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第32話②

 「……ここが来たかった店?」


 「はい!この前雑誌に載ってて、気になってたんです!」


 冬咲が行きたいと言っていた店は、映画館から二つ下の階にあるケーキバイキングの店だった。


 「えっと、昼飯を食べるんじゃ?」


 「ケーキはお昼ご飯になりませんか?」


 「ならないだろ」と答えるつもりだったが、本当に不思議そうな顔をしていて、言葉を呑み込んでしまった。


 「さ!早速行きましょう!」


 スキップをしながら冬咲は店内へと入っていく。

 昼飯にケーキとは如何なものかと思ったが、機嫌がなおったようなので、良しとしよう。

 店内に入ると、女性客ばかりで、肩身が狭くなる。

 昼時にも関わらず、賑わっていて、同い年くらいの女の子がケーキを楽しそうに食べている。


 俺達もトレイを取り、食べたいケーキを選んでいく。

 俺はモンブランやショートケーキといったシンプルなものばかり選んだのだが、冬咲は季節限定のものだったり、珍しい果物が使われたケーキなどを積極的にと選んでいる。

 その様子はとても楽しそうで、俺までつい笑顔になるほどだ。

 ある程度取り終わった後、席についてケーキを食べていく。

 シンプルなケーキほど他店と味を比べやすいが、ここのケーキはどれも美味しく、今まで食べた中でも上位に入るほどだ。


 「想像以上に美味いな」


 「でしょ!見つけた時、二人で来たいと思ったんだー!」


 嬉しそうにはにかむ冬咲だが、気が抜けたのかいつもの敬語ではなくなっている。

 それに自分で気づき、少し恥ずかしそうにする。


 「……敬語じゃなくてもいいぞ」


 「え?」


 「だから、俺の前なら敬語じゃなくていいぞって言ったんだ」


 冬咲が普段敬語を使うのは、人と距離を縮めすぎないようにするためだ。

 昔はそういう一面を出しすぎて孤立していた。

 そうでなくなった今も仲良くなりすぎないように敬語という壁を作っている。


 「クラスメイトとかには分かるけど、俺にはいいだろ。……一応、彼氏だし」


 言ってから自分で恥ずかしくなり、顔を背ける。

 そんな俺を見て、冬咲は微笑む。


 「……なら、そうするね。け、絢士郎君」


 「え?」


 思わず聞き返してしまった。


 「いや、その!?苗字呼びだとなんかぎこちないなって。……私、一応彼女だし」


 モジモジとしながら言う冬咲を見て、俺も口元をゆるめる。


 「それもそうだな。れ、麗奈」


 呼ぶと麗奈は顔を上げて嬉しそうにしている。

 同時になども言えないむず痒さがお互いを襲い、口数が減ったままケーキを食べ終えた。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



 「映画、面白かったね!」


 「ああ、恋愛映画はあんまり見てこなかったけど、泣けるシーンって結構あるんだな」


 映画は予定通り鑑賞し、感想フェーズに入る。

 公開初日ということもあり、席は満席で、やはりと言うべきか女性比率が高かった。

 目当てが俳優でも物語でも、初日にしては好スタートの映画だっただろう。

 話自体も面白く、恋愛映画に興味が無い俺でもかなり楽しめた。

 冬咲は大満足だったらしく、テンションは高めだ。

 そんな調子で歩いていると、ゲームセンターのあるチラシに目がいく。

 

 「どうしたの?」


 冬咲もそう聞きながら、俺の視線の先にあるチラシを見る。

 そこには、『映画の半券でクレーンゲーム2回無料!!』と書かれていた。


 「クレーンゲームかー……そういや、しばらくやってないな」


 「私、やったことない」


 「え?マジで?」


 「は、はい…そんなにおかしいですか?」


 おかしい事は無いが、珍しいとは思った。

 しかし、これはあくまで男子目線の話なので、女の子にはゲームセンターに行ったことない人もいるのかもしれない。

 冬咲はゲームセンターの中のUFOキャッチャーに興味津々の様子だ。



 「……ちょっとやってくか?」


 そう提案すると、冬咲は目を輝かせながら頷いた。

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