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クリスマス?

「♪~」


リビングに来るとお袋が鼻歌を歌いながら飾り付けをしていた


「お袋。何してんの?」


「見てわからない?飾り付けよー?」


「だから、何の?」


「もう、玄助ったら…もうすぐクリスマスでしょ?」


「あー…そうだった…」


「すっかり忘れてたのねー…」


はぁ…とため息を吐くお袋


「仕方ないだろ?アッチにクリスマスなんて文化無かったんだから。」


「もう、玄助ったらまだアッチでの記憶と混ざってるのねー」


「そりゃ、アッチでは80年くらい生きたから…」


「長生きねー。でも、今、ここは日本よ?思い出は沢山あるでしょうけど、貴方もいつか夫になり、父親になるのよ?コッチの考えになって頂戴?こういうイベントなんて沢山あるんだから。」


「へーい…」


「む…?これはお義母殿。」


「あら?思春ちゃんじゃない。どうかしたの?」


「いえ、その…厠の明かりが付かなくて…」


「あら、電球切れかしら。玄助、見てあげて。」


「了解。」


そうして思春と一緒にトイレへ行き電気のスイッチをいじるが明かりは’つかず…


「こりゃ、寿命だな…買いに行くか…」


「む?予備は無いのか?」


「多分無いね。」


「そ、そうか…」


「あー思春?トイレなら二階にもあるからソッチに’行きな?」


「うむ…」


よっぽど我慢してたのかな…?すぐ二階に行く思春を見てそう思う。いかん女性のそんなことなど考えては…。


「あ、そうだ。ついでだし、思春も買い物に誘おう。」


そうして降りてくる思春を待つ…


「む?何故お前がここに居る?買い物に行ったのでは無いのか?」


「いや、ついでだし思春も誘おうと思って…待ってた。」


「そうか。では行こう。」


「珍しいな思春が俺の誘いに乗るなんて。」


「良いだろう?お前は私の夫だぞ?それとも自ら誘っておいて文句でもあるのか?」


「いえ、ありません。」


「なら、早く行こう。皆も困るだろうしな。」


「うい。」


そうして思春と一緒に出掛ける。今回は百均なので徒歩での移動だ。


「…。」


「えーっと…思春?何か珍しいモノでもあった?」


「ああ、なんだか行き交う人間が浮かれているような感じがしてな。」


「あー…それはクリスマスが近いからだね。」


「なんだそれは?」


「えーっと…クリスマスってのは…まあアッチで言うお祭りみたいなモンでさ、毎年冬の大型イベントの一つだよ。」


「ふむ…それで、クリスマスとはどういったことをするのだ?」


「んー…聖なる夜って書いて聖夜って呼ばれてて一応神聖なイベント…かな?」


「ふむ…そうなのか…しかしそんな神聖な祭りだと言うのに人々は浮かれているのだ?粛々と進めるものではないのか?」


「んー…もっとラフかなあ…例えば特別な人と過ごしたり、プレゼントを贈ったり。」


「そうなのか?」


「うん。特に恋人たちにとっては欠かせないイベントだね。恋人同士でプレゼントを贈ったり、一緒に過ごしたり…特別な時間なんだよ。」


「なるほどな。と、言うことはお前も何か贈り物を考えているのか?」


「あ、そうじゃん…皆にプレゼント買わないと…」


「お前…忘れていたな?」


ジッと睨まれる…


「仕方ないじゃん。俺だって忘れることくらいあるよ。」


「ほう?忘れるということは私たちは特別では無いということだな?」


「いや、違う。それは否定するぞ?みんな特別だし、凄く俺にとっては大切なんだけど…居ることが当たり前になってたから…それに大陸ではクリスマスなんてしなかったし…」


「ほう…?」


「だからその目はやめてくれ…ちゃんと思い出したから当日ちゃんと用意するよ。」


「偽りは無いな?」


「俺が嘘ついたことがあったかよ?」


「ああ。あるな。」


「ええ!?」


「お前は私の死に際では偽りの笑顔だったではないか。」


「うっ…それは…最後に見る俺の顔が笑顔だったら良いなと思って’…」


「私は…悲しかったぞ…」


ギュッと首に巻いたマフラーを思春は握る…その表情はとても悲しそうで…


「すまん…。でも、愛してる人の泣き顔なんて見たくないだろ?特に悲しい泣き顔なんてさ。未練が残りそうで…俺は…笑顔で見送りたかったんだよ…」


そう言って思春の手を握る


「お前の言い分は分かった。しかし、私は泣いて欲しかった…最後くらい、お前の感情を出して欲しかった…」


「思春…。」


「我らの前で意地を張るな。それとも、意地を張らなければいけないほどの軽い関係なのか?私は違う。お前に何かあれば…私は傷つく…心配になる。お前が逝けば私とて涙は流す。それくらい愛している。」


「思春…」


「良いか?お前で妥協したのでは無い。お前だから惹かれたのだ。だからこそ、お前の子供なら産めると私は思ったのだ。」


「うん…」


「お前は妥協したのか?」


「断じて違う。俺はみんなだから…思春だから選んだ。」


「ならば、もっと私たちの前で感情を出せ。私たちはお前の全てを愛しているのだからな。確かに生まれも育ちも環境も違う、だが、愛し合った仲だろう?お前はもっと感情を出して良い。遠慮をするな。良いか?これは妻としての願いだ。」


「分かった。すぐにとは言えないが善処する。」


「いや、ダメだ。今すぐ決めろ。」


ここまで思春に言われては決めるしかない…誤魔化してもダメだ…もう、愛する人にあんな顔はして欲しく無い…


「分かった。なら、遠慮はしない。思ったことは伝える。だが、男として、夫として、譲れないモノもある…それだけは理解してくれ…」


「分かった。男には男の矜持があるだろう。」


「助かる。」


「これで私の言いたかったことは言った。お前は?」


「俺?んー…」


「今思っていることでも良いぞ。」


「なら…今は思春と出来るだけ長く居たい。思春を独り占めしたい…。」


「ふ…そうか…。ならば…ちゅ…」


道のど真ん中であの思春が俺の頬にキスをする…


「このような往来で口づけはどうかと思ったからな。頬で許せ。」


「あ、ああ…」


突然のことに驚いて固まってしまう俺…。そこから思春は一歩踏み出し俺に笑顔を向ける


「早く行くぞ。玄助。」


思春のあんな笑顔…見たことない…子供が産まれた時も笑顔だったがアレは慈愛に満ちた顔だった…くっそ…あんな恋人に見せる笑顔を今見せるなんて卑怯だぞ…。


そんな思春の不意打ちにドキドキしつつも嬉しくもあり、思春と手を繋ぎ、クリスマスムードの町を恋人として一緒に歩くのであった。

絶対、思春の笑顔は綺麗だと思います。ズルいぞ玄助…そこ代われ。

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