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天使と悪魔の伝説  作者: 弥生遼
第三十三章 裁かれしもの
209/263

8

 「これで終わったと言うことですかな」

 シェランドンが落下していくのを見届けたガルサノはそう呟いた。あれほどの傷を負っていればまず生きてはいまい。シェランドンに裁きを受けさせることはできなかったが、反乱が収束したと見ていいだろう。

 「見事であったな、ガルサノ」

 「畏れ入ります、スロルゼン様。これで反乱は終わりました」

 「反乱を収めたことを言っているのではない。これでお前は執政官の次席となったのだからな。その手腕のことを言っている」

 ガルサノはぞくりとした。やはりこの老天使はすべてを見通しているのだろう。

 「何のことでありましょう」

 ガルサノはとぼけてみた。

 「シェランドン、ブルゲアノス、メキュートスは死んだ。お前の上位にいた執政官は悉くいなくなってしまったではないか」

 「左様でありましょうが……」

 「ゼルハンとノーゼンはどうした?」

 「ゼルハン様とノーゼン様は亡くなられていました。囚われたことを悔い、自裁されたようで……」

 「ならば執政官で生き残ったのは私とお前だけと言うことだな。見事なものだ。私も執政官で上位に上るために悪辣なことをしてきたが、これほどまでのことをしたことはなかった」

 「何をおっしゃります……」

 「そこのソフィスアースという女。お前の腹心であると同時にシェランドンのところにも出入りしていたようだな。お前がソフィスアースを使ってシェランドンを唆し、今回の反乱を起こさせた。そしてそれを鎮圧することで政敵を排除する。見事な筋書きではないか?」

 やはりスロルゼンは只者ではなかった。ガルサノは背筋に寒いものを感じ、ソフィスアースも表情を引きつらせていた。

 「次に排除されるのは私かな?」

 「ご冗談を」

 本当に冗談ではなかった。スロルゼンを敵にする度胸など、今のガルサノにはまだなかった。

 「まぁ、冗談としておこう。それよりも問題はあの翼を八枚持った少年だな。あれは何者だ?」

 「分かりませぬが、天帝様に関わりがあることには間違いないでしょう」

 そうであろうな、とスロルゼンは言った。

 「しかし、よろしいではありませんか。もはや天帝様がおらずとも、我ら天使の存在は不動のもの。そこまで拘泥される必要はありますまい」

 それはガルサノの本心であった。もはや天使にも人間にも天帝の存在は必要ない。歴代の執政官達が天帝を生かし続けるのに拘り続けたのか、ガルサノにはまるで理解できなかった。

 「若いなガルサノ。そう思えるのは若き故だ。天帝様は我らが象徴。象徴なくしては天使は存在する価値はないのだ」

 その思想は固陋である、とガルサノは思った。

 「こうなると計画を進めねばなるまい。ガルサノ、お前の子飼いが爆破した例の試作機。精度は上々であったようだな」

 「しかし、あれは……」

 「躊躇ってはおられんのだ。気がついているか?すでにラピュラスの高度が落ちてきている。天帝様の魔力が尽きかけている証拠だ」

 「なればこそ今一度、このガルサノにお任せください。かの少年のことも含め、対処いたします」

 スロルゼンは、じっとガルサノを一瞥した。その鋭さに気圧されそうになったのを堪えながら、ガルサノは次なる一手を模索していた。

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