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これが異世界のお約束です!  作者: 鹿角フェフ
新第六章:異世界コラボは魅力的なお約束

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第二話:コラボは配慮が必要なお約束

 エリサ達のストレスによる胃痛が続く中、ヴェルダート一行は早速アルトの本拠地であるイーリス王国に来ていた。

 一般的なファンタジー世界であるこの場所は"チート主"であるアルトによる冒険の舞台、つまり『帰っちゃった元勇者』の世界だ。

 彼らはここで戦い、ここで生き、ここで物語を紡ぐ。

 自分達の国とは見た目以上に違う雰囲気に緊張感を覚えながら、ヴェルダート達はアルトが用意した待ち合わせ様の邸宅へと向かった。

 道中特に問題も無く到着したヴェルダート達は会場へと向かう廊下を歩んでいる。

 上級貴族の邸宅にも似たその場所は今回の為だけに用意された舞台だ。

 豪華な作りと一切の妥協を許さない洗練された調度品が、ヴェルダートとは隔絶したアルトの人気と拘りを感じさせる。

 キョロキョロと辺りを見回し、その度に感動するヴェルダート達。

 やがて巨大な扉が一つ彼らの前に現れた。

 実際の重さ以上のものを感じながら、ヴェルダートはゆっくりとその扉を開く。


 ――一人の男がそこで待っていた。

 溢れるオーラ。柔和な笑みの中に隠された精悍さ。あらゆる戦場をくぐり抜けて来た者特有の強者の気配。思わず傅いてしまうカリスマ性。

 そして何よりも、周りに侍る十数人にはなろうかと言う女性陣。


 彼こそが。『帰っちゃった元勇者』の主人公であるアルト、その人だった。



「やぁ、ヴェルダート! お久しぶり!」

「おお! アルト! ご無沙汰しています!」


 入室するやいなやガシっと硬い握手を交わす二人。

 ヴェルダートは比較的平然としているが、エリサ達は緊張しっぱなしだ。

 アルトが放つ人気"チート主"さんの迫力に圧倒されているのだ。


「は、はじめまして!」

「今日はよろしくお願いします!」

「ああ、皆さんもようこそいらっしゃいました!」


 緊張のせいか上ずった声が出てしまったエリサを気にすることもなく、アルトは気さくに返事を返してくれる。

 人当たりの良い性格にエリサがほっと心を撫で下ろしていると、背後に控えていたアルトのハーレム要員達も挨拶を始める。


「こんにちはー!」

「はじめましてじゃ」


 全員から挨拶をされ、慌てて返すエリサ。

 一般的な冒険者の恰好から、お姫様の様な恰好の女性、メイドやマオの様な小さな女の子も居る。

 エリサはその多種多様さに感心しながらも、その誰もが目が霞む程の美貌を持つことに戸惑いを覚える。

 井の中の蛙が大海を見た気分だ。

 心のどこかでは自分達程の美しさを持つものは他にはいないだろうと自負していた彼女は、この日世界の広さを知った。


「いやぁ、今回は相談に乗ってくれてありがとうアルト。本当に助かったよ」

「何を言うんだヴェルダート。同じ書籍化院の仲間じゃないか。困ったときは助けあいだよ」


 ヴェルダートとアルトの会話は穏やかに進む。

 面識はあると聞いてはいたが、ヴェルダートならライバルを減らすために出会い頭で攻撃でもしかねないと思っていたエリサ。彼女は虚をつかれたらしく微妙な表情だ。


「な、和やかな雰囲気が無性に怖いわ」

「流石にお兄さんも他所様のところに赴いてまで無茶を言い出すことはなかったようですね」


 ちょこちょこと、アルトのヒロイン達の間を駆けまわってあいさつ回りをしていたマオが手持ち無沙汰に佇むエリサに合いの手をいれる。

 若干ぼっち気味になっていたエリサはこれ幸いとマオと話そうとしたが、残念なことに彼女はまた直ぐに別のヒロインの所へ挨拶に行ってしまう。

 ふとエリサは辺りを見回す。

 ミラルダは貴族なので当然この様な場には慣れている。

 シズクはその中二病が良い方向に作用したのか空気を読まずにグイグイと相手の懐に入り込み、結果会話を成功させている。

 ネコニャーゼもちゃっかりシズクにくっつき、一緒になってアルトのハーレム要員達との会話に混ざりこんでいた。

 そしてマオは言うまでもない。何故か無駄にフットワークが軽い彼女は、いつの間にか作った名刺をアルトのヒロイン達に配っている有様だ。

 出だしとしては良い空気に思われる。

 だがこれでは普通の交流会と変わらないのでは無いだろうか?

 この国に来るまでの道中は紆余曲折あってバッサリとカットされているが、決して楽なものではなかった。

 折角相手の国にまでやって来たにもかかわらずこの様な場になっていることをエリサが不思議に思うのは当然だった。

 相手側が自分達よりも多く、グループになっていることからなんだか入りづらさを感じてしまったエリサ。彼女は助けを求める様にヴェルダートの周りをうろちょろとし始める。

 やがて、ヴェルダートとアルトの会話に隙を見つけやや強引気味に混ざりこむ。


「ねぇねぇ、ヴェル。コラボってよくわからないんだけど、こう言う風にするものなのかしら?」

「ん? ああ、今はコラボって言うかその前の相談だな。お互いの話を混ぜ合わせるんだ。いろいろと調整する事は沢山あるからな」

「そうだね。お互いの読者さんの反応も考えないといけないし、何より設定矛盾があったりしたら最悪だからね」

「へぇ、そうなのね」


 ヴェルダートとアルトの手には何やら資料がある。

 どうやらこの数枚の紙にお互いの設定や注意点等が書かれているらしく、二人はそれを元に相談を進めているようだった。


「お互いがお互いをよく知らないままコラボなんてしてみろ。不幸なことにしかならんだろ? だから事前の打ち合わせや調整が凄く大事なんだ。相手に礼儀を尽くす。これを疎かにするとこの業界で生き残れないと思え」

