閑話:『アテクシ』
閑散とした酒場、端のテーブルに座る二人の男。
泣き崩れる一人と話の顛末を聞きながら興味無さげに相槌を打つ一人。
その日、タケルは遂に知ることとなったハーレム要員の乱れた男性関係についてヴェルダートへ愚痴をこぼしていた。
「うう。バニラたん……信じてたのに!」
「というか今まで気づかなったお前が凄いよ」
魔王バニラの浮気が発覚した。
タケルは初めて経験するNTRにかつて無い程の衝撃を受けヴェルダートに泣きついたのだ。
「だって! バニラたんが俺が初めてだっていうから! 普段から運動してると血が出ないこともあるって言うから! 汚れのない瞳で訴えるから信じてたんっすよ!」
「中身は相当汚れてたけどな」
「うわぁああん!!」
魔王バニラは浮気がバレるとすぐさま嘘泣きをしながらうそ臭い言い訳で弁明。タケルが興信所に頼んで入手した証拠を元に指摘すると今度は逆切れするという典型的な地雷女のテンプレ行動をかましたのだ。
タケルの心労たるや如何程か? 責任の一端を持つヴェルダートであるが彼は反省どころか自分が悪いとさえ思っていない。
「まぁあんな女ばっかりじゃないから地道にちゃんとしたのを探すんだな。俺は協力しないが」
「ひどいっす! 外道っす! 次は普通の女の子紹介して欲しいっす!」
タケルは傷心醒めやらぬうちに次の女性の事を考えていた。普通の"チート主"さんと違ってこういう類の展開に慣れていた彼は過去を忘れて新たな出会いに目を向ける図太さがあった。
意外と生き残れるタイプだ。
そんな彼の願いが届いたのだろうか?
タイミングを見計らったように一人の女性が酒場へとやってくる。黒髪黒眼の平凡な女性だ、貴族とまではいかないが一般市民にしてはやや高級な服装をしている。
歳の程はどうであろうか? 幼さがやや残るその容姿から妙齢であると思われた。
女性はキョロキョロと酒場を見渡すと近くに座る冒険者へと話しかけている、その仕草から何かを尋ねているようであった。
あてが外れたのであろうか? 話しかけられた冒険者が首を横に振ると女性は別の冒険者へと同じように話しかけだす。
「兄貴! あの女の人なんだか困っているみたいっすよ? フラグの予感!?」
タケルはその様子をチャンスであると理解する。
過去の女は忘れて新しい出会いを探そう!
タケルは気持ちの切り替えだけは素晴らしい才能を有していた。
「ん?………。おっ、おいタケル。あれは止めておけ、後悔するぞ」
ヴェルダートはその女性をしばらくぼうっと見ていたが何かに気付いたのかタケルへ忠告する。その言葉は先程のふざけた雰囲気はなく逆に焦りを感じさせるものだ。
何かあるのだろうか? タケルは疑問に思いながらも再度女性に視線を向ける。
いたって普通の女性だ、確かに容姿も平凡で年齢も自分やヴェルダートとそう変わらないであろう、だが忌避する程悪い女でもなかった。
「後悔? どこら辺が? 見た感じ変な所は無いっすよ? 確かにヴェルダート兄貴のハーレムみたいにちっこくてペッタンコじゃないっすけど………」
「お前、俺をなんだと思ってるんだよ? いいか、あれは多分『アテクシ』だ。やっかいな女だぞ」
『アテクシ』。それは一部の"女性主人公"さんにしばしば付けられる名だ。
このタイプの特徴は様々だが一番特徴的な点はその"恋愛脳"にある。
常に恋愛の事を考え他の事はどうでもよいと言わんばかりの行動原理は男性達にすこぶる評判が悪い。
もっとも、ここまでであれば女性魔王とさして変わらないのだが『アテクシ』が厄介なのはその節操のなさにある。
彼女達は"主人公"であるという特権を最大限に生かし、大して魅力もない癖に多数のイケメン達から熱烈な求愛を受け悦に浸るのだ。
