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第21話①

 夏休みも終盤に入った今日、朝から俺は陸斗に相談があると言われ陸斗宅へと電車で向かうことになった。

 誠も誘っているらしく、既に向かったとの連絡を受けたので、1人で音楽を聴きながら電車に乗る。

 学生は夏休みだが、社会人には関係なく、朝の電車にはこれから会社に向かう人達で満員だった。

 耳に付けているイヤホンからは好きなバンドの曲が流れていて、気分が良い。

 しかし、ふと視線を落とすと、俺は顔を顰めた。

 俺の隣にいる純白のワンピースを着た女の子が後ろのおっさんから痴漢を受けていた。

 周りの人間は誰も気づいておらず、俺もたまたま見つけただけだったが、ガっとおっさんの腕を掴む。

 

 「何やってんだ、あんた」


 いきなり掴まれて驚いたおっさんは逃げようとするが、伊達に鍛えていない。

 俺の腕を振りほどく事ができず、おっさんは焦っている。

 周囲の人も状況に気づき、おっさんを見張る体制になる。

 俺は被害にあったワンピースを着た女の子の方を見ると、目が合う。

 その瞬間、ドキッとした。

 何か運命を感じたとかではない。

 

 (うおっ!すっげー可愛い子だな。)


 単純に俺のタイプだったというだけである。

 タイプだからといって、一目惚れしたとかではない。

 一瞬だけ固まった俺だが、まずは女の子のケアが大切だ。


 「大丈夫ですか?」


 「え、あ、はい。私は別に」


 できるだけ優しい口調で声をかけると、意外にも軽く返ってきた。

 なんなら、痴漢されたことに気づいてすらいない雰囲気だ。

 けれど、表情は強ばっており、軽い口調とはどうにも合わない。


 「・・・本当に大丈夫ですか?強がってるとか─」


 「いや!別に、そんなんじゃないから!」


 「え、あ、はい。」


 急に口調が変わり、少し仰け反る。

 女の子もハッとしたような表情を浮かべている。

 とりあえず、おっさんと俺、女の子は着いた駅で降り、おっさんを到着した警察官と駅員に引き渡す。

 落ち着いた所で、女の子にお礼を言われる。


 「あの、ありがとう。・・ございました。」


 「いや、大したことでは無いので。」


 変な間があった気がするが、追求するのも憚られるので、無視する。


 「今度からは気をつけてください。それじゃあ」

 

 「あ、あの!」


 立ち去ろうとすると、呼び止められる。


 「こ、この後、お茶とか、どう、ですか?」


 どこか喋り慣れていないような話し方をする。


 「いや、今から待ち合わせで─」


 「お礼!したい、ので。」


 少し強めに言われ、気持ちを無下にすることもできず、俺は了承した。

 陸斗に少し遅れることを連絡すると、うさぎのスタンプが返ってきた。


 「えっと、とりあえず自己紹介でも。俺は、三井 絢士郎って言います。」


 「私は花─」


 名前を言おうとした女の子はそこで固まる。


 「花?」


 「・・・花井 みゆ、です。」


 「・・・花井 みゆさん…」


 どこかの元妹とよく似た名前だが、似ているのは名前だけで、見た目は全然違った。

 花野井はギャルに対し、目の前の彼女は清楚の極。

 冬咲以上の清楚と言えるほどだ。

 ショートの黒髪にすらっと伸びた足。

 白いワンピースが本当に良く似合う。


 「それじゃあまあ、行きましょうか。」


 「そ、わ、…はい。」


 花井さんはどこかぎこちない返事をした。

 

 

 

 

 

 



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