「ねぇ、いつ貴方に相手に礼儀を尽くす心があったって言うの?」

「むしろ礼儀しかないだろうが。基本的にコラボってのはお互いの世界にお邪魔するって流れで進んでいくんだ。どっちにしろ調整や確認は必要になってくるんだよ」



 コラボの種類は様々である。

 だがオーソドックスなものはヴェルダートの言葉通り相手の世界にお邪魔する物だ。

 例えばヴェルダートの場合を例に取るならば――。

 ヴェルダートがイーリス王国に向かい、アルト達と邂逅し事件を解決する物が一つのコラボ。

 そして逆にアルト達がヴェルダートのアルター王国にやって来、別の事件に巻き込まれる物が一つのコラボ。

 こうして互いの世界での出来事をそれぞれ物語にすることが比較的多く取られる方法だった。


「ふーん。そうなのね」

「さぁさぁ、お前もいつまでも俺にくっついてないでどこかにいけ! 俺はアルトと打ち合わせしないといけないんだからよ!」

「むっ! 分かったわよ!」

「ごめんね、ちょっと重要な話だから」


 ヴェルダートの説明に納得し、うんうんと頷くエリサ。

 だがエリサが更に会話を続ける余地は無くさっさと追い返されてしまう。

 むっとし反論しようとしたエリサだったが、アルトからも断られてしまってはどうしようもない。

 そもそも二人共重要な話をしているのだ。

 これ以上無理を言って邪魔をしてはいけないことは当然エリサも理解している。

 となるとエリサもだれか手持ち無沙汰な人物を見つけて会話に持っていく必要があった。

 あまりこういった状況には慣れていないエリサは、さてどうしたものかと辺りを確認する。


「しかし、流石に主人公が二人ともなると、その……、女の子の数も膨大ね……」

 アルトのヒロイン達は多数存在している。ヴェルダートもヒロインも何だかんだで五人だ。

 全員合わせると相当な人数になり、ヴェルダートとアルトが壁際の目立たない所で熱心に話し込んでいる為まさに女子会といった雰囲気だった。

 キョロキョロと辺りを見回しているエリサはふとネコニャーゼの特徴的な猫耳に目が行く。

 何故か同じように獣人特有の耳と尻尾を持つ人物が居ることに気がついた彼女は、興味深げにその様子を眺めた。


「あ、はじめまして。私ミーアと申します。アルト様のメイドを努めさせて頂いております」

「わあ……ネコニャーゼといいます。同じ獣人さんなんですね!」

「はい、私は犬の獣人ですね。ネコニャーゼさんは猫なんですね」


 どうやらネコニャーゼと会話しているのはメイド服に身を包まれた犬耳の少女だ。

 優しげで献身的な雰囲気がメイドという職業によく似あっており、同じ獣人族ということもあってかネコニャーゼと意気投合したようだ。

 よくよく見渡せばエリサの様に耳の長い者、つまりエルフの少女も居る。

 あらゆるジャンルを網羅しているそのラインナップに、エリサもなるほどと感心の声を上げる。


「へぇ、あっちのヒロインの女の子達も多種多様な女の子がいるのね!」

「なんだかいつの間にか集まった感じだけどね。あっ、私はシャレン。よろしくね!」


