表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
これが異世界のお約束です!  作者: 鹿角フェフ
第五章:VRMMOには妹がいるお約束

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/55

第一話:ネトゲランカー

 2134年、日本で発生した「集団VRMMO内監禁事件」。

 AIの暴走により発生したそれは最終ボスを撃破しない限り死が待ち受けるという一方的なデスゲームの幕開けであり、総勢七千人のプレイ中ユーザーに絶望を与えた。

 しかし彼らも嘆くだけではない、現状を把握すると勇敢な者達が現実世界への帰還を目指して果敢にその攻略を進めたのだ。

 そうして、多大な犠牲をだしながらも最終ボス"深淵の者"を撃破する事に成功する。

 彼らは遂にその困難に打ち勝ったのだ。そして、また平凡ながらも愛すべき日常が帰ってくると思われた。

だが、しかし……


 ゲームをクリアした彼らがログアウト時に発生する軽い酔いから目を覚ますと、そこは見慣れた日常ではなく、ただ広大に広がる平原であった。


「やった! 遂に、遂に戻ってきたぞ!」

「おっ、おい……なんだこれ!? どこだよここ!」

「日本じゃないのか……?」


 あちらこちらから戸惑いの声が上がる、何もない平原に相当な人数がひしめき合っている。クリア時にゲーム内に居た全員がこの場にいるようであった。


「待てよ! まだそうとは限らないだろ! 群馬とか、そういうまだ開発が進んでいない土地の可能性がある!」


 ゲーム内の装備や容姿がそのままである時点でこの指摘は間違っているのだが、一縷(いちる)の望みをかて一人の男性が大声で叫んでいた。盗賊職である彼には遠く微かに人工物が見えた、彼らの場所からハッキリと分からないがそれは街のようであると認識できたのだ。


「なぁ、あ……あれ………」

「え? どうしたの………?」


 空をみあげていた別の男性が信じられないといった様子で声を上げた。彼が指さした上空にはワイバーンと呼ばれる竜の亜種が悠々と空中遊泳を楽しんでいる。

 それは、ここが日本ではなく彼らの困難がまだ終わっていない事を明確に表していた。




◇   ◇   ◇




「それで、今回の依頼と言うのがその大量転移者への説明か……」

「強い人はいますかね! マオ興味あります!」


 商業都市ボルシチの郊外へと向かう道すがら、ヴェルダートとマオはミラルダより依頼の説明を受けていた。


「はい、総勢五千人程。郊外の安全な場所に臨時キャンプ設立の準備を進めています、ですが流石にこの人数です。混乱が発生してはひとたまりもありません。ヴェルダートさんはこういった状況にお詳しいのでしょう?」


 ミラルダがヴェルダートへと期待に満ちた視線を向ける。

 当初は自らの手駒のみで交渉に当たろうとしていたバールベリー公爵であったが、彼らが特殊な人種であった為話が一向に進まず、結果ミラルダを通じてヴェルダートへ依頼する事となったのだ。


