第4話①
ちょっとタイトルを変更しました。
物語には何の関係もございません。
「ちょっと付き合ってくんない?」
テストを控えた土曜日、今日は部屋で勉強をしようと思っていたのだが、彩華から謎の誘いを受ける。
「テスト前だから無理だ。ていうか友達と行け。」
「はあ?テスト前に誘えるわけないでしょ。」
だったら俺にも配慮しろと思うが、彩華にそんな事を言っても無駄である。
だからといって、今日を棒に振る訳にもいかない。
今回ばかりはしっかり断ろう。
「さすがに無理だ。諦めろ。」
「何で?冬咲とはデートしたくせに、なんで私とはダメなの?」
「デートって、ただの勉強会だろうが。それに、俺達2人で出かけるような仲じゃないだろ。」
言ってしまえば冬咲ともそんな仲ではないが、彩華は冬咲よりもない。
「仕方ないでしょ。あんたしか暇そうなのがいないんだから。」
「だから、勉強するんだって。」
そう言っても彩華は聞かず、部屋に入ってきて俺のベットに勝手に座る。
「行くって言うまで動かないから。」
何て面倒くさい女なのだろう。
このまま居座られると勉強に集中出来ない。
嫌々だったが、俺は誘いに乗った。
連れてこられた場所は、電車で15分ほどの大都市の駅の地下。
ダンジョンと言われている程広い駅地下の移動通路の途中にアイドルグループの巨大ポスターが貼られていた。
「うわー!マジかっこいい!!」
そのポスターの前で今まで見たことないほど目を輝かせており、彩華はテンションが上がっていた。
「お前、こんなものを見るために俺を呼んだのか?」
「仕方ないでしょ。誰かに写真撮って欲しかったんだから。」
「そこら辺に同じファンの子がいるだろ。その人達に頼めよ。」
周りを見ても、同じようにポスターを見に来たと思われる子達が各々写真を撮っている。
頼めば快く了承してくれるだろう。
「なんで私が知らない人に話しかけなきゃなんないのよ。」
「なんだ?人見知りだったのか?それにしては学校では上手くやってるな。」
「みんな黙ってれば勝手に寄ってくるから。話しかけられる分には平気。」
なるほど。
小悪魔的な彩華には男が寄ってくるのか。
馬鹿な奴らも居たものだ。
「てか、早く撮ってよ。」
そう言って彩華の携帯を渡されるので、さっさと終わらせるために、俺は何枚か写真を撮る。
彩華はポスター前で色々とポーズをとり、楽しそうに笑っている。
「どう?どんな感じ?」
こちらに近づいて写真の出来がどうか聞いてくる。
「どんな感じと言われると、その歳でツインテールは恥ずかしくないのかなーって思った。」
「はぁ?喧嘩売ってんの?死ね!」
痛くも痒くもない罵声を受ける。
だが、高校生にもなってツインテールは少し痛い気がする。
まあ、地雷系ファッションと呼ばれる服装をしているためか、よく似合ってはいるのだが。
「おーいい感じじゃん!クズの割にはよく撮れてる。」
俺の頭の中でカチンという音が聞こえたが、我慢だ。
彩華の言動に一々反応してられない。
「もう終わったろ。さっさと帰るぞ。」
「えー!?せっかく来たのにー?」
「元々、俺は用ないんだよ。」
そもそも、今日は勉強予定だったのだ。
さすがにこれ以上は俺の中の予定が狂う。
「じゃあ最後に1枚だけ。こっち来て!」
これ以上何を撮ると言うのか。
俺は溜息をつきながら、彩華に近づく。
「最後だからな─」
突然、彩華が俺の腕を引っ張って来た。
そのまま体が密着し、カシャッと写真を撮る音が聞こえる。
彩華のスマホの画面は内カメになっていた。
「な、何してんだ!?」
勢いよく密着したせいで、色々な所が当たっている。
「別に。ただの記念。ほら、帰るわよ。」
サッと俺から離れて、スタスタと歩き出した。
「なんなんだよ。」
少し熱くなった顔を手で仰ぐ。
照れてしまった自分が恥ずかしい。
「何してんの。帰って勉強するんでしょ!」
自分が引き止めた癖に、急かしてくる彩華に苛立ちを覚える。
一瞬彩華に対して改めかけた考えが消える。
やはりあいつは生意気な奴だ。
絢士郎が足早に彩華に向かってくる数秒、彩華はスマホ画面に写っている絢士郎との写真を見る。
「へへっ!」
少し熱くなった頬を彩華はスマホで隠した。