第28話①
俺はよく、決闘という名の対決を申し出ていた。
きっかけは色々あった。
ゲームで負けて悔しいから、テストで負けたから、俺が好きだった子と付き合い始めたから。
自分でも思う、鬱陶しい奴だと。
自分でも思うのだから、他の奴らはもっと思っただろう。
だから、真剣に相手する奴なんていなかった。
いつも俺のひとりよがり。
勝ったところでゲームで負けたことには変わりないし、テストの点が上がる訳でもない。
ましてや、好きな子が俺に惚れる訳でもない。
ただの自己満足、誰も本気にしないのが当然だ。
なのに、あの男はなんだ。
圧倒的に俺が有利な勝負なのに、食らいついてきて、あんな照れくさい言葉まで叫んで。
ただの女泣かせなどではなかった。
ここまで来れば理解出来る。
冬咲さんが弄ばれている訳では無い。
だから、最後の勝負は彼女に関係なく勝負する。
俺のプライドと答えてくれた三井への感謝を込めて
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クラス席に戻ると、男子達からの質問攻めが待っているので、俺はクラス席に戻らず食堂前のベンチで休憩することにした。
色々と頭を整理したい気持ちなので、日陰になっいるこの場所はもってこいの場所だ。
自販機で買った水を飲み、一度深呼吸をする。
(何か、決闘を受けてから変だな……)
決闘を受けたあの日、つまり徳松と知り合い、あいつに色々と言われてから俺の中で芽生えたことの無い感情が出てくる。
恋ともまた違う、もっと醜い感情だ。
「何?なんか悩み事?」
「ん?うお!?」
声が聞こえ顔を上げると、そこには花野井が居た。
ちゃんと話すのは面談の日以来で、驚きのあまりベンチから落ちそうになる。
「……何してんの?」
「驚かすなよ……別に、悩み事って程じゃねえよ」
「あっそ。……さっきの、すごい事言ってたね」
「……やっぱ聞いてた?」
出来れば聞かれたくなかった事を、一番聞かれたくない一人に聞かれていた。
あんなに静まり返っている時に言うことではなかった。
「あんなに叫んだらさすがにね……、あれってやっぱりそういう意味?」
「正直、何であんな事言ったのか分からん」
冬咲にも言ったことだが、自分でも咄嗟に、無意識に出た言葉だ。
考えてもすぐに答えが出るような事では無い。
「……ただ、徳松と話してると、何か、嫌な感情が出てくる」
「嫌な感情?」
「今まで感じたことないような……お前に話すことじゃないけど」
花野井は日常生活ですら悩みがあるのに、俺の悩みまで考えさせる訳にはいかない。
けれど、話してしまう。
花野井には、本音をさらけ出してしまう。
「……私、その感情を知ってるよ」
花野井の言葉に、少し疑いの目を向けながら見上げると、
「それはね、嫉妬だよ」
「嫉妬?」
「そ、ケンは冬咲と徳松が仲良くする所を想像して、ヤキモチを妬いたんだよ」
「……何でだ?」
花野井の言っている意味が分からず、首を傾げる。
「それは自分で考えてよ。でも、私はその気持ちよく分かるよ」
花野井は俺から目を逸らし、グラウンドを見ながら言う。
「私も、あんなふうに純粋な気持ちになれたらって、いつも思ってるから」
「……花野井」
「この話は終わり!ほら、そろそろ出番でしょ!早く行こ」
「あ、ああ」
俺はベンチから立ち上がり、花野井と並んでグラウンドに戻る。
花野井はいつものように笑いながら話している。
さっき見た、悲しそうな表情が見間違いだったと錯覚するほどに