「『お約束』ですね! でも今回の『お約束』はなんでしょうか、お兄さん?」

「まぁな、こういった場合いろいろあるんだ。面倒なパターンでないといいんだが……」


 ちゃっかりとヴェルダートと手を繋いだマオが嬉しそうに質問する。彼女は最近『お約束』をしっかりと勉強するようにしていた。その方が会話の回数が増えるからだ。



 キャンプ予定地。大量の転移者と思われる人間がひしめき合うその場所に着いたヴェルダート一行は、彼らから向けられる視線を気にもせずに興味深げに観察する。


「んー。武装しているな、年齢も統一されていない。学校転移や地域転移じゃないのか」


 マオとミラルダも同様だ、といってもこの二人は相手の力量を見定めていたのだが。


「あれ? どういう事でしょうかこれ?」

「どうかしましたか? マオさん」


 不意にマオより疑問の声があがり、ミラルダがそれに返す。


「はい、皆さん武装は一流なのですがその佇まいがとても素人さんなのです。誘っている訳でもないですし、コスプレでしょうか?」


「ああ、そう言われればそうですわね。こう隙が多いと反射的に攻撃を加えてしまいそうで困りますわ」


「取り敢えず何人かやってみます? ミラルダさん」


 二人は脳筋であった、不穏な空気を(かも)し出す二人にヴェルダートが冷静に対処する。


「おい、ちょっと落ち着けこの脳筋ども。でもそれで大体わかったぞ、コイツラ『VRMMO』からの転移者だな。んー、ちょっと面倒だな」


「『VRMMO』? それはなんでしょうか? ヴェルダートさん」


「異世界の住人だと思っておけばいいぜ、後で詳しく説明する。とりあえず話つけるわ、このまま放っておくと多分混乱が広がるからな」



 『VRMMO』プレイヤー。それがこの特殊な人種の正体である。

 大抵がデスゲームとセットになって展開されるこの物語は恐ろしいまでにテンプレ化されている。


 ある日突然ゲーム運営会社やAIの暴走によってゲーム内に閉じ込められる主人公。ゲームから抜け出すにはクリアしか無く、ゲーム内死亡はそのまま現実での死亡に繋がる。

 ひょんな事から超絶レアスキルを手に入れてしまった主人公は果たしてこの閉ざされた世界で何を為すのか!?


 この様なあらすじによって始まる『VRMMO』ではあるが、もちろん中身はレアスキルによる"俺ツエー"と数々の魅力的なヒロインによる"ハーレム"である。

 何処までいってもテンプレ、これが『VRMMO』であった。


 ちなみにこの『VRMMO』だが、序盤のVRシステム起動以外は擬似ファンタジー空間での冒険になり一切科学技術要素が出てこない。にも関わらずSFジャンルに分類される為に宇宙船やらロボットやらのSFを読みたい人からの反応はやや悪い。

 スペースファンタジーを読みたいからランキングを見たらひたすら異世界で魔物を倒しているだけだった。

 こういった需要と供給の齟齬(そご)が起きてしまっているのだ。



 そんな『VRMMO』の住人達と話をつける為、ヴェルダートは転移者達の何人かを掴まえると一番話が出来そうな人物を聞き出して連れてくるように頼む。

 そうして、しばらくすると一人の白銀の鎧に包まれたどこかあどけなさの残る美しい女性がやってきた。


「俺はヴェルダートって言う、一応今回の問題に対処する為にギルドより派遣された。アンタがコイツラの代表か?」


「はい、私はアリアと言います。クラン「銀狼騎士団」のマスターです。正式な代表という訳ではないのですが一応最大規模を誇るクランのマスターなので話を聞かせて頂きます」


 クランとはゲーム内のプレイヤーで作られるグループの事である。彼女、アリアはその中でもトップの規模と勢力を誇った「銀狼騎士団」のマスターであった。

 今回はその影響力から一時的な代表として選ばれたのだ。


「分かった。んじゃ早速説明と状況のすり合わせするかー」


 ヴェルダートはアリアへとこの世界についての大まかな説明と、彼らが経験した事件の顛末について説明を受ける。

 結果、彼らは『お約束』的展開で『VRMMO』内でラスボスを倒した直後に、何故かこの世界へ転移、ボス攻略組から一般プレイヤーまで全員が揃っており突然の事態に混乱収まらぬ状況である事が判明した。


「―――つまり、この団体はさほど統率がとれていないと言う訳か……」


「そうなのです、本当にすいません。もともとラスボスである"深淵の者"を倒す為だけに結束していたお互いの素性も知らぬ様な人達なので……しかも現実に帰れると思っていたらこの有様です、私もどうして良いのやら……」


 伏し目がちにアリアが言う。

 『VRMMO』では様々な考えのプレイヤーが存在する、つい先日まで一般人であった彼らを強固に統率するなど無理な話である、現に大抵の『MMO』における大規模団体が壊滅する原因は人間関係から来る内部崩壊であった。