 ぼんやりとしていたエリサを気にしたのか、冒険者風の装いに身を包んだ赤いショートカットの少女が話しかけてくる。

 快活とした印象は人を安心させる何かがあり、その笑みにつられて思わずエリサも微笑む。


「私はエリサよ! どうぞよろしく!」

 エリサは彼女が自分と同じ様な立ち位置とキャラクターであることをつぶさに感じ取ると、これ幸いにと元気よく挨拶をした。


 …………

 ……

 …


 当初はぎこちなさがあったものの、今はその様な壁は無く懇親会は穏やかに進んでいる。

 今はエリサが如何にヴェルダートが非道で下衆い主人公であるかをアルトのヒロイン達を前に熱心に演説している最中だ。

 コラボの前段階としてお互いのヒロイン達の交流を企んでいたヴェルダートは、その企みが正しく成功したことに密かに安堵する。


「ふう。ヒロイン達も仲良くなったみたいで良かったなぁ。無理言って本当に済まなかったよ、アルト」

「いいんじゃないかな? 皆も良い機会だし、こういうのも新鮮だよ」

「そう言ってくれると助かる」


 今回コラボを言い出したのはヴェルダート側だ。

 彼が無理を言ってアルトにコラボと自身が抱える悩みの相談を切り出し、アルトがそれを快く受けた形になる。

 ここまでの恩義を受けておいていつも通りに適当に返す性根は流石のヴェルダートにも存在しない。

 最低限の"主人公"としての矜持を持つヴェルダート。同じ立場のアルトに礼を欠くことだけはしないようにと細心の注意を払っていた。

 ……エリサ達が聞けば、何か悪いものでも食べたのではないか? と正気を疑われる言葉である。

 一見して真剣で礼節に満ちていると思われるヴェルダートとアルトのやりとり。

 だが次の瞬間、二人のかぶっていた仮面が剥がれ落ちる。



「それよりヴェルダート。なんて言うか、君の女の子も……」

「いやいやアルト。そういうお前こそ、話には聞いてるぞ……」



 自分達のヒロインがこちらに注意を向けず、会話に楽しんでいることを確認した二人は途端に悪どい笑みを浮かべる。

 それには先程までの精悍で頼もしい"主人公"としての姿は無く、どこまでも欲望に忠実な下世話な物だ。

 互いのヒロインを嘗め尽くすように眺めるヴェルダートとアルト、その視線に気づかないことは彼女達ヒロインにとって何よりも幸運なことだった。


「そう言えばアルト。普段はどういうふうに――」

「ああ、そこはこれがこうで――」


 決して表現できないようなことを生々しく赤裸々に語り始める二人。

 その顔は幸福に満ちており、だがしかしどこまでも下世話なものだった。

 如何に自らのヒロインが素晴らしいかを語る二人はまるで自分の宝物を紹介する子供様に無邪気な表情だ。

 もちろん、その内心は下心でしか構成されていない。

 二人は見本の様に素晴らしいハーレムを形成する、典型的な"チート主人公"だった。


「あっ! またヴェルが悪どい顔をしているわ! これは碌でもないことを考えている証拠よ!」

「アルト君! また変な事考えているでしょ! 折角の催しなのにダメよ!」


 欲望が駄々漏れだったのだろうか?

