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天使と悪魔の伝説  作者: 弥生遼
第三十二章 天帝
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2

 イピュラスに忍び込む。そう簡単に言ってみたものの、実際に行うのは非常に難しかった。

 普段でも上位の天使達が集まる場所なので警備が厳重であるのに、現在は武装蜂起した天使達が余人を寄せ付けまいと厳重な警備をしている。蟻んこ一匹通れやしない、と言うのが偵察してきたマ・ジュドーの見解であった。

 「忍び込むなら夜って感じですね」

 シードが窓際からイピュラスを遠望していた。上空も警戒しているのか飛行している天使も見えた。

 「忍び込むなんてまどろっこしい!ドカーンとど派手に突っ込もうぜ!」

 先陣は任せろ、と鼻息荒く意気込むエルマ。

 「それは却下です。夜の忍び込むにしても、警戒が緩む様子はなさそうですね……」

 外の様子を見る限り、ラピュラスに大きな混乱は起きてない。と言うことは、シェランドンの武装蜂起は一応成功したと見ていいだろう。シェランドンの政権が落ち着けば、警戒も緩むだろうが……。

 『そこまで待つわけにはいかないですよね……』

 悩み始めたエシリアの視界の中に能天気な表情をしたマ・ジュドーが入ってきた。だらしのない笑みを浮かべながらも、ちらちらとエシリアのことを見てくる。

 「何か言いたいのですか?球体さん」

 「ふふん。俺だって伊達に偵察してきたわけじゃねえぜ。ちゃんと警戒の薄い場所を探ってきたんだよ」

 「それを早く言いなさい。もう少しで球体さんを囮にして正面突破をする作戦を実行するところでした」

 エシリアはマ・ジュドーを力強く締め上げた。勘弁してくれ、と呻くマ・ジュドーをエルマは笑って見ていた。

 「珍しくマさんが役に立ちましたね」

 シードは意外にひどい言葉でマ・ジュドーを褒めた。

 「どちらにしても忍び込むのは夜の方がよさそうですね。もう少し待ちましょう」

 すでに太陽は雲の下に落ちたのだろう。随分と外は暗くなっていた。


 真夜中になり、エシリア達は外に出てイピュラスを目指した。イピュラスまでは遠回りになるが裏道を通り、街中を警戒している天使達の目を避けていった。

 「おーここだここだ。この穴に入るんだ」

 マ・ジュドーが案内してきたのは、イピュラスにほど近い茂みの中であった。そこに古びた祠があり、地下へと降りる階段があった。

 「こんな祠があるなんて……知りませんでした。どうして見つけたんですか?」

 「おいおい天使が知らないのに、どうして表六玉が知ってんだよ」

 エシリアとエルマに突っ込まれたマ・ジュドーはへらへらと薄ら笑いを浮かべていた。

 「マさん、お手柄ですね」

 「ははん。魔力を感じ取るのは得意中の得意だからよ。こっから力強い魔力を感じるんだよ」

 「そうですか?私は何も感じませんが……」

 「まぁまぁ、そう言わず入りましょうや」

 マ・ジュドーが率先して祠に入っていった。

 「ちょっとエルマさん」

 エシリアはマ・ジュドーに続こうとするエルマを呼び止めた。何だよ、とエルマが振り返った。

 「疑問に思うのですが、あのマ・ジュドーという使い魔、何者なんです?」

 「はぁ?何言ってんだよ。私の使い魔だ」

 「そういうことではありません。魔力が低いから天使達に気づかれたなかったというのは頷けますが、どうしてこんな地下通路を発見できたんです?魔力を感じるのは得意と言っていましたけど、そんな特技があるのですか?」

 「ああ。そうなんじゃね?あいつは親父が私に付けてくれた使い魔だから、私にもよく分からんところがあるんだよ」

 「そうなんですか……」

 納得してみせたが、腑に落ちなかった。やはりエルマ共々、マ・ジュドーのついても謎が深まるばかりであった。

 「エルマさんのお父様ですか。一度お会いしてみたいですね」

 「やめておけ、私の親父は超おっかねえぞ」

 シードならしょんべんちびってしまうかもよ、とけらけら笑うエルマ。エシリアはエルマの笑いを無視してマ・ジュドーの後を追った。

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