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天使と悪魔の伝説  作者: 弥生遼
第十九章 陰謀の発火
124/263

8

 教王庁に辿り着いたエシリアは、天使の翼を出現させ、ドライゼンとの面会を申し出た。待つこと数分、面会は許されたが、対面したドライゼンの表情を見て嫌な予感しかしなかった。ドライゼンはエシリアを見た瞬間、迷惑そうな表情を浮かべたのであった。

 『厄介事を持ち込みやがって……と言わんばかりですね』

 教化途中の天使が至急の面会を求めてきたのだからろくなことではない。ドライゼンはそう思ったのだろう。

 『天界の代弁者たるお方がこの調子だから、人間世界は乱れるんです』

 エシリアは声を大にして言いたかった。が、そのようなことは臆面も出さず、サイラス教会領でのこと、マランセル公爵領でのことを語った。

 「ふうむ……」

 やはりと言うべきか、ドライゼンは渋そうな顔をやめなかった。関心がないわけではないだろう。人間界における教会及び天使の失態は、彼の天界での評価にも影響する。無関心でいられるはずがなかった。それでいてこの表情が意味するところは何なのか?エシリアは咄嗟に推察することができなかった。しかし、

 『ドライゼン様もあてにならない』

 それだけは確かなように思われた。ドライゼンの出方次第ではシードが天使であることも話してしまおうと思っていたのだが、やめておいて正解だったかもしれない。

 「アレクセーエフについては天界院に報告しよう。しかし、教会の不祥事については私としても如何ともし難い」

 「何故でございますか?教会を正しく導くのも天使の務めではありませんか?」

 「それはそうだ。しかし、エシリアが報告をした件などは、いちいち天使が介入すべき事項ではないと思うのだが?」

 「そうでありましょうか?裏で天使が動いているとなると座視できないことかと思いますが……」

 「マランセル公爵領については調査する。しかし、エストヘブンの内乱の背後に天使がいるかもというのは憶測ではないか」

 「それはそうですか……」

 「サイラス教会領に至っては単なる司祭どもの堕落。教会が独自で善処すべきことではないか」

 それを促すのがあなたの仕事ではないか、とエシリアは叫びたかった。しかし、頭の固いこの天使では言ったところでおそらくは無駄であろう。

 『時間の無駄だ』

 ドライゼン相手に押し問答しているよりも、ガレッドの知り合いだという総司祭長に会った方が有効かもしれない。

 「分かりました。報告は以上です。アレクセーエフの件、よろしくお願いいたします」

 「ふうむ。エシリアよ。熱心なのは分かるが、お前の仕事は決められた領地の教化だ。職分を超えて、無用なことに首を突っ込まぬようにな」

 「ご忠告ありがとうございます。しかし、マランセル公爵領の件では私の友人であるタリューシャが亡くなりました。それにサイラス教会領は私の担当教区です。職分を逸脱するつもりはありませんが、私の職分内で起こっていることについては座視するつもりはありませんのでそのつもりで」

 余計なことを言ったかもしれない。エシリアは少し後悔したが、ドライゼンの威圧するような表情を聞いていると、どうしても言いたくなってしまった。

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