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人間話  作者: 撫島 壱
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河童の話

 雷雨が激しく鳴り響く中、キクは木の下で雨宿りをしていた。その木は結構な大きさがあったので他にも数人が雨宿りをしていた。その中でキクのすぐ隣にいた男がただ立っているだけに飽きたのか、話かけてきた。

 「中々雨が止みませんね。今日の天気予報では晴れのはずでしたが・・・」

 たしかにこの雷雨は急なものだった。それ故に誰も対策をしていなかったのだろう。そんな男の言葉にキクは返す。

 「そうですね。さっきまでは雨が降る気配なんて全くなかったから僕も油断していました。」

 他にも油断したのであろう人達がいろんな場所で雨宿りをしている。皆、暇なのかキク達と同じように会話を楽しんでいた。しばらくすると、いきなり男が奇妙なことを言い出した。

 「河童の噂って知ってますか?」

 「えっ?」

 キクもいきなりの話にどう返していいのかわからない。しかし、男は話を続ける。

 「昔話なのですけどね、最近になってなぜか、流行り始めているらしいです。」

 「そうなんですか。暇ですしよかったら詳しく聞かせてくれませんか?」

 興味を持ったのか、キクは男の話を聞くことにした。

 「はい、それは昔々ある男が河童のでる川の噂を聞いてその川に行ったのですが、後日その男は川で溺死していたという話です。この昔話に出てくる川が最近になって本当にあるのではないかという噂が流れ始めたのです。そしてその川に行った人は行方不明になっているらしいです。」

 男の話が本当なら、これは大変なことだ。昔話ならまだしも、本当に人がいなくなったりすれば、大事件だ。無論、死んではいないのだが。

 キクは男にこの件について警察は知っているのかと聞いた。すると男は、「もちろん」と答えた。

 「ならその事件は解決したのですか?」

 男はこの問いに首を横に振った。

 「いや、問題の川がどこか分からないのです。でもこの話自体も噂なので定かではありませんが、行方不明事件の内、何件かはこの噂と関係があるのかも知れませんね。」

 結局の所噂か。と思いながらもキクは少し気になっていた。そんな話をしているうちに雨も上がり、そのまま男とも別れた。



 翌日、キクが学校から帰っていた時のことであった。ふと、途中にあった川を見た。普段は特別気にもしていなかたが、昨日のこともあり、ついそちらの方へ意識が向いてしまった。

 キクはそのまま川の方へ降りていった。

 透明に澄み渡る川を眺めながら、昨日のことを思い出していた。そう、あの話だ。

 「ここの川は綺麗だね。」

 いきなり後ろから掛った声にキクは驚きながら振り替えった。すると、そこには老人が立っていた。

 「いやぁ、驚かせてすまないね。」

 どうやら、老人も驚かすつもりはなかったようだ。

 「こんなに綺麗な川なら河童がいるかもしれないね。」

 老人の言葉に何かが引っかかりキクの表情が変わる。そんなキクを余所に、老人は言葉を続ける。

 「河童の噂を知っているかね。そうだね。ちょうど、こんな川にね。」

 そう言いながら段々と老人の表情が変わる。キクは先程、引っかかっていた何かが分かった。それはこの川に近寄った理由でもあるり、老人が先程口にした河童の噂だ。

 「河童がいて人を連れ込むんだよ。こんな風にね。」

 気がつけば、老人はキクの目の前まで近寄っていた。そして・・・

 「ザバァーン」

 老人に力強く押されたキクは川の中に消えた。



 キクが意識を取り戻すと息ができなかった。川の中だから当然だ。だがキクが意識を取り戻したのには理由があった。なにか背中に違和感があったのだ。そっと後ろを向くと甲羅のようなものが見えた。続いて、皿、背中には水掻きのついた手が見えた。その時はよくわからなかったが、きっと緑色だったのだろう。キクの体はそれに押されて、水面まで上がった。

 そしてキクは「本当にいたんだ・・・」と呟いた。

 

 

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