 二人の下心に満ちた表情を見つけたエリサが大きく声を上げ、一緒にいたアルトのヒロインであるシャレンも注意する。

 その声に他のヒロイン達も気がついたのか、何かを咎める様な視線が一斉に二人に集中する中、ヴェルダートとアルトは額に汗を垂らしながら誤魔化し気味に大声で話し合う。


「と、取り敢えず。今度二人で世界を交換して冒険をしてみようじゃないか。それも楽しそうだ!」

「そ、そうだな! 後は懇親会の後に本格的に相談に乗って欲しいんだ。俺の冒険の何が悪いのか、どれだけ悩んでも答えが出ないんだよ」


 誤魔化し気味に放たれた言葉ではあったが、ヴェルダートの悩みは真剣だった。

 彼は今回、本気でアルトの教えを請おうとしている。

 本来ならばあり得ない行為ではあるが、それほどまでにヴェルダートは切羽詰まっていた。

 その鋭い洞察眼によって一瞬にしてその心情を見ぬいたアルトは、静かに、だが力強く頷く。


「わかった。俺に任せておいてくれ」

「おお、ありがとうアルト!」


 頼もしい言葉にヴェルダートも気を良くする。こうして、ヴェルダートの悩みは確実に解決へと向かおうとする。


「あっ、そう言えばヴェル。マオちゃんとオーリエちゃんが模擬戦するって言ってるんだけど、良いかしら? 良いわよね」


 ヴェルダートとアルトが何やら友情を誤魔化しと言う名の友情を育んでいる中、ふと思い出したかの様にエリサがぽんっと手を叩く。


「そ、そうだった! その事を話そうと思っていたのよ! アルト! オーリエを止めてよ! マオちゃんが怪我しちゃうわ!」


 どうやらエリサ達がヴェルダートとアルトを注目していたのはこの件について説明するためだったらしい。

 ふと見渡せば確かにマオとオーリエの姿が見えない。

 それどころか邸宅の中庭辺りより、連続的な破壊音が聞こえ始めてきた。

 オーリエは幼い姿ではあるが、魔族でありその力にはアルトすら手を焼いたことがある。

 その事実を思い出したアルトはサッと顔を青くして慌て出す。


「げっ!? ま、まずいぞヴェルダート。すぐに行かないと!」

「や、まぁ大丈夫だよ。マオもああ見えて強キャラだから。いわゆる幼女強い枠」


 だがヴェルダートは至って冷静だった。

 オーリエの強さのほどは分からないが、それでもマオは曲がりなりにも魔王である。

 さらにはヴェルダートの知る限り最強の……。


「そ、そうなんだ……」

「それにマオもこういう場合はどうすればいいか分かってるだろうしな」


 万が一にも後れを取るはずがないし、更に言えば相手を傷つけるようなことをするはずがなかった。

 ヴェルダートが無駄に冷静にいることに少しだけ納得したのか、若干の不安が残るもののマオとオーリエの二人を放置するアルト。

 エリサとシャレンも何か言いたげではあったが、主人公である二人が問題なしと判断してしまった為それ以上は強く言えずに引き下がった。

 ヴェルダートとアルトの相談は、少しの懸念を残しながら続く。

 二人がコラボについて詳細を決めていく中、中庭より爆発音が連続して鳴り響いてくる。

 何やら強力な魔法でも使用しているらしく、室内までビリビリと衝撃波が届く。

 エリサ達もどこか上の空の様子で所在なさ気だ。

 二人の様子が気になるのならば見に行けば良いのだが、折角の懇親の席をはずすことは彼女達には憚られた。

 故に、取れる行動は待つ事のみとなってしまう。

 アルトまでもがそわそわと部屋の視線に意識を向ける中、やがて戦闘音がなくなり辺りが静まり返る。

