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天使と悪魔の伝説  作者: 弥生遼
第四十章 天使たちの反乱
252/263

5

 天使達の前で大演説をしたガルサノは、ひとまずイピュラスに戻った。

 「天使達の反応はどうだ?」

 天界院の議場で執政官の首座のみが座ることが許される椅子に腰掛けたガルサノは、ソフィスアースに問い掛けた。

 「多くの天使達がイピュラスに詰め掛けています。詳しく事情を説明しろと言う者や、ガルサノ様に賛同する者も少なくありません」

 あの演説程度では天使達の心を掴むことができなかったということらしい。急な事態の変転だったため有力な天使達への根回しもできなかった。

 『私としたことが……』

 性急に事を進めすぎたのではないか。その疑問がガルサノの脳裏を過ぎった。天帝の実情を暴露したまではよしとしても、人間界への言及はやり過ぎではなかったか。

 「もっとじっくりと攻めるべきではなかったか……」

 「何を仰います、ガルサノ様。進むべき時は一気に進むべきです」

 演説の前、人間界についても話すべきだと言ったのはソフィスアースであった。ガルサノに従順な腹心もこの点については譲らなかった。

 「我々こそ世界を支配するのに相応しいのです。それは他でもないガルサノ様が仰ったことではないですか?」

 「それはそうだ。だが、何事にも手順というものがある」

 「しかし、時流というものがあります。勢いには乗るべきです」

 ソフィスアースは執拗であった。この点について、いつものソフィスアースではないと思えるのだが、そこまでのことを考える気力など残されていなかった。

 「今にも人間どもは新たな戦争を始めます。その前にガルサノ様が新たな世界を示すのです」

 「うむ……」

 そうかもしれぬ、とガルサノが立ち上がった時であった。ぐらんとイピュラス全体が揺れるような振動に襲われた。

 「な、何だ……」

 「天帝に何事かあったのでしょうか……」

 「申し上げます!」

 衛兵が慌てて駆け込んできた。

 「どうかしたか?」

 「何者かがこのイピュラスに侵入した模様です」

 「侵入?」

 今、この天界でガルサノ達に逆らえる者がいるだろうか。疑問に思った瞬間、ふっと脳裏にあの少年のことが過ぎった。

 「ガルサノ様。きっとあの八枚の翼を持った小僧です」

 ソフィスアースも同じことを思いついたようだった。

 「天帝の間へ行く!」

 ガルサノは苛立ちながら声を上げた。どうしてこうも上手くいかないのか、と鬱憤を吐き出したかった。


 天帝の間へ急ぐと、確かにあの少年がいた。他にもエシリアともう一人、以前シェランドンの事件の時に収監した女がいた。

 「貴様ら!」

 ガルサノは先制攻撃を仕掛けようとしたが、寸前で思いとどまった。下手に攻撃すれば天帝が傷つくかもしれない。天帝の果実から魔力を吸い上げている今の天帝に危害を加えるのはとても危険であった。

 「ガルサノ。ついに馬脚を現したということですね。今すぐに馬鹿な真似はやめなさい」

 エシリアであった。

 「貴様らこそ馬鹿な真似をするな。今、天帝は私の術で制御されている。その制御を離れると、ラピュラス自体がどうなるか分からんぞ」

 「でしたら、その術を解きなさい!」

 「無礼であるぞ!今やガルサノ様はこの世界の支配者!貴様ら如きが意見を言えるような立場ではない!」

 ソフィスアースは凄い剣幕であった。ガルサノが思わずたじろぐほどであった。

 「無礼?あなた達は力で権力を得ただけではありませんか。そのような野蛮な輩に敬意を払う気などありません」

 「言わせておけば……」

 ソフィスアースが光の剣を握った。

 「よせ。ここでの戦闘は危険だ」

 「ガルサノ様。あなたはこの世界を統べる覇者です。それに相応しき言動を行いください」

 破壊の先にこそ覇者が創造する世界があるのです。ソフィスアースはそう言って光の剣を地面に突き刺した。

 どん、と突き上げるような衝撃が走ったかと思うと、空間全体が大きく揺れ始めた。

 「ソフィスアース何をした!」

 天帝の姿が緑色の光を発しながら顕になった。天帝の果実に蓄えられていた魔力が管を伝わり天帝へと流れ込んでいっていた。ラピュラスの動力となっている天帝が暴走を始めていた。

 そもそも現在、天帝の力はガルサノの力によって制御されているはずである。どうしてソフィスアースの力で制御をはずすことができるのだろうか。ガルサノは混乱してきた。

 「人間世界へ。全てを支配するために」

 ソフィスアースが薄っすらと笑っていた。

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