3白と黒の狭間に
ただ青だけが広がる空に、ゆっくりと雲が流れる。
そんな晴天の中、黒い服を着た人たちが悲しく暗い表情でうつむいていた。
真ん中には花束が沢山置かれた仏壇があり、その上には満面の笑みを浮かべている『大原美香』の遺影があった。
美香の母が持っているハンカチを湿らせ暗涙している。父は泣くのをぐっとこらえ、泣いている彼女を黙って見つめていた。
「私のせいだわ……」
と母は、か細い声で呟いた。
「さっきから同じことを。だからお前のせいでは……」
「私がもっと優しくしてあげれば……」
彼の腕を掴みわが子の名前を呼び、泣き崩れる。
それを遠くから美香の二人の同級生は心がひきしまるような表情で見ていた。
「どうしてこうなったんだろう」
楕円形の眼鏡をした少女が抑揚のない声で言った。
「援交していた相手に殺されたって……」
「それを訊いてるんじゃない!! 家出した原因よ」
眼鏡の子は声を荒げる。
「亜由……」
と呟き暗い声でもう一人の子が言う。
「あいつのせいだよ。仲間はずれにしようって言ったのあいつだし……」
「そうだね。全てあいつのせいよ」
そう言うと、亜由と呼ばれた眼鏡の子は肩を掴まれた。
振り返ると、つり目の少女が苦笑してこちらを見ていた。
噂をすれば影がさす。今、話に出ていた人物が現れたのだ。
二人は驚き狼狽える。
「私のせいね……。あんたたちも共犯じゃない」
その言葉に亜由は憤りを感じた。だが逆らえない。今度は自分が標的にされるのではないかという気持ちが邪魔をした。
「援交して殺され犯人見つからずって言うから来たのに嫌な感じ」
何故言えないんだろう。美香のことをまったく心配していないような言い方されてるのに。
亜由は情けない自分にも憤りを感じた。
「帰ろうかな……。つまんないし」
―つまらない。
その無責任な発言についに憤慨した。
「あんた最低!! 美香があんたに何したって言うの? 全部、あんたのせいよ!!」
静まり返っている葬式の場。その子の声が周りの人たちに聞こえ、騒然とする。
つり目の子は周りの雰囲気など気にせず対抗するように言い放つ。
「は? 名前も性格も気に入らないから、そうしたのよ。何が悪いの?」
そう言うと、葬式場の門の近くに居た警官がその子の前まで来た。
「ちょっと、門の外までいいかな?」
と警官が言った。流石に事情聴取されると気づいたのか抗うと、無理やり外に連れて行かれた。
亜由はもう一人居た彼女と目を合わせにっこりと笑った。
やったー!!
と、嬉しそうに思った。その後、二人は涙を流した。
早く気づいて助けてあげれたらよかった。そのことは一生、後悔するだろう。
それにまだ美香を殺めた犯人が見つかっていない。
もう、目をそむけたくなる事件は起きないでほしい、と二人の少女は心の中で願った。