熊の集落
デビュー作です。読んでいただけたら幸いです。
黒くて、長いもふもふの毛。とがった鼻先に鋭い爪。リンの村には食べ物がなく、森へ食べ物を探しに来たところだった。リンはいつだったか、集落のおばあさんの話を思い出した。
「だいぶ昔のことだけれど、ある一頭の大熊が村を襲ったことがあったらしいのよ。その熊は凶暴で人を何人も食い殺したの。熊はとっても危険な生きものだから近づいたらだめよ。」
そんなふうに話していた。でも、眼の前にいるのはまだ子熊だ。そんなに凶暴には見えない。「ねぇ、あなたはどこから来たの?」
返事はない。でも、なにか言いたげにこっちを見てきた。子熊は森の奥へ向かって歩き出した。少し歩くとふりむいて、じっと見つめてきた。何もしてこなさそうなのでついて行ってみることにした。
しばらく歩くと、熊たちが住む巣のようなものがあった。リンはそこへつくとさっき集めていた木の実を落としてしまうかと思った。そこへついた途端にさっきの熊が突然喋りだしたのだから。
「ようこそ、私たちのコロニーへ!」
感じの良い挨拶で出迎えてくれた。
人間の集落と変わらないじゃない!リンはつぶやいた。その日は時間を忘れるほど長いもてなしをうけた。さらに、
「少しばかりですが。」 と言って、集落のみんなで食べても、ひと月はもつぐらいの食料まで分けてくれた。日が傾く頃、リンは集落へ帰ろうとしていた。今日帰ったら熊の集落へいったこと、熊は全然、凶暴ではなかったことをみんなに話そう。きっと人間は熊と仲良くなれる。そう考えながら。
今後も作品を出していきますので、よろしくお願いします。