では分からなかったが、騒ぎになって問い詰めたクライスさんに、親父は簡単に白状した。
別に隠すことでも恥なことでもなく、息子の仇を討つために殺したと。
そしてマージネル家が報復としてブレイドホーム家を襲い、クライスさんはそこで命を散らせた。
親父はマージネル家の襲撃の前にクライスさんからケイの出生にまつわる噂を聞いて動きが鈍っていて、それが理由で家族を守りきれなかった。そしてそんな親父の代わりに、妹や姉さんを守ってクライスさんは殺された。
火を放たれ焼け落ちるブレイドホーム家を背に、憎しみで心を染めた女と刺し違えて、死んだ。
「……格好よすぎだろ、クライスさん」
知らず、涙が出た。
クライスさんは大丈夫だと思う。今は政庁都市にいるし、デス子が見せたがったのはケイの死だろうから。
でも今回の一件が落ち着いたら一度政庁都市まで足を伸ばそうと思う。
今の私なら一日か、長くとも二日かければ往復できるだろうから、どこかの都市に接続して時間が取れるときにでも、必ず。
考えるべきことは他にもある。
竜とぶつかりあった時、私は死んでもおかしくないほどの重傷を負ったはずだ。
だが竜に飲まれ、吐き出されたあとにはその怪我の大部分が治っていた。
さらにはぶつかり合う前、竜からはそれを避けようとする意思をはっきりと感じた。
竜を見つけたとき、私はケイへの明確な殺意を感じた。放っておけば確実にケイが殺される姿を幻視して、私が助けようとしている相手を殺そうとするのは許せないと、熱に浮かされて走り出した。
だがあの竜はもしかしたらケイに襲われている私を助けに来たのではないのだろうか。
魔物の長である竜が私を助けようとする理由は分からないが、いつぞやの角を見た時といい、竜とデス子には浅からぬ関係がありそうだ。
もしそうなら私は助けに来た竜を事実上殺したことになる。
竜がこの国に大きな災厄をもたらす以上、他に選択肢があったわけではないが、それは気分の良いものではなかった。
そして顔の広いクライスさんの視点を通したことで、今回の件で大分見えてきたことがある。
一つは情報管制室の室長。クライスさんも直接の面識はないが、情報管制室はここ数年質が低下していてギルドメンバーと問題を起こすことも少なくなかった。
そしてその元締めであるマルク・べルール室長は金に汚く、毎日のように豪遊をしており、横領の発覚で失脚していた。
夢とは違って失脚していない理由はよくわからないが、私の給金が中抜きされていたという話もあるし、それらに関わっていて私に死んでもらって不都合なことを喋らないで欲しかったか、あるいは横領の発覚につながる今回の件で逆恨みされたか、といったところだろう。
まあこの人物は放っておいてもいい。不快な人物だがこんな騒ぎを起こした以上、警邏騎士も仕事をしてくれるだろう。
問題はその警邏騎士の元締めであるマージネル家だ。
彼らは親父に対して明確な恨みを抱いていた。夢の中ではケイの死をきっかけに、今回はおそらく私が注目を集めていることをきっかけに、それが吹き出している。
だが彼ら、正確にはマージネル家の現当主は親父とある程度の親交があったらしい。
今からは考えられないが、親父の育ての親であるアシュレイ・ブレイドホームがエース・マージネルと悪友であったため、親父がアシュレイと死別するまでは悪くない関係だったらしい。
だがアシュレイの死後は親父が暴れまわることも多くなり、治安を守るマージネル家とは必然的に対立するようになった。
エースはそれを改善させようと末の娘と親父の間に縁談を持ちかけて、結局はうまくいかなかった。当時はその末の娘が若すぎたというのも理由だったし親父が結婚という文化を理解できなかったのも理由だろう。
とにかくその縁談は流れ、時が流れてその娘さんは別の相手と結婚し、しばらくして子を産んだ。
その子供がケイだ。
そのケイの父親がジオであることと、ケイの母親と戸籍上の父親はケイの出産前後に他界していること。
マージネル家は、特にその夫婦を大事に思っていた次期当主のアール・マージネルたちはその事で親父を恨んでいるらしい。そしてそのアールは夢の中で先陣を切って親父に襲いかかり、殺されている。
二人の人間が死んでいる以上、マージネル家としては親父を恨むのは仕方がないのかもしれない。
