第一話:ステマは最終手段なお約束
多くの読者さんにエタったと思われているにもかかわらず、当然の様に物語が続くヴェルダートの物語。
だがしかし、一定の評価は得たものの、多数の書籍化作品に埋もれいつしか忘れ去られた彼は、何を思ったのか自室にて引きこもりっていた。
薄暗い室内。カーテンは締め切られ、夏場にもかかわらずひんやりとした気味の悪い冷気が漂っている。
辺りには食べちらかした食料の包装紙。どれだけ放置しているのか変色し嫌な匂いすら放っている。
ヴェルダートが向かうのは室内に置かれた机の上だ。何故かその部分だけ淡い光が長方形上に放たれており、何の作業か一心不乱に覗きこんでいる。
そう、ヴェルダートは……。
☆――――☆――――☆――――☆――――☆――――☆――――☆
【オススメのチート書籍・主人公を紹介するスレ 25スレ目】
1:スレ主
最近巷で人気のチート主人公さんを扱った書籍!
それら書籍でオススメの書籍や主人公を紹介しましょう!
※自作自演、ステマ行為は禁止! 喧嘩などせず仲良くご利用下さい。
405:名無しの読者さん
やっぱり最近のオススメはヴェルダートさんだよな!
彼こそが唯一にして絶対の主人公だぜ!
406:名無しの読者さん
>>405 聞いたことないなぁ……。
☆――――☆――――☆――――☆――――☆――――☆――――☆
掲示板で盛大に自作自演行為をしていた。
「くっくっく! 俺に残された道は少ない。こうなりゃもう後は最終手段しかねぇ! 自演でもなんでもやってやる! ステマだ! ステルスマーケティングだ! こっそりと掲示板に俺のヨイショ書き込みを蔓延させて、多くの新規読者さんをゲットするんだ!」
目にクマを作り、日の光を浴びていないのか不健康がありありと分かる顔に笑みをたたえながら、ヴェルダートはとてつもない暴挙に出ていた。
彼が向かっているのは最近アルター王国で導入された『掲示板』である。
以前『VRMMO』のプレイヤー達が王国に転移して来た事件。
その際に王国は技術提供を受け、彼らが使用している物と遜色の無い『掲示板』を魔法具という形で作り上げた。
読者さんが忘れていた頃にいかにも伏線でしたよと言わんばかりに回収し、ドヤ顔でチラチラする。
当初はそんな予定は一切無かったにもかかわらず上手に話の辻褄を合わせる見事な匠の技だ。
今回の話の為だけに強引に辻褄を合わせられ物語に再度登場した『掲示板』。
これは多くの人々が自由に書き込みを行える仮想世界上のコミュニケーションツールだ。
主に『VRMMO』の『お約束』で見られ、主人公が様々な人に情報提供を受けて"俺ツエー"を成し遂げたり、逆に一般の人々から掲示板上で謎の凄く強い人物として話題にあげられ"俺カッケー"を演出したりするツールとなっている。
その様な掲示板であったが、ヴェルダートの利用法は非常に偏っていた。
その性質上アルター王国中の様々な人々が利用出来る掲示板は、"チート主"さんの動向を追跡するだけではなく、様々なジャンルに渡って書き込みがなされる。
当然、どの様な"チート主"さんが面白いか? どの様な書籍化冒険が楽しいか? といった話題も読者さん同士で熱心に交換され、日夜膨大な量の情報がやりとりされている。
ヴェルダートが取った行動は単純明快だ。
読者さんの善意の輪に入り込み、同じ読者を装って自分の宣伝を行う。
下衆や外道と言うよりは、もはや小物以下でしか無かった。
☆――――☆――――☆――――☆――――☆――――☆――――☆
410:名無しの読者さん
そのヴェなんとかさんは知らないけど、俺のオススメはタケルさんかな?
あのビッチと平然と行動を共にする男気がたまらんよ。
413:名無しの読者さん
ああ、分かる! 面白いよね。あのコンビは最高だよ!