そうして、フラフラとあっちの男に思わせぶりな態度を取ってみたり、こっちの男を無意味に突き放してみたり、揺れ動く恋心で悩んでみたり。散々男の気持ちを弄んだ挙句あっさりと一人の男と結ばれるのだ。
もちろんその際に他の男は全切り。
悪魔のような女、それが『アテクシ』なのである。
「は? 『アテクシ』? 初めて聞いたっす。なんすかソレ?」
「いいか? 『アテクシ』っつーのはだな―――」
「すみません、少しよろしいでしょうか?」
酒場にいる冒険者達にあらかた話しかけたのだろうか? ついに『アテクシ』と評された女性がヴェルダート達の席へとやってくる。
「チッ、なんだよ?」
ヴェルダートは自身の不機嫌を隠そうともせずに女性へ無愛想な言葉を投げかける。一方のタケルは不思議そうな表情だ。彼は『アテクシ』の恐ろしさをまだ知らないのだ。
「情報屋……を探しています。この酒場にいると聞いたのですけど知らないでしょうか?」
もちろん、この女性が情報屋を探しているのは大した理由ではない。
『アテクシ』の物語に魔物や戦争と言った冒険譚は出てこない、最終的にすべて恋愛に集約される。
今回の酒場訪問もそれらしい理由はあるが詰まるところ新たな逆ハーレム要員を探しての事でしかない。
「情報屋なら明日ここにく………痛っ!」
「いや、知らんな。それより用が済んだらさっさとどこかに行ってくれねぇか?」
慌ててヴェルダートがタケルの足を踏んで言葉を制す。
『アテクシ』とは少しでも関わりあいにならない事が重要だ、不用意な親切から酒場を物語の中心点にされてはたまったものではないと思ったが故に辛辣な態度を取った。
「さっきこちらの方が何か言おうとしてたみたいですけど……」
「知らねぇって言ってるだろ? 邪魔だ、消えろ」
ヴェルダートはキツイ言葉で返す、女性が怯えて退散すると考えてだ。
そうすればあとは適当な逆ハーレム要員に泣きついて勝手に問題を解決して彼女達だけでヨロシクやるであろうと、そう思った。
だがそれも逆効果に終わる場合もある。
「む……。ねぇ、ちょっとアナタ! その言い方はないんじゃない!? 明らかに何か隠そうとしているでしょう!?」
「チッ……面倒な事になった」
ヴェルダートの誤算は彼女を"イケメン達から熱烈アプローチで困っちゃう『アテクシ』"だと判断したことにある。
だがしかし、この女性は"知らずにイケメン達を振り回しちゃう『アテクシ』"だったのだ。
アクティブかノンアクティブか、その判断を間違えたツケは大きくのしかかる、取り返しの付かない事態が起きようとしていた。
「面倒な事!? 私がいると面倒だって言うの!?」
「ああ、面倒だな! 自分の身も守れねぇ女が出しゃばるんじゃねぇよ!――――やば、台詞が勝手に」
台詞が勝手に出てくる、対応をしくじったヴェルダートはいまや『アテクシ』物語の『お約束』的登場人物と化している。
「ふん! 言ったわね! 今に見てなさい! ギャフンって言わせてやるんだから!」
「おう、おう! 出来るものならやってみな! そうしたら見なおしてやるぜ!――――完全に流れ持ってかれたぞ! ってかギャフンて」
女性はその怒りをこれでもかと表情に出しながら酒場を出て行く。
勝手に『お約束』的台詞が出てきてしまう現象から解き放たれたヴェルダートは頭を抱えて机に突っ伏す。
「くそっ! 俺としたことが対応をしくじった」
「兄貴ー。どうしたんすか? 怒らせてしまったっすよ?」
初めは険悪だったにも関わらず次第に自分を認めてデレる。
これでもかと言わんばかりの"逆ハーレム要員"キャラであった。
◇ ◇ ◇
『アテクシ』による衝撃の事件より数日後。
ヴェルダートはマオとネコニャーゼの二人と共に昼食を取っていた。