しかし親父は馬鹿だがクズではない。色々と女性遍歴でも武勇伝が多いが、望んでもいない女性に無理やり関係を持つような男ではない。
クライスさんを通して知り得た限り、少なくともこちら側は一方的な加害者ではないし、万が一そうだとしてもこちらの家族を傷つけられるのを許すつもりはない。
親父ほど過激な手段を取るつもりはないが、殺されかけた今回の件は上手く使うべきだろう。
******
私は思索をやめてベッドから起き上がった。
まだ考えるべきことはあるかもしれないが、今は不確かな現状を把握したい。
私は腕に刺さった点滴の針を抜き、ベッドから出た。
すぐそばの机に見舞いの花が活けられた花瓶とともに、私の服が丁寧に畳んで置いてあった。
その服はケイたちと戦った時に着ていたものではない。さんざん地面を転がりまわったり竜の唾液にまみれたりしたから、替えの服を用意してくれたのだろう。
私は早速、着せられていた病院の貫頭衣を脱いでその服に着替えた。
当然のことながら武装はなく、また防犯のことを考えればこれも当然のことだが、ギルドカードや財布もなかった。
ギルドカードは仕事の前に産業都市のギルドに預けておいたから、そこに行けば返してもらえるだろう。
私は病室の扉をノックした。ノックは本来入ってくる側がするものだが、今回はこれで間違いがない。
病室の外で立っている男性はそのノックに気付き、こちらに注意を向けてきたのだから。
男性に敵意の感情がないことを確認して、私は扉をゆっくりと開いた。
「どうも」
「お、おう。目が覚めたのか?」
「ええ。確認しますが、あなたはギルドの人ですか?」
私がそう尋ねると、面食らったような顔でその男性は頷いた。
「そうですか。重ねて聞きますが、あなたの目的は私の護衛であり、私をこの病室から逃がさないことではない。それでよろしいですか?」
「あ、ああ」
男性の肯定に、私は満足して頷いた。
魔力感知による周囲の把握で、私はここが産業都市の病院であることを知っていた。そして同時にこの上級のギルドメンバーらしき男性の同類と思われる戦士たちが、三階にある私の病室の窓の直下、非常口の出入り口、屋上、そして病院の待合室などに配置されているのも知っていた。
彼らの緊張感と警戒心は病室の外に向かっていたので私を拘束する意思がないと推察できたが、こうして確認が取れれば安心もできる。
「そうですか。ありがとうございます。以降は自分の身は自分で守りますから、どうぞご自由にされてください」
「――は? え、いや。あー、まあいいのか?」
困惑している男性は捨て置いて、私は病院の一階に降りて、待合のフロアにたどり着いた。
暇つぶし用にと置かれているマガジンラックに新聞を見つけたので、手に取る。新聞は臨時に発行された号外で、内容は竜の討伐に関するものだった。
斜め読みしたところ竜は私とケイが協力して足止めをし、親父とラウドの二人が狩ったと脚色を交えて書かれていた。
竜の襲撃で被害がまるで出なかったことなどから多くの美辞麗句が私たち四人に向けて書かれていたが、内容的にはそれだけだった。
「若いのに新聞を読むとは感心じゃな」
「どうも。……お邪魔でしたか?」
マガジンラックの前で立ち読みをしていた私に、男性のご老人が声をかけてきた。
「いやいや、気にするでない。それどう思う? セイジェンドという若い英雄が生まれたそうだが、やっぱり君ぐらいの子は憧れるものかのぅ?」
「そうですね。彼に負けないよう僕も頑張ろうと思います。
ああ、そうだ。今日って何日でしたっけ?」
私がそう尋ねるとご老人はやや不快な感情を目の奥に隠して、答えてくれた。どうやら私が寝ていたのは四日ほどらしい。どうりでお腹が空いているはずだ。
「ありがとうございます、守護都市の皇剣様」
私がそう言うとご老人は呆気にとられたので、その隙に私は病院から出て行った。
八十歳前後に見えるご老人の命を支えている他所からの魔力供給には見覚えがあり、さらに年齢からこのご老人がどの皇剣であるかは簡単に推察できたのだ。
******
病院から出た私はまずハンターズギルドを目指そうとした。
魔力感知で守護都市が接続しているのは把握していたからまずは家に帰っても良かったのだが、まずはギルドカードを回収することにした。空腹で食事をしたいが、先立つものがないのでお金を下ろしたいのだ。
だが病院から出た途端に声をかけられて、阻まれてしまった。