414:名無しの読者さん
タケルさんマジカッケー!
☆――――☆――――☆――――☆――――☆――――☆――――☆
「ふっざけんな! 俺の方が面白いだろうが! なんでタケルがそんなに人気出てるんだよ! お前らの目は節穴か! ちゃんとまっとうな目で見ろよ!」
机をガッ! と叩きつけ、ツバを飛ばしながら口汚く罵るヴェルダート。
その目は血走っており、ランランと輝いている。
苛立ちが増しているのが自分でも理解出来たのか、気分を切り替える為にヴェルダートは椅子にもたれ掛かる。
ギシリと椅子が軋みを上げるのも気にせず、彼は手近にある菓子を鷲掴みにし口へと持っていきくちゃくちゃと汚らしく音をなしながら不満をこぼした。
「あーあー。ダメだわ。この業界もう終わりだわ。全然見る目が無い。読者さんに見る目が無いわ。先細りだわ! このままじゃ業界自体が先細りだわ!」
唐突に業界のディスに走るヴェルダート。
当然だ。彼の目論見はなんら成功していなかった。
読者さんは馬鹿ではない。いくら彼が掲示板で自作自演行為をしようとも、彼らの本質を見抜く目を欺くことは不可能だ。
そのことを理解していないのか、もしくは忘れているのか……。
ヴェルダートは終わりの無い迷路を、出口を探して延々と彷徨うだけだ。
無駄な努力が実を結ぶことなど天地がひっくり返っても不可能だった。
「折角俺がわざわざ掲示板で教えてやってるのに、なんて態度だ! コイツらはダメだな!」
故に彼が次に取る行動は簡単である。
自らの人気低迷の責任を他者のせいにする。
ヴェルダートは自らの冒険が評価されないのを業界のせいにし、決して満たされぬ自尊心をなんとか保とうとした。
ヴェルダートの終わらぬ戦いは続く。
彼は今日も掲示板の向こう側にいる誰かと戦っているのだ。
それが何かはもはや本人すら良く分かっていないが、それでもヴェルダートは歩みを止めない。
歩みを止めた時は死ぬ時だ。
だからヴェルダートは――。
今日も戦うのだ。
「「うわぁ…………」」
心底ドン引きした声は唐突にヴェルダートの室内に流れた。
淀んだ空気と同時に言葉さえも濁ってしまいそうだ。
声の主はエリサ、そしてミラルダ。
彼女はヴェルダートの自室の入り口からこの惨状を眺め、声にならない感想を簡潔に態度で表していた。
「見てくれましたか! お兄さんのこの情けない状況を!」
ぴょんぴょんとこの場に似つかわぬ晴れやかな笑みを浮かべるのはマオ。
エリサ達をこの場に連れてきた張本人だ。
冒険も一段落つき、完全にオフに入っていたエリサ達。
演出も一切なく普通にアルター王国へ戻ってきており、それぞれ自由な時間を楽しんでいたのだが……。
ある日珍しくマオから誘われてヴェルダートの家へとやって来たらこの様だ。
ヴェルダートがまたおかしなことになっているとはマオの言葉だったが、流石にしばらく会わないだけでそこまで変化は無いだろうと楽観視したのが間違いだった。
「想像以上に酷かったわ。想像以上に……想像以上の有様ね。エリサちゃん悲しくなってきた」
「えっと、私あまり良く事情を理解していないのですが……。これってどういった状況なのでしょうか?」
額を押さえ、久方ぶりに大きなため息を吐くエリサ。
反面ミラルダはヴェルダートがまた変なスイッチをオンにしたことは理解していたが、それがどの様な意味を持つのかいささか把握しきれていない。
「つまりですねミラルダさん! お兄さんは自分の書籍が売れないあまり、何を考えたのか掲示板で自分の書籍の宣伝を始めた訳です! この冒険が最近凄く面白いですよ! って感じに」
ぴょんぴょん飛び跳ねるマオ。太陽を思わせる笑顔だ。
「あれ? 自分で自分の作品を宣伝するんでしょ? それの何がダメなの? 普通じゃない?」