一息ついたのか、コップに入った水を一口飲むと真剣な表情でヴェリダートが切りだす。
「おいジト目、新入りのお前に少し聞きたいことがある」
「はい……何でしょう?」
「ズバリ。俺はカッコイイと思うか?」
ヴェルダートによる突然の質問。ネコニャーゼはその愛らしい瞳をぱちくりさせながらも口を開こうとする。
「いきなりですねお兄さん! 容姿に自信がないのですか!? ではマオがお答えしましょう―――」
「マオは少し黙っていてくれ、どう思う? 真剣な話だ」
ネコニャーゼが返答するより早くマオが手を挙げ話題に乱入してきた。いつもならツッコミを入れるヴェルダートであったが真剣な質問らしくマオの横槍も冷たく躱される。
「―――む! むぅ……」
マオは微かに悲しそうな表情を見せると大人しくなる。
少しだけ正直に、そう胸に秘めていたマオだが本日は些かタイミングが悪かった。
「えと……その、頼り甲斐があって優しくお話ししてくれて……カッコイイです、えへへ」
「そうか………ちょいワル冒険者ポジションか……」
「何か訳ありなのでしょうか? お兄さん」
自分も言いたかった台詞を独り占めされて膨れるマオであったが、変わらずヴェルダートが真剣な表情で悩み込んでいるのに気づくとその顔を覗き込みながら声をかける。
ヴェルダートは深い溜息を付くと酒場の一角に向けて顎をしゃくる。
「あれだ………」
そこには先日ヴェルダートをロックオンした『アテクシ』こと黒髪の女性がいた。
こちらにチラチラと視線を向けながら憮然とした表情で飲み物を飲んでいる。
「ああ、あの方ですか。なんだかずっとこちらを伺っていますね。お知り合いですか?」
「違う、あれは『アテクシ』だ。ちょいワル冒険者ポジでロックオンされたんだ」
そう、ヴェルダートはちょいワル冒険者ポジションでロックされていたのだ。
ひょんな事から冒険者と知り合ったアテクシ! あいつったら乱暴者で口が悪くて、顔を合わせる度に喧嘩してもう最悪! でもそんな犬猿の中のアテクシとあいつがいつの間にか………。
こんな感じである。もちろんアテクシは並行して他の男を攻略している。
「えと……『アテクシ』ってなんですか?」
「『アテクシ』は"逆ハー主"のことだ。関わりあいになるとろくな目に合わない」
「あう……よくわかりません」
ネコニャーゼの耳が下がる。同じく話を聞いていたマオもよく理解していないのか難しい表情で考え込んでいる。
そんなやり取りの最中も『アテクシ』はチラチラとこちらに視線を送ってきている、鬱陶しさあふれる構ってちゃんオーラにヴェルダートも限界だ、『アテクシ』に向き直ると罵声を浴びせる。
「おい! お前さっきから何こっちをチラチラ見てるんだよ! 目障りなんだよ!」
「フンッ! 私が何をしようと勝手でしょ? 貴方に何か言う権利あるの!? そんなちっちゃな女の子達を侍らせて悦に浸る変態さん!」
「はぁ、こんな感じなんだよ。恐らく俺のことを見返してやる! みたいな事を思ってここに通い続けているんだろう。このままだとなし崩し的にあいつの逆ハーレムに巻き込まれて取り返しの付かない事になる」
逆ハーレムに取り込まれるとろくな事にならない。
大抵は他の男と『アテクシ』を巡りあって不毛な争いを行い、彼女の自尊心を大いに満足させた後にあっさりと捨てられる。
よしんば選ばれたとしても完全女性上位の結婚生活が目に見えている。
この通り『アテクシ』の逆ハーレム要員になるということは男性にとって墓場への片道指定席特急券なのである。
先程まで難しい顔をしていたマオが何かを閃いたのか不意に顔をあげる。
「けどお兄さんがこのままマオ達の様にちっちゃな女の子とイチャイチャして悦に浸っていれば問題ないのでは? 取り敢えずジト目さん、お兄さんとイチャイチャして下さい」