「お兄さん! あっちの方でどうやら揉め事ですよ!」

「あら、本当に落ち着きのない方々。緊急時に冷静になれないなんてどれ程無能なのでしょうか?」


 マオとミラルダが声を上げる。どうやら遠くで喧嘩が起こっているらしかった。

 いくら精強な装備と肉体に身を包んでいるとは言え、彼らは一般人である。

 ここに来て遂に限界が来てしまったようだ。

 アリアも驚いたようにその様子を見て叫ぶ。


「そんなっ! あれはギルド『†漆黒の堕天使達†』! 普段温厚な彼らがなぜ!?」

「『お約束』ってやつですよアリアさん。この世界には不思議な法則があるのです!」


 そう、『お約束』である。集団は冷静になってはいけない、必ず噛ませっぽい人達が争い事を起こして"チート主"さん達を困らせなければいけなかった。


「そういうこった、だから『VRMMO』で廃人だったから異世界でも"俺ツエー"が出来るとか思わない方がいいぜ、上手く立ち回れないと死亡フラグを立ててあっさりと死ぬ」


「は、はぁ……」


 あまり理解していないのか、アリアが気のない返事をする。彼女は密かにランカーとして鍛え上げた自らの力を過信しており、そのレベル150という高い能力なら異世界でもそうそう遅れを取ることは無いだろうとタカを(くく)っていたのだ。


「でも取り敢えず場を収めないとな、うーん。マオ、ミラルダー、ちょっと行ってきて………ってもう居ねぇ!」


 ヴェルダートが声をかけるや、マオとミラルダが疾風のごとく争い事の中心へ飛び込む。

 その素早さにヴェルダートも目を見張る。彼女達はとにかく暴れたかったのだ、完全な脳筋である。


「え! 『†漆黒の堕天使達†』は上位ランカーで構成されるギルドなんですよ! 平均レベルも100を超えます! 割って入るなんて危険です!」


 ヴェルダート達のやり取りを唖然と見ていたアリアが気付いたように叫ぶ。

 『†漆黒の堕天使達†』は強力な戦闘能力を誇る上位ランカーで構成される有名な攻略クランである、もちろんかませ役だ。


「いや、大丈夫。あいつら魔王と四天王だし、お前らで言う所のレイドボス(多人数戦専用ボス)だから。ぶっちゃけお前らがヤバイ」


「……は?」


「準備してない所にいきなりレイドボスが二体(とつ)って来てお前らがヤバイ」


 ヴェルダートは、そう冷静に答えた。



…………

………

……



 死屍累々(ししるいるい)

 もちろん死者は出ていないが、そう表現しても可笑しくない惨状が辺りに広がる。

 マオとミラルダはテンションに身を任せ関係ない人達までもその歯牙に掛けていた、彼女達の戦闘能力はこの世界でも上位に位置する。巻き込まれた人々は不幸としか言い様がなかった。