「いえ! もちろん、知らない第三者を装ってるんですよ!」
「「うわぁ…………」」
本日二度目のドン引き。
エリサとミラルダがもはや一言の感想すら出せずにいた。
「ふふふ。見て下さいあの必死な形相! マオは是非ともお二人にこのお兄さんの哀れな有様を見て欲しかったのです!」
ささっ! と手を伸ばし、どうぞとばかりにヴェルダートの惨状を紹介するマオ。
キラキラとしたその瞳は屈託無く、無邪気な声音は罪悪感を一切抱かせない。
マオは明らかにこうなるまで知っててヴェルダートを放置していた。
「ところでマオちゃん。なんでシズクちゃんとジト目ちゃんはここにいないのかしら? 二人共呼んであげれば良かったんじゃない?」
ヴェルダートはエリサ達を無視するかのように一心不乱に何やら掲示板と向き合っている。
エリサは普段なら全力で絡んでく来るヴェルダートが無言なことに気味悪い物を感じながらも、同じヴェルダートのヒロインであるネコニャーゼとシズクがこの場にいないことを不思議に感じる。
「あのお二人を呼ぶとお兄さんの擁護に走る可能性がありますからね! ここは一つ、ビシッとお兄さんの心をへし折ろうかと思ったのです!」
「……なるほど、慈悲の心がまったく無いわね」
「魔王なので!」
「マオさんの気持ちも分かりますけどねー」
ブイっとピースを作りながら悪びれること無くヴェルダートを貶めようとするマオ。
相変わらずな彼女のドSっぷりにエリサとミラルダも少々思うところがあったが、それ以上にマオの考えに同意するところがあった。
いい加減、ヴェルダートに付き合うのも疲れたのだ。
ここいらで盛大に痛い目にあってくれた方がエリサ達の溜飲も下がることとなる。
「お前ら! 煩いぞ! 俺は今忙しいんだよ、ここで俺が頑張らなくちゃエタっち舞うんだよ! このままじゃ! このままじゃエター主人公になってしまう!!」
その様なエリサ達の内心を知らないであろうヴェルダートが文句の声を上げる。
どうやら彼女達の言葉を無視していたのだが、あまりに騒がしくする為に機嫌を損ねたらしい。
「エターって……。すでにもうエタってる感じなんだけど……」
「現実を直視出来ないんですよ! 哀れですね!」
「それに最近では迷走もしてきてますけどね。方向性が定まっていないのが素人目にも分かりますわよ」
「こんなことをしているのならもっと他にやるべきことがあるでしょうに……」
「うっせ! 今話しかけられたお陰で折角のバトルが形勢不利になったじゃねぇか! ここが一番大事なんだから俺の集中を切らせる様なことをするんじゃねぇ!」
バンバンと机を叩きながら大声で叫び散らすヴェルダート。
ツバと菓子カスが飛び散るのを視界に入れたエリサはその端正な表情を嫌そうに歪めながらそろそろと室内を進み、ヴェルダートの背後から掲示板を覗く。
「……これが掲示板? ヴェルは今何してるの?」
「見えない敵と戦っているんですよ! お姉さん!」
「見えない敵……ですか。どの様な状況なのでしょうか?」
エリサと同じくマオとミラルダもヴェルダートの背後にやってき、掲示板を覗きこみ始める。
冒険者、それどころか主人公である癖にラクラクと背後を取らせてしまったヴェルダートは、エリサ達に一切気づくこと無く真剣に掲示板を眺めていた。
☆――――☆――――☆――――☆――――☆――――☆――――☆
422:名無しの読者さん
いや、ヴェルダートさんだって!
マジで知らないの? 遅れてるよ? 今一番ホットなチート主人公さんじゃん。
424:名無しの読者さん
いや、だから知らないって。
428:名無しの読者さん
っていうかさっきからコイツしつこくない?
433:名無しの読者さん
>>422 本人乙!