「えっ!……じゃ、じゃあ手を繋ぎましょう」
マオが良いこと思いついたと言わんばかりにネコニャーゼに無茶ぶりする、 流石に自分とイチャイチャしてくれと言うのは憚られたようだ。
もっとも、マオ自身イチャイチャをあまり分かっていなかったので参考の意味合いもあった。
「相変わらず貞操観念高いなおい。でも多分無駄だぞ。いくらイチャイチャしても、最終的には『アテクシ』に夢中になっちゃうあの人! みたいな感じで話の流れが持っていかれる」
「なんですかそれ? ちょっとお姉さんとミラルダさんに伝えてもいいですか? 闇夜に紛れてサクッといきますので」
ヴェルダートによって差し出された手を嬉しそうに握りこむネコニャーゼの両手を見つめながらマオが答える。
「止めておけ、イケメンの逆ハー要員が助けに来る。よしんば成功しても悲劇的な『アテクシ』を演出して話がややこしくなるだけだ」
「えへへ……ヴェルダートさんの手、暖かいです」
「じゃあどうするんですか? 流石にお兄さん取られたらマオはこの物語を欝にシフトさせますよ? あとマオとも手を繋いで下さい」
『アテクシ』は悲劇が好きだ。レイプや暴力行為とまではいかずとも誘拐や監禁などは彼女達がとても好むシュチュエーションである。
そうやって可哀想な『アテクシ』を演出して喜ぶのだ。
もちろん後始末は"逆ハー要員"の仕事である、『アテクシ』の物語において彼らは都合の良い存在でしかなかった。
「うーん、方法が無いわけじゃないんだがな。これダメージでかいからなー」
差し出した手を嬉しそうに握りこむマオを見つめながらヴェルダートは呟く。
実は『お約束』に精通しているヴェルダートはこの問題に関する対処法も理解していた。
だがそれは諸刃の剣であった、これを実行する事によって受ける被害は計り知れないものになるのだ。
「ちょっと貴方! さっきから見ていたらそんな小さな子と手を繋いじゃって! ロリコンじゃないのこの変態!」
「面倒臭ぇなぁ……」
両手を少女達に握られながら悩みこむ男性、奇妙な絵面に介入のチャンスを見いだしたのか黒髪の女性が唐突に話題に入ってくる。
「貴方達もよ! こんな変態と一緒にいるとイタズラされちゃうわよ!?」
「………ヴェルダートさんはそんな事しません」
「お兄さんの事何も知らないのによく言えたものですね、死にたいのですか?」
少女達は静かに激怒した、ギャグ物語における貴重なイチャイチャ場面に水を刺されたからだ。可憐で不器用な少女達は今や瞳孔をこれでもかと開き黒髪の女性への敵意をあらわにしている。
対する女性も少女達の変わり様に少々同様した様子だが一向に引く気配がない。
ヴェルダートは両手を握る不機嫌な少女達を交互に見ると大きくため息をつきとっておきの手札を切る事を決意する。
彼はこれ以上少女達の不機嫌な顔を見たくなかったのだ。
「はぁ……仕方ねぇな。おい、女。お前名前は何だ?」
「何!? 名乗るならそっちから言いなさいよ! まぁいいわ、私の名前はカナエ=サトウよ!」
「そうか、俺はヴェルダートだ。若く見えるが何歳だ?」
「26だけど何か?」
カナエと名乗る女性は『アテクシ』にありがちな転移者である。
26歳の平凡なOL、日本人特有の童顔と低身長によって異世界で10代に見られることが自慢のお手本のような"女性主人公"である。
「そうか、26には全然見えん。しかも見た目は悪くない」
「男の人って本当にそればっかりね。女の子の内面なんて全く興味ないんだから」
そう言葉で否定しながらもカナエの顔からは喜色が隠せていない、女性は何時の時代も若く見られたいのだ、嬉しくないはずがなかった。
「お、お兄さん!?」
「え?……どうしてですか!?」
