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天使と悪魔の伝説  作者: 弥生遼
第二十一章 風雲児
134/263

3

 そのままのレンでいい。アルスマーンはそう単純に言ったが、レン自身は納得できていなかった。

 アルスマーンと別れたレンは、しばし彼の言葉を考えていたが、やはりどうにも自分を納得させることができなかった。結局、もやもやとしたまま大聖堂の廊下をそのままぐるりと一周してしまった。

 流石に睡魔の襲ってきたようで、大きな欠伸をひとつしたところで、今度はガレッドと遭遇してしまった。

 「ガ、ガレッド!」

 レンは慌てて口を押さえた。恥ずかしいところを見られてしまった。

 「レン……。まだ起きておったのでござるか……」

 「ガ、ガレッドこそ……。どうしたのですか?」

 「ふむ。どうも胸騒ぎがいたしてな。無用のことながら、こうして警備の巡回をしておったのでござるよ」

 おそらくガレッドも、今日―すでに昨日になっているだろうが―の最高司祭会議の結果を知っているのだろう。会議の流れとしてはアルスマーンの有利に運んでいるのだが、予断を許せない状況にあるのは間違いなかった。

 「でも、大丈夫ですよ。ミサリオ様ならよい方向に導いていけます」

 「いや、某が気にしておるのはそういうことではござらん。教王派が暴挙に出るやもしれんということでござるよ。なにしろ僧兵総長は大の教王派でござるから……」

 暴挙。それは教王バドリオがアルスマーンを殺害、あるいは実力で幽閉するということだろうか。いくら何でもそれは考えすぎのような気がした。

 「ガレッド。それは流石にないでしょう。もしそんな暴挙に出たら、教王は引っ込みがつかなくなります」

 「某も杞憂であると思っているのでござるが、僧兵の派兵ということもやった御方でござる。何をしでかすか……」

 「仮にそうだとしても、この大聖堂にも多くの僧兵が……」

 とレンが言い終わらぬうちであった。ドン、ドンという鈍い音と微かな振動がした。

 「何事!」

 ガレッドが身構えた。さらにドンと大きな音がしたかと思うと、ばたばたと複数の足音が闇の向こう側から聞こえてきた。

 レンとガレッドが窓から外を眺めると、複数の僧兵が大聖堂を囲んでいた。松明を点けて走る僧兵もいることから、敵はこの夜襲を隠す気がないのは明白であった。

 「ミサリオ様が危ない!」

 「レン!」

 「ガレッドはシードさん達を!」

 「いや、この状況でレンを一人にするわけには参らん。シード殿達は大丈夫でござろう」

 確かにエルマやエシリア、ジロンがいれば大丈夫であろう。それよりもガレッドが自分を気遣ってくれたことが、レンには少し嬉しかった。

 「急ぎましょう。ミサリオ様とはついさっきまでお喋りをしていました。きっともう寝室に」

 ガレッドは頷き、レン達は走り出していた。

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