434:名無しの読者さん
は? 俺がいつ本人だって言ったの? 面白い物を面白いって言って何が悪いの?
ってか俺が本人だって証拠あるの?
そういうお前らの方がタケルとか言う奴の身内じゃねぇの?
言い返せないなら下らないこと言わないでくれます? はい、論破!
☆――――☆――――☆――――☆――――☆――――☆――――☆
顔をゆでダコの様に真っ赤に染め上げながら、勢い良く掲示板を操作し書き込みを行うヴェルダート。
ややあって自分のやりたいことを一方的に言い切ったのか、「よし、勝利……」と小さく呟きクルリとエリサ達へと向き直る。
「はぁ、お前らには失望した。俺は主人公としてお前らに失望したよ。まったく……自演の一つもやらなくて何が主人公だ! 何がヒロインだ! お前らも俺のヒロインならば掲示板でステマの一つでもやれよ!」
「ねぇねぇ、そのステマってのが良く分からないんだけど。宣伝ではないの?」
掲示板のやりとりを眺めていたエリサは、ヴェルダートがなんら勝利していないことを理解しつつ別の話題を持ち出す。
ヴェルダートが勝利しようがしまいがどうでも良いことだったし、そもそも指摘して騒がれても面倒だという思いが強かった為だ。
先程から何度かヴェルダートの口から漏れでた言葉――ステマ。
彼の『お約束』説明スイッチが入ったのか、多少落ち着いた様子を見せたヴェルダートは毎度の如く用語の解説を始める。
「ステマってのはステルスマーケティングだからな。基本的に表立ってやる宣伝とは違ってさりげなーく人気があることを匂わせるんだ。そうすることによって掲示板を読んでいる読者さんが興味を持ってくれ、最終的に人気に繋がる」
ステマ。
ステルスマーケティングの略称であるこの単語は、掲示板等のコミュニケーション空間で行われる宣伝方法の一種だ。
おおっぴらに商品名やその効能を告知する通常の宣伝方法とは違い、ステマは人々の口コミの体を利用して商品の宣伝を行う。
ヴェルダートが行っていた様に、この手法は第三者や一般の利用者を装って宣伝することによって人々にある種の説得性を持たせる点が一番の特徴だ。
簡単に言えば、「これは面白いですよ!」と本人が言うよりも、第三者が「これは面白かった!」といった方が説得力があるし他の興味を掻き立てるというイメージの元に成り立っている宣伝方法だ。
「なるほどまぁ確かに噂の力は凄いですから。でもそういうことはヴェルダートさんのお仕事ではなくて、もっと別の……例えば書籍化院が考えることではないでしょうか? それにこっそりと一般の人を騙ってやるのもどうかと思いますわ」
ヴェルダートによる簡単な説明でステマの基本的仕組みを理解したミラルダ。
流石貴族といったところだろうか、その教養と聡明さで瞬く間にステマの有効性と問題点を把握する。
ミラルダの懸念の通り、ステマは利用者を名乗りその有効性を誇張することから一般的に評判は良くない。
この様な手法を取られてしまっては本当に良い物を共有しようとする利用者の善意を害することになってしまうからだ。
最も、ステマは過剰なヨイショやしつこいまでの推しが基本となる為ある程度の判別がつく。
特にヴェルダートの様に顔を真っ赤にして必死に書き込みを行うステマなど一目瞭然だった。
もちろん、本人はその事実に気づいていない。
「ステマに問題なんて無いんだよミラルダ。これは主人公の義務であり、権利だ。俺は正当な理由によって今ここでステマしている」
「そんなこと言い出すのヴェル位だと思うけどね」
「いや違う。俺の予想では皆もやっている。だから俺だってやるんだ。よし、取り敢えずタケルを含め有名作品をドンドンディスっていこう! そうすることによって相対的に俺の作品が上がる!」
それどころか他人には理解出来ない持論を心の底から信じている。
