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天使と悪魔の伝説  作者: 弥生遼
第三十三章 裁かれしもの
206/263

5

 エシリアは実に不愉快になっていた。目の前にあのシェランドンを初めとした新しい執政官達がいるだけではなく、縄目にこそかかっていないが、どう考えても罪人に扱いであった。

 「そう怖い顔をするでない。別にお前に罪ありと言っているのではない。いろいろ聞きたいことがあるだけだ」

 シェランドンは言う。しかし、高位の天使が居並んでいるのは明らかに威圧であった。

 「私に罪なしと仰るのなら、今すぐここから解放していただきませんか?地上の教化という本来の仕事がまだ残っていますので」

 どんなに威圧されても臆するエシリアではなかった。数々の修羅場を経験してきた身にとっては、今の執政官など恐れるほどの存在ではなかった。

 「ほほ、殊勝な勤勉さよ。なれど地上で大役を果たしたばかり。いま少し天界でゆるりとしてはどうかな?」

 「それならばなおのこと、早々に解放していただけませんか。執政官の皆様の前ではゆるりとくつろげません」

 ほほ、と笑いながらもシェランドンの顔は強張っていた。エシリアの屁理屈ごときに不快感を顕にするようでは、シェランドンの器も知れている。

 「では、ゆるりと寛いでもらうためにも素直に答えてもらう。まずは地上でのことだ。皇帝と教会の諍い。事実はどうであったのだ?」

 そうきたか、とエシリアは思った。やはりシェランドンは、エシリアがドライゼンのことについて何か知り得ているのではないかと邪推しているのだろう。

 「事実は全て天界院に提出した報告書どおりです。それ以上のことは私は何も知りません」

 エシリアはあえて挑発的に言ってみた。やはり安易な挑発にもシェランドンは露骨に顔をしかめた。

 「では話を変えよう。どうしてお前は天帝様のご在所にいたのだ?そして一緒にいたのは何者だ」

 「それは……」

 それはドライゼンのことよりも安易に語るわけにはいかなかった。

 「何故黙る。ふふ知っておるぞ。一緒にいた男天使は堕天使であろう。さぁ言え!どうして堕天使となった天使と天帝の間にいた!」

 言え、と肥えた体躯を揺らしてシェランドンが迫ってきた。

 「言わぬのならお前もあの堕天使も処刑するまでだ。天使にとっての最大の罪悪は堕天使となることであり、それを庇ったとなればお前も同罪だぞ」

 「罪悪?罪悪ですって?あなたがそれを言うのですか!」

 シードのことに言及され、さらにはまったく悪びれていないシェランドンを見るに至り、エシリアにためらいはなくなった。エシリアは懐から記憶球を取り出し、それを再生した。

 再生されたのはドライゼンの肉声であった。皇帝と教会の騒乱がシェランドンに意思によるものだと明確に語られていた。シェランドンの顔は見る見るうちに青くなり、後ずさっていった。

 「他の執政官の方々も聞かれたでしょう。これがそこの男の本性です。執政官でありながら自ら地上に騒乱の種をまいたのです」

 裁かれるべきはかの者です、とエシリアはシェランドンを指差した。

 「何を戯言を!執政官に向ってなんたる暴言!殺せ!」

 シェランドンは喚き散らした。しかし、他の執政官達も衛兵達も動く気配がなかった。寧ろ疑わしい視線をシェランドンに向けていた。

 「ど、どうした!この女を殺さんか!」

 シェランドンは喚くだけで、自らエシリアに挑みかかることはなかった。

 「そこまでだな、シェランドン。貴様の器量では精々そこまでだ」

 突然、扉が開き、どたどたと武装した天使が雪崩れ込んできた。彼らは槍を構えたまま執政官達を取り囲んだ。そして最後に入ってきたのはスロルゼンとガルサノであった。

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