「いやー! マオなかなかに楽しめました! やはり運動は良いですねミラルダさん!」

「軟弱者ばかりでしたわね。もう少し骨があると思っていたのですがやはり見た目だけですわね」


 二人はいい笑顔であった、彼女達は自重というものを知らない。


「じょ、上位クランの人達がゴミクズの様に……」

「まぁ『お約束』の後押しもあっただろうがな」


 驚きのあまり声が出ないアリアにヴェルダートが合いの手を入れる。

 噛ませはあっさりとやられてしまう。彼らは早速『お約束』の洗礼を受けたのだ。


「それよりもヴェルダートさん。これ以上揉め事おこされても困るのですが? 何か良い案はございませんか?」


 自分のしでかした事を棚の上の上にあげてミラルダがヴェルダートに物申す。


「………まぁ、そうだな。とりあえず"主人公"でも探すか。大抵物語のキーになっているからそいつを抑えると上手くいく」


 ヴェルダートは突っ込みを入れてやろうかと思ったが彼女がそれをスルーする事は明らかであったので取り敢えず話を続けることにする。


「んー、でもお兄さん。流石にこの人数からその"主人公"さんを探すのは難しいのでは?」


 心配そうにマオが尋ねる。五千人になる人数から一人の人物を見つけるのは困難に思えたからだ。


「いや、簡単だな。おい、アリア。悪いが今から言う条件に当てはまる奴を探してくれないか?」


「……? はい、分かりました」


 アリアはヴェルダートの言っている事がまったく理解できなかったが、先程の惨状より聞いておいたほうが良いと判断し、その内容を聞き漏らすまいと気持ちを切り替える。


「いくぞ、本人しか持っていない固有スキル、または地雷スキルを持っている。

 有名な女鍛冶師と懇意にしていてヒッソリとレア装備を作ってもらってる。

 ランカー上位、またはそれに準ずる強さを持つ女性の知り合いが多い。

 ソロでヒッソリと行動するのが好き、ボス狩りも余裕、ギルド等には基本的に入らない。

 ラスボスの撃破に多大な貢献をした。」


「え、え……?」


 アリアはその内容に戸惑う、一人だけ心当たりがあったからだ。


「そして最後に、妹に誘われて『VRMMO』を始めた」


 ヴェルダートが言い終わる。

 対象の人物が分かったのか、アリアは少しだけ恥ずかしそうにオズオズと切り出す。


「えっと、それはたぶん私のお兄様ですね……」


「へぇ! こりゃ都合がいい! さっそく呼んでくれないか? コール系は簡単なんだろ?」


 そう、彼らの"チート主"さんはアリアの兄であったのだ、灯台下暗しとはこの事である。

 そして『VRMMO』はそのシステム上、連絡を簡単にとる手段が存在する。

 こちらの世界に転移してもそういった物が残っているであろうと判断したヴェルダートは早速"チート主"さんへ連絡を取るようアリアに伝える。


「えっと、その……」


「お兄さん、最後の妹さんに誘われると言うのはどういうことでしょうか?」


 アリアが言いよどむ、ヴェルダートはその様子に何かあるのかと(いぶか)しんだがまずはマオの質問に答えることにした。


「ん? 『お約束』なんだよ。『VRMMO』って言うのはな、必ず妹に誘われるんだ。そういう仕組だ、伝統とも言える。しかも妹は兄にぞっこんでハーレム入りする。意味がわからんだろ?」


 そう、『VRMMO』には必ず妹がいた。

 彼女たちは一様に美少女であり、ランカーであり、人気者である。

 そんな妹に誘われて『VRMMO』を始めるのが『お約束』であった。


「背徳的ですわねー」

「妹キャラはポイント高いのですね!」


「んでアリア、連絡はとれたか?」


 ヴェルダートは興味深そうに話を聞くミラルダとマオからアリアへと向き直る。

 だが、どうしたことか。アリアはどこか浮かない様子であった。

 そうして、彼女の口から一つの事実がもたらされる。


「いえ、実は……お兄様はその、他人と喋るのが非常に苦手な方でして……」

「は?」


「その、ランカー上位なのも普段学校に行かずに自宅で一日中……」


 伏し目がちにアリアが答える。

 彼女の兄である"チート主"さんは引きこもりだったのだ。


「それただの引きこもりじゃねぇか!! そこ何でリアリティ出すの!? 普通主人公って言ったら膨大なプレイ時間が必要なランカーの癖に違和感ある位のリア充じゃねぇか! 剣道の有段者とかだったりするんじゃねぇのか!?」