「真面目な性格だって聞いていたんですけど、退院手続きも断りの一言もなく病院から抜け出すなんて、お転婆なところもあるんですね」
声をかけてきたのは若い女性だ。若いといっても今の私よりは当然年上で、二十代前半ぐらいだ。護衛と思われる騎士の女性を連れていた。
「クラーラ・シャルマー様ですか?」
「ええ、驚かないんですね」
「驚きましたよ。ですが先ほど守護都市の皇剣様にお会いしましたから。たしかシャルマー様と親しい間柄でしたよね」
私がそう言うと、クラーラはその顔に笑顔を貼り付けたまま押し黙った。
「食えぬ小僧じゃわい。なるほどなるほど。スノウの小僧が気に入るわけよのぅ」
後ろから声をかけられる。はっきり警戒していたわけではないが、それでも私に気づかれずご老人は私の背後を取っていた。
敵意だけでなく私に対してなんの意識を向けず、さらにはその気配も通行人に同化させていた。うまいものだ。
「さきほどはどうも。それで何かご用ですか?」
「ええ、今回セイジェンドさんが巻き込まれた一件に私たちシャルマー家の過失がありましたので、その謝罪に」
「ああ、マルク・べルール氏もあなた方の派閥でしたね」
私が淡々と感情を交えずにそう言うと、クラーラは再び笑顔で硬直した。
その笑顔の下の感情の変化から動揺と強い意志が見て取れる。その感情で何を考え、その意志で何を求めているかはわからないが、それが見て取れる分だけこの人はスノウさんよりも下のようだ。
「ええ。よくご存知ですね。それでは今、何が起きているかもご存知ですか」
「いえ、まったく。謝罪が目的ということなら後日でよろしいですか? 今は預けたままになっているギルドカードの回収と、あとは数日間何も食べていないので食事をとりたいのです」
「えっ? ええ――いえ、そういうことなら食事を奢りましょう。ギルドカードも部下にとってこさせますから。その方が面倒も少ないでしょう」
クラーラが慌てたようにそう言った。
確かに名家の人間ならそこらの人より詳しい事情を知っていそうだから、話を聞く価値がある。号外の新聞を見た限りでは私がマージネル家に殺されそうになったことは一般的には知られていないようだし、そもそも殺されそうになった建前もよくわからない。
おそらくマルク・べルール氏が絡んでくるのだろうが、今の時点では何もわからなかった。
「……そうですね。どうやら急を要する内容のようですから、お話を聞きましょうか。先に言っておきますが、犯罪の隠蔽などには力になれませんよ」
「ええ。そんなことをお願いするつもりはありませんよ」
クラーラはその笑顔に冷たいものを交えてそう言った。
さすがに癇に障ったようだったが、そんなクラーラを見てご老人は未熟だのぅ、と呆れていた。
それから手近な定食屋に入った。
おそらく名家の当主であるクラーラが利用する店では無いことから、護衛の騎士は不機嫌そうにしていたし、ご老人は興味深そうに店内を見渡し、クラーラはごちゃごちゃした手狭な店内の様子に狼狽えていた。
「そ、それじゃあセイジェンドさん。なんでも好きなものを食べていいですよ」
「そうですね、すいませんが本当にお腹が空いているので遠慮はしません。店員さん注文お願いします」
私は店員を呼んで注文をする。クラーラたちはメニューを決めていなかったが、待つ気はなかった。定食メニューを三品ほど頼むと、護衛の騎士が口を開いた。
「本当に遠慮がないが、それはちゃんと食べられるんだろうな」
残したら許さないと目が語っているが、空腹状態からして三人前ぐらいは問題なく入る。
「別に嫌がらせで注文しているわけではありませんよ。本当にお腹が空いているんです。血と肉が足りてないって感じですね」
実際、今の私は体重が激減しているだろう。身体活性で新陳代謝を活発化させることができるが、体を回復させるための必要エネルギーが圧倒的に足りていないのが自覚できる。
おそらく私に魔力が無ければ病院のベッドから出る事も出来なかっただろう。
「子供がよく食べるのはいいことじゃよ。そう目くじらを立てるでない。わしは茶でいい」
「そうですよ、それに残したっていいでしょう。ああ、店員さん。私はコーヒーとこのケーキを」
狭い店内なので護衛の騎士は同席していたが、何も食べるつもりが無いようで注文はしなかった。ちなみに店外にも護衛と思わしき変装した騎士が二人いた。それを知覚したついでというわけではないが、店の前を走る知り合いの姿も捉えたので魔力感知にてロックしておく。