 遂に決着がついた様だ。

 全員の意識が二人の勝敗に向く中、暫くして部屋の扉が勢い良く開かれた。

 現れたのは衣装がボロボロになったマオとオーリエの二人だ。

 果たして勝負はどうなったのか?

 部屋から出て行く前と変わらぬ二人の様子に、その場にいた全員は勝負の行方を判断できないでいる。

 やがてビシッとマオが片手を上げ、元気よくその結果を宣言した。


「負けちゃいました!」

「えっ!? マオちゃん負けちゃったの!? オーリエちゃん凄いじゃない!」


 エリサが驚き、オーリエを賞賛する。

 マオは最強の魔王だ。少なくともヴェルダート達の認識ではそうなっている。

 その彼女を倒すとなると相手は自分達の想像を超える強者ということになる。

 なんだかんだ言ってもマオが勝利すると考えていたエリサは、自分の予想を超える結果に少々信じられない気持ちがあった。

 唖然とするエリサを尻目に、まるでお互いを認めるように戦いを通じて中情を深めたマオとオーリエは気さくに語り合う。


「マオも相当強かったぞ、我は満足した」

「オーリエさんびっくりする程強かったです! やっぱりコラボはこういう出会があるから楽しいですね!」


 ニコニコと楽しそうに語らう二人。

 先ほどまで聞こえてきた爆発音がまるで嘘のようだ。

 敗北したはずのマオも何やら気にしていない様子。それどころか自分以上の強者の出現に心躍っている節さえある。

 マオが見た目以上にプライドが高い人物でもあることを知っているエリサは、ほっとひと安心しながらボロボロの二人を見つめる。


「ちゃんと手加減したんだろうなオーリエ?」

「そんな余裕はなかったと思うがの」


 アルトがオーリエに声をかけ、肩をすくめながら彼女が答える。

 ヴェルダートも何やらマオに声をかけているが、残念ながらエリサには聞こえなかった。

 そのまま二人はボロボロの衣装を着替えもせずに会話に戻る。

 先程まで壮絶であろう戦いを続けていたのに大した胆力する感心したエリサ。

 何事かが起こる気配も無いことから、どうやら二人のバトルイベントはこれで終わりらしい。

 エリサは大きなため息を尽き、隣にいるシャレンに同意を求める。


「はぁ、よかった。途中から明らかに破壊音がおかしいからここら一帯破壊しつくされるんじゃないかと思ったわ!」

「私もよ! 本当、アルトもヴェルダートさんもちょっと二人をどうにかしてよ!」


 ぷりぷりと怒り出すシャレン。

 エリサ以上にあの爆発音に胃を痛めていたらしい。

 だが残念なことに、二人の主人公はやはりと言ったところか、このような事態は大したことでは無いと判断していたらしく反応が弱い。


「マオは魔王様だから基本的に俺の言うこと聞かないんだよなぁ……」

「オーリエも魔族だしなぁ、言うこと聞かせられないこともないけど、ベッドの上で」


 それどころか全くのやる気を見せないヴェルダートに乗るようにアルトもふざけ始める。


「なんだそのセリフ。さいっこうにカッコイイなアルト!」

「それほどでもないぜ、ヴェルダート!」


 一層盛り上がる男性二人。

 もはやヒロインに話を聞かれていることなどお構いないらしい。


「「はぁ…………」」

 あれやこれやと再度ヒロインの魅力や理想的なシチュエーションを語り合う二人に、エリサとシャレンは盛大な溜め息をつくのだった。

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