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天使と悪魔の伝説  作者: 弥生遼
第四十章 天使たちの反乱
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4

 「動きがとまった……?」

 針山のように突き出してきた天帝の骨が動きを止めた。上空に退避していたエシリア達も動きを止めて下方の様子を伺った。

 「そのようですね……」

 上空にはエシリア達と同じように上空へと逃げ出した天使達がいる。彼らに配慮してシードも二枚の翼で飛んでいた。シードは翼の数を制御ができるほど実力をつけていた。

 「ふん。骸骨爺さん、ついに死んだんじゃないのか?」

 物騒なことを言うエルマは翼を現していない。もとより彼女は翼が無くても飛行できた。

 「ひとまず下りましょうか」

 エシリアが言うまでもなく、他の天使達も恐る恐る降下していった。地に足を付けてみると、ラピュラスの惨状はかなりひどいものであった。

 「天帝が天使の街を破壊するなんて、冗談にしても笑えねえな」

 エルマの言うとおり、ラピュラスの街並みは完全に破壊されていた。道も建物も突き出た骨によって原型をまるで留めていなかった。

 「確かに、笑えませんね……」

 街が破壊されただけではない。わずかな時間であったが、相当数の天使も亡くなっているはずである。

 「エシリアさん。天帝の間に行きましょう。原因を突き止めないと……」

 「シードの言うとおりだな。こいつはただごとじゃねえぞ」

 「ええ……」

 曖昧に同意しながらも、エシリアは迷っていた。天帝がどういう状況かまるで分からないのに、天帝の力を受け継ぐ二人を天帝に近づけていいものかどうか、即決できなかった。

 「おい!あれ!」

 近くにいた他の天使が叫んだ。イピュラスの方から天空へと飛び上がる天使の姿があった。

 「我が愛すべき天使達よ、静まれ!」

 それはガルサノであった。

 「落ち着いて私の話を聞いて欲しい。今、天界は未曾有の危機を迎えている」

 見れば分かるでしょう、とエシリアは言ってやりたかったが、ひとまずガルサノが何を語るか聞き届けることにした。

 「現在、ラピュラスを破壊するかのように突き出している物体。気がついている諸氏もいるかと思うが、これは天帝様の骨である」

 どよめきが起こった。当然であろう。天帝がすでに骨だらけの骸であることなど夢にも思わないだろう。

 「天帝様の力は尽きようとしている。それを知った一部執政官が天帝様を動かし、その骨から我ら天使の魔力を奪おうと言う愚行に出たのだ」

 もっと包み隠した言い方をするかと思っていたが、ガルサノは意外と率直に事実を打ち明けた。

 「天帝様は確かに大事な存在だ。しかし、そのために我ら天使の命が犠牲になっていいものか?いや、いいはずがない!」

 このことについてすぐに言い返せる天使はいなかった。彼らはずっと天帝こそが至高の存在だと教えられ、そのためだけに生きてきた。しかし、だからと言って天帝の為に命を差し出せと言われて応諾する天使はどれだけいるだろうか。エシリア自身、だぶん拒否したであろう。

 「だから私は、このくだらぬ愚行を起こしたスロルゼンを排し、天帝様の活動を止めた。そして、私が新たに執政官の首座に着くことにした」

 堂々と権力奪取を言い放つガルサノ。天帝のことで衝撃を受けた天使達は、ガルサノの権力奪取にまで思考が及んでいないだろう。声を上げる天使はいなかった。

 「私が天使の新しい世界を築く。不本意な者は今すぐ名乗り出るがいい」

 名乗り出てやろうじゃないか、とエルマが言い出したので、エシリアは手で制した。

 「何でだよ?あいつぶっ飛ばすいい機会じゃねえか。それともあいつを野放しにしておくつもりか?」

 「そんなつもりはないですが、今ガルサノを刺激しない方がいいです。天帝がガルサノの意のままになっているとすれば、天使だけではなく人間も人質を取られていることと同じですよ」

 ちっ、と舌打ちをするエルマ。だが、このままガルサノを放置しておくこともできないだろう。

 「シード君、エルマさん。天帝の間に行きましょう。天帝様をガルサノの支配下から解放させましょう。それをできるのはあなた達しかいません」

 「分かりました」

 「つまんねえな。しばらく暴れていないから、暴れたいんだが……」

 シードは素直に、エルマは不承不承従ってくれた。エシリア達が行動を起こそうとした時、ガルサノがさらに言葉を続けた。

 「まずは人間界で起こっている争乱を止める。争いを続ける人間どもを粛清し、天使こそが世界を支配するのに相応しい存在であることを天下に示すのだ」

 エシリアは我が耳を疑った。それはシードもエルマも同じようであり、シードは怒りからか顔を真っ赤にしていて、エルマは呆れたようにぽかんと口を開けていた。

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