ヴェルダートは両手を握る少女達の手を離すとカナエの前へ歩んでいく。
突然の変化に少女達も困惑する、カナエの前に立つヴェルダートの両側に慌てて追い寄ると不安気にその顔色を伺う。
「そんな容姿だ、いろんな男が集まるんだろう。だがな―――」
ヴェルダートはカナエの瞳を真っ直ぐに見つめる、真剣な表情だ。
彼は大きく息を吸う、大きく、大きく、そして。
「26ってのはババァなんだよっ!!」
盛大に吐き叫んだ。
「おい、マオ! ジト目! お前らいくつだ!?」
「マオは11歳です!」
「はい!……13歳です!」
マオとネコニャーゼがヴェルダートの真意を汲み取り元気よく答える。
カナエと少女達の間には絶望的なまでの戦力差があった。そしてこれはヴェルダートが変態である事の証左でもある。
「どうですかババァ、この圧倒的年齢差! 干支が一巡してもまだ足りませんよ!?」
続けて被せる。ヴェルダートのターンはまだ終了していない。
彼は女子供問わず敵には容赦のない男だった。
カナエは口をぱくぱくとさせるばかりで言葉が出せずにいる。
「ちょっと見た目が若いからってごまかせると思うなよ! コイツラとお前じゃ格が違うんだよ!」
ヴェルダートは両側に立つ少女達の肩を抱き寄せる。その身長差がより犯罪臭を漂わせている。だが少女達は頬を染めながらも嫌がる様子はない、むしろ相手に対する哀れみを含んだ勝者の顔だ。
一方のカナエは異世界転移後初の精神的大ダメージを受けていた。彼女とてこの展開は思いもよらなかった。
「分かったならサッサと出て行け! ババァには興味がないんだよ!」
オーバーキル。
ヴェルダートは容赦なくカナエを叩き潰す、彼女は顔を真っ赤にさせながら何も言い返せずに退散した。
残虐非道のヴェルダート。彼はその二つ名に恥じぬ冷酷さを持ってカナエの心を折ったのだ。
未婚女性のコンプレックスをあえてえぐり許されぬ暴言を吐く、このことより逆ハーレム要員としてのロックオンから脱出したのである。
正に禁じ手。彼にしか取れない外道の法である。
「ふぅ、取り敢えずこれで二度と来ないだろう」
ヴェルダートが二人の肩より手を放す。
事態の収束を感じ取ったのか、先程までシンと静まり返っていた酒場が途端に騒がしくなる。
「流石ヴェルダートだ、残虐非道の二つ名に嘘偽りはねぇ」
「小さい子ばっかりだと思ったらやはり本物か……」
「どうしよう、26はおばちゃんなんだ……」
「そっ、そんな事ないよ! 君は十分魅力的だよ!」
冒険者達がめいめいにその偉業を囁き合う。
余波を受けた30代以降の独身女性冒険者達は不運にも気絶していた。
どこかホッとした様子でマオとネコニャーゼがヴェルダートへと話しかける、二人共寄り添ったまま離れようとしない。
「無事切り抜けましたがお兄さんが変態というレッテルが貼られてしまいましたね」
「でも……私たちがいるので大丈夫です!」
二人の少女はご機嫌だ、いつの間にか先程と同様ヴェルダートの手を握っている。
ヴェルダートは"逆ハー要員"から開放された事を安堵しつつもこれから訪れるであろう問題に思いを馳せる。
「いや、本当の面倒事はこれからなんだよなー。お前ら俺に何かあったらマジで助けてくれよ?」
「「………はい?」」
◇ ◇ ◇
「ヴェルダートとか言う狼藉者はいるか!?」
酒場の扉が勢い良く開けられる。
現れたのは豪華な鎧に身を包んだ男だ、カナエに泣きつかれたイケメン騎士団長がヴェルダートに決闘を申し込みに来たのだ。
"逆ハー女主人公"の復讐が始まる。
この後もヴェルダート達はイケメン宮廷魔術師、イケメン宰相、そしてイケメン王子とどれもこれも若くイケメンで金と権力を持っていそうなカナエの"逆ハー要員"達に絡まれる事となり、大いに苦労するのであった。