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こんな夢を観た

こんな夢を観た「野外授業」

作者: 夢野彼方
掲載日:2014/06/11

 わたしは小学生だった。

 始業のチャイムが鳴ったので、席に着いて先生が来るのを待つ。

 けれど、先生の代わりに、図体のでかいトロールが入ってきた。

「わりぃけんど、センセは来ねぇど。おれっち、食っちまったからなっ」

 トロールは馬鹿でかい声でがなった。教室中がびりびりと揺れる。


 あちこちの席でざわざわと騒ぎ始める。

「ギッチョン、食われちまったってよ」

「あのギッチョンがねえ……」

 ギッチョンとは担任の片桐義之先生のことだ。何かというと、すぐ癇癪を起こし、男にしては甲高い声でわめき散らす。その様子が、まるでスイーッチョンと鳴く虫にそっくりなのと、名前が「カタギリ」なので、「ギ」を取って、「ギッチョン」とあだ名されていた。


「ざまーねえな、ギッチョンの奴っ」男子の1人が憎まれ口を叩く。

「よしなさいよ、食べられちゃった人のことを悪く言うのは」委員長の女子がたしなめる。

「あーっ、委員長はギッチョンにホレてたんだなっ。ラーブラブぅっ、ラーブラブぅっ! 委員長とギッチョンはラーブラブぅっ!」

 委員長は顔をまっ赤にして、

「ばっかじゃないの? 誰があんなインケン・メガネなんかっ!」


 トロールがダンッと教壇を叩いた。教壇はぺしゃんこに潰れてしまう。

「しずかに、しねがぁっ!」窓ガラスが1枚残らず、ぱーんっと割れた。「おめらのタンニンはもう、いねんだどっ。だども、ベンキョはでえじだな。そんぐれえ、おれっちにもわかるっ。だからよ、今日はおれっちがセンセをするどおっ!」

 生徒たちから一斉に歓声が上がった。少なくとも、ギッチョンの授業より100倍は面白そうだ。


「おれっちはシャカイカもサンスウもできねえ。だから、外でベンキョすることにすんどっ」

 そう言うなり廊下へ出て、どっこいしょっと教室の壁を押した。

 めりめりっと音を立てて、教室は校舎の外に押し出される。

 クラス中がまた、わあーっと楽しそうな声で包まれた。


 半分ばかり突き出た教室を、トロールはぽんと蹴飛ばす。タンスの引き出しのように、教室は校舎から飛び出していって、校庭の真ん中にすとん、と落ちた。

「今の、ちょっとだけスリルあったね」

「うんうん。股の付け根が、きゅんっとしちゃった」


 トロールも、今さっき教室があった隙間から、校庭にどっすんと飛び下りる。蹴り出された教室ごと、全員が跳ね上がった。

「すげーっ。家の前をダンプが走っても、こんなには揺れねえぞ」

「体重、100キロじゃきかないよね。どれくらいあるんだろう」

「せんせー、体重、何キロあるんですかー?」


 トロールは空を仰いでうーんと考え込んでいたが、「そだな、ガキんときに1度はかったっぎりだけんど」と前置きをした上で、指を3本並べて見せた。

「300キローっ?!」わたしたちはそろって声を上げた。けれど、トロールは首を横にふって、

「ちがう、ちがうっ。そこさゼロをもう1つ、つけてくれな。だども、あれからもう400年ばかりたってっから、今はもっとふえてっどおっ」


 女子も男子も、驚嘆と尊敬の眼差しで「トロール先生」を見上げる。小学生にとって、大きいもの、重いもの、強いものは、いつの時代でも憧れの対象なのだ。この新しい先生には、その全てがそろっていた。

「せんせーっ」

「トロールせんせーっ」

 わたしたちはどっと駆けより、先生を取り巻いてしまう。トロールは少し照れながら言う。


「さあっ、走れ走れーっ。遊べ遊べーっ! おれっちはおめらの味方だかんな。悪い大人は、センセだろがダイジンだろが、おれっちが食っちまうからよおっ!」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 笑いが止まりません^^ 夢のある話ですね(笑) というか、夢の話なのか。 夢のある夢、ですね^^ [一言] こんにちは、またお邪魔しちゃいました。 トロールというと、北欧のあれですかね。…
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