 ヴェルダートが突っ込みを入れる、だが残念ながらアリアの兄はニートでヒッキーでコミュ障でボトラーであった。


「いえ、お兄様は完全なピザです。剣道どころか街を歩くと150%の確率でカツアゲされます」


 150%とは、外出した際に100%カツアゲされ、その帰宅時に50%の確率で再度カツアゲされるという意味である。


「哀れだよ! リアリティを追求した故の悲劇だよ!!」



 通常『VRMMO』の主人公は超絶リア充である。

 友人関係も良好で数多くの女性達からも想いを寄せられ、システムに頼らずに戦闘を行えるほどの運動センスにレアスキルを偶然手に入れる幸運性とあらゆる人々を魅了するカリスマ性を持つ。

 もちろん、現実の『MMO』ランカーはそのほとんどが引きこもりの無職である、そうまでしてゲームをしないとランカーになれないのだ。

 リア充とランカー、その矛盾を限りなく無くした結果がアリアの兄であった。

 こうして、現実の残酷さと生々しさを思い知らされる悲惨な"チート主"さんが生まれてしまった。


「ではランカーであるアリアさんもピザと言うことなのでしょうか?」


 マオが元気よく手をあげる、彼女は空気を読まずに直球で質問した。ヴェルダートの悪い部分を確実に学んでいたのだ。


「いえ、私はリアルでも才色兼備、キャラクター通りの美少女でして学校でも有名な超絶リア充です。完璧にゲームとリアルを両立しています」


 『VRMMO』における妹は基本的に完璧存在である、例外は無いに等しい。


「自分だけチャッカリと『お約束』してんじゃねぇよ! 妹とのギャップに兄貴が余計引きこもるだろうが!」


「そんな事私は気にしません! その証拠にお兄様が学校に登校した際は離れず常に一緒にいます!」


 アリアは自分だけ『お約束』の美味しい部分を取っている癖に、悲惨な兄の心情を全く理解できない痛い子であった。


「そういうのが登校拒否を引き起こすんだろうが! 空気を読めよ!」


「ちょっと重いですわね、女性は控えめの方が良いのでは?」

「好きだから一緒にいたいんですね! わかります!」


 マオとミラルダが感想を言い合う、完全にゴシップを楽しむ野次馬だ。この事態を収める気が全くない。


「その通りです! そして私とお兄様の前に空気など関係ありません! 二人の愛は全てを乗り越えるのです!」


「一方的なもんだよソレ! あとヤンデレっぽくなってるから止めような! 違うフラグが立つから!」


 妹の幾人かは『ヤンデレ』属性を持つ。そうして上手く設定を料理できずに『暴力ヒロイン』になるのだ、アリアからもその傾向がありありと見て取れた。


「あっ! お兄様からメールが入っています。ヴェルダートさん宛ですね」


 アリアの目の前に透明感のあるウィンドウが表示される。

 どの様な技術体系でなされているのか一切不明なそれは異世界に転移しても『お約束』的に使用が可能な『VRMMO』のシステムウィンドウである。

 今はアリアの兄から入った連絡を表示していた。


渦中(かちゅう)の引きこもりさんか……んでなんだって?」


「『人前に出るのは怖いのでゴメンナサイ』とあります。ふふふっ! お兄様ったら恥ずかしがり屋さん!」


「悲しすぎるぞオイ……」


 ヴェルダートの小さな突っ込みが響き渡る。

 リアリティを追求しすぎたが故に人前に出ることすら困難な哀れな"チート主"さんがそこに居た。

 基本的に多くの人々との交流が必要な"異世界転移"と"俺ツエー"である。

 コミュ障や人付き合いが苦手な人々にはそれだけで胃が痛くなる話であった。



 こうして、ヴェルダートはアリアの『VRMMO』システムメールを利用しながらなんとか"チート主"さんと連絡を取ることに成功する。

 そして"チート主"さんのハーレムとアリアが持つコネの力によって事態の沈静化と形ばかりの統率が取れることとなる。

 無事依頼を達成でき安堵するヴェルダートであったが、"チート主"さんがメールの文頭文末に必ず卑屈なまでに"ゴメンナサイ"と入力するので、終始つらい気持ちになるのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