自分の物語を広めるならどの様な卑怯な手も許される。
それがヴェルダートと呼ばれる男の基本的な考えだった。
小物の極みである。
「はぁ、いつも言ってるけど……物語で魅せなさいよー」
「物語で魅せるには限界があるんだよ! ステマの力でこれからの厳しい戦いを生き延びていくんだよ!」
グッと拳を握り、勢い良く席を立ち上がり持論を展開していくヴェルダート。
彼の瞳は真剣だ。
一切の迷いや戸惑いが見られない。
その意志は強固で、その想いは気高い。
言い聞かせるように、己の生き様を魅せつるように……。
ヴェルダートはエリサ達に自らの信念をぶつけた。
「俺の物語は――」
「ステマによって成り立ってるんだよ!」
威圧するかのように放たれるとんでもない発言。
ヴェルダートという男は面倒極まりない人物であった。
「という訳で。俺はステマに忙しいので話しかけるな」
嵐が過ぎ去った後の静寂とでも表現しようか。
尊大な演説が終わった後の室内は、やけに静かに感じられた。
「一瞬カッコイイ台詞かと思ったけど、よくよく考えたら酷い話だったわ」
「ドンドン落ちぶれていくお兄さんがとっても素敵です!!」
自らの物語ではなく、他の要素によって物語宣伝していこうという下衆い姿勢。
どこまでも信念の無いその言葉にエリサ達も呆れを通り越して冷静になって来る。
この様な状態になってしまったヴェルダートはちょっとやそっとのことでは元に戻らない。
エリサとミラルダはお互いを見合い、どちらとも無く大きなため息を吐いた。
「それにしても、マオちゃんは楽しそうでいいわね……」
「もちろんです! お兄さんがダメになればなるほどマオは――」
「ふっざけんな! この愚民どもがぁぁぁ!!」
ヴェルダートの落ちぶれに反比例して機嫌を良くするマオ。
彼の惨状を解決する為に何か良い方法は無いかとエリサがマオに訪ねようとした時だった。
ヴェルダートは突然叫び上げると何度も机を叩き始めたのだ。
「ちょ、ちょっと! 暴れないでよ! 他の部屋の人に迷惑でしょうが!」
「きっと掲示板で煽られたんですよ! 楽しくなってきました!」
「うがぁぁ! どいつもこいつも俺を馬鹿にしやがって! こうなりゃ何がなんでもステマ成功させてやる! 大衆の心理誘導こそ認知度の上昇に結びつく効果的な手法であることを証明してやる!」
飛び散る菓子、ゴミクズ、埃。
ヴェルダートが暴れる度に辺りの物が散らばり、破損し、汚れていく。
まるで癇癪を起こした小さな子どものように暴れるヴェルダートにマオの機嫌も最高潮に達する。
「その意気ですお兄さん、マオは幸せです!」
「マオさん……ご機嫌のところすいませんが、そろそろヴェルダートさんを元に戻す方法を教えて欲しいのですが……」
「そうよ、どうするのマオちゃん。このままじゃヴェルは掲示板でステマをするだけの存在になってしまうわ……」
曲がりなりにもエリサ達はヴェルダートのハーレム要員であり、かつヒロインである。
憎からず思っているヴェルダートの情けない姿をこれ以上見るのは辛かった。
エリサ達が少しばかり悲しい表情をし始めたことにマオも気づいたのだろう。
先程までヴェルダートの暴れっぷりを見て爆笑していた彼女は、胸をおさえながらひぃひぃと笑いをこらえると、ピッと指を立ててこれから起こるであろうオチを公表する。
「まぁまぁ、見ていて下さい! 古今東西ステマで成功した主人公なんていないんですから。きっと楽しいことになりますよ!」
「ああ、嫌な予感がするわ」
「ええ、嫌な予感しかしませんわね」
マオの言葉でエリサとミラルダはこれから起こりうるであろう流れを察し肩を落とす。
「テンション上がってきましね! まだまだ続きそうです!」
きっと碌なことにならないだろう。
二人が見事正解を思い当てる中、マオの元気な声だけが暗い室内に響き渡った。