彼女の仕事は監査官で、人間的にも信用できる味方だ。クラーラから話を聞き終わったら声を掛けようと思った。
好きに食べていいという言葉を額面通りに受け取って、私は食事をとりながらクラーラの話を聞いた。
色々と脚色過多でわかりづらかったが、とにかく全てはマルク・べルール氏が独断で動いたことでシャルマー家はなんの関与もしていないとのことだった。
ならなんで謝りに来るんだと思わないでもないが、とりあえず名家と派閥に属する者の関係はそういうものらしい。
よくわからないが、とりあえずマージネル家が私を殺そうとした建前は私が共生派のテロリスト被疑者であり、現在はその疑いは完全に晴れているということだった。
一年前の事件はまだ鮮明に記憶に焼き付いている。
まともに光の差さない暗い洞窟の中。
暴行を受け続け、抵抗する気力も生きようとする気力も失った裸の女性。
その女性と同じ仕打ちを受け、最後には骨までしゃぶられた多くの女性たち。
そしてそんな惨状を作り上げ、見下ろして笑っている男。
よりにもよって私をテロリスト扱いするとは、つくづくマージネル家は感情を逆なでしてくれる。
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「それで、ご理解いただけましたか?」
色々と回りくどいクラーラの話が終わったのは、私が三人前の食事を終えるのとほぼ同時だった。
「ええ。今回の件はマルク・べルール氏の独断であり、シャルマー家は関係ない。こちらとしても異議はありませんから余計な被害届けを出すことはないですよ。ちょっと失礼」
「どこへ?」
「トイレです」
身体活性で新陳代謝を上げ食べた物を無理やり栄養に変えようとしたせいで、下の方も近くなってしまった。
クラーラは表情を変えなかったが、内心は結構な不快感を覚えていたし、護衛の騎士ははっきりと表情に出して主人を侮辱していると怒っていた。
薄い扉のトイレに入ると、護衛の騎士が我慢できないといった様子で声を荒らげた。
どうも騎士も育ちが良いようで、安いお店の薄い扉は防音効果も薄いという事を知らないようだった。
「なんですかあの子は。名家の当主であられるクラーラ様に対して失礼極まりない」
「落ち着きなさい、リリ。あのジオの子が一筋縄でいかないのは覚悟していたことよ。ここまで良いように振り回されるとは思わなかったけど」
「わしは好感を持ったがの。あの小僧は病み上がりの体を治すのを優先させとるだけじゃろう。よく鍛えられた兵士はむしろあんなもんじゃよ。もっとも、交渉事も不得手では無さそうじゃったがのぅ」
「そうね。認めたくないけど、すごくやりにくかったわ。まるで洗練されてない粗野なスノウ様みたい。まるで感情が読めないし、そのくせこっちの考えをかき乱してくるんだもの」
「あるいは政治嫌いを克服したラウドといったところかのぅ。どちらにしても一筋縄で手綱を括りつけられる相手ではないのぅ」
「それではどうしましょう。懐柔できないならマージネル家を装い、いっそ――」
「馬鹿なこと考えるんじゃないの。あのケイとアールの精鋭から狙われて、さらには竜にまで襲われて生き延びるような子なのよ。生き延びる技術は魔人と同等と見るべきよ。
それにあの子、嫌いじゃないのよね。魔人と違って知性と理性があるし、それにあの子のおかげで街に少しづつ良い影響がでているわ」
「クラーラ様、それは?」
「まだ内緒。確信があるわけじゃあないしね。今回の件は味方をして、それが終わったらしばらくは中立の立場で様子を見ましょう」
話がひと段落したあたりで、私の方も落ち着いて出すものを出しきった。血の混じったそれらを流してトイレから出ると、魔力感知が不穏な情報を捉える。
「――セイジェンドさん?」
「すいませんが、急用ができました」
私はそう言って急いで店を出た。店の外にいた護衛の騎士が私を引き止めようとするクラーラの姿を見て、咄嗟に私の邪魔をする。
私はそれをすり抜けて走った。
幸い犯行の現場はここからそう遠くない。
私は走り、程なくその現場に割って入った。
「そこまでですよ」
そして私は襲われそうになっているシエスタさんと、襲いかかろうとする顔見知りの騎士に、そう言った。