表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/95

第20話②

 「あんなもの二度と乗らない」


 コースターを終えて、俺と笹川は飲み物を飲みながら休憩していた。

 陸斗達は2人で別のアトラクションに向かった。

 結果的に2人きりにすることができたので良しとしよう。


 「だから無理するなって言ったんだ。安い挑発に乗って。子供かよ。」


 「あれは黄名子の言い方が悪いわ。私がムカつくようにわざとやったのよあれ。」


 笹川と和道は付き合いが長い分、お互いの良いことも悪いことも、それこそ弱点すらも知っているというわけだ。

 

 「親友ってのも大変だな。」


 「他人事みたいに言ってるけど、ケンティーだってまこっちゃんと親友でしょ?」


 「まこっちゃんって誠の事か?まあ、親友と言えばそうだが…」


 笹川達ほど付き合いが長い訳ではないので、何もかも知っている訳では無い。


 「まあ何にせよ、しばらく休憩しないと動けない~」


 机にぐったりとする笹川を横目に、手元の飲み物を飲む。

 かなりの値段がした割には、誰でも作れそうな安い味がした。


 「割高だな。このジュース」


 「うわぁー、ケンティーってそういう事言っちゃうタイプ。デート中に言うと嫌われるよー」


 「別にいいよ。デートする予定もないからな。」


 「今は?」


 「子守りの間違いだろ。」


 笹川がにんまりとしてくるので、鼻で笑って返すと、一瞬で頬を膨らませた。


 「そんなんだから、ケンティーはデートのひとつも出来ないんだよ。」


 「バカにするなよ。俺だってデートくらいある。」


 元妹とだけど。


 「そうなの?彼女?」


 「違う。」


 「だよねー。ケンティーに彼女は出来なさそう。」


 それは言い過ぎだろと言いたいところだが、実際にモテた事が無いため反論できない。


 「そういう笹川は彼氏居たことあるのかよ。」


 「それは秘密でーす」


 元気になってきたのか、無駄に語尾を伸ばしたりと鼻につく言い方をしてくる。


 「前にも聞いたけどさ、彼女欲しいとか思わないの?」


 「今は思わないな。」


 「それは何で?」


 「何でって…」


 トラウマのせいだと言えばいいのだが、どうしてそうなったかを説明したくない。

 少し考え、無難な回答を口にする。


 「先が想像出来ないんだよ。付き合ってから何かするところとか。」


 言ってから本心に近いものだと気づく。

 女子に興味がない訳では無い。

 けれど、もし付き合ったとしてもその先が想像できない。

 誰かが俺の隣に彼女として並んでいる景色が思い浮かばない。


 「そんなの、経験してみないと分からなくない?」


 「それはそうだが…」


 「もしかしてケンティー、性欲ないの?」


 「人並みにはある。」


 「え」


 「なんだよ」

 

 「いや、正直すぎて…若干引く」


 自分から聞いておいてその反応はないだろうと思ったが、女子に性欲の有無を言うのは新手のセクハラな気がする。


 「・・・悪かった。」


 「別に謝らなくてもいいけど。そっか、じゃあみゆうにもまだチャンスはあるのか。」


 「花野井?何であいつが出てくるんだ?」


 今の話の流れで花野井が出てくる場面はなかった。


 「それが分からないんじゃ、ケンティーはダメダメだね。」


 勝手に笹川の中だけで完結され、モヤモヤが残る。

 問いただそうとも思ったが、これ以上恋バナを続けたくはなかったので呑み込む。


 「よし!元気になってきたし、私らも行こっか。」


 「そうだな。」


 笹川の顔色が良くなったので、2人で席を立った時だった。


 「お兄ちゃん…」


 か細い声がどこからか聞こえた。

 笹川も聞こえたらしく周りを見渡している。

 しかし、声の主らしき人物はおらず、首を傾げていると、ズボンがぐいっと引っ張られ、下を見ると、小さな女の子潤んだ目で俺を見上げていた。


 「えっと、お兄ちゃん?ケンティーの妹?」


 「いや、全く知らない子だ。」


 知らない子だが、小さな子を放っておく訳にもいかず、俺はしゃがんで女の子に話しかける。


 「えっと、お母さんとお父さんは?」


 そう聞くと、女の子は今にも泣き出しそうな顔をする。

 どう対処すればいいか分からず慌てていると、笹川が言う。

 

 「全く、ケンティーは本当にダメだね。」


 言いながら笹川もしゃがみこむ。


 「お名前は?なんて言うの?」


 「・・・心春」


 笹川が優しく聞くと、女の子は小さな声で言った。


 「そっかー心春ちゃんって言うんだね。私は薫よろしくね。こっちのお兄ちゃんはケンティーだよ」


 心春ちゃんも少し安心したのか、涙は引っ込んだようだ。

 俺は素直に笹川に感心した。

 

 「随分と手馴れてるな。」

 

 「従兄弟の相手とかしてるからね。とりあえず、心春ちゃんのご両親を探さなくちゃね。」


 そう言って笹川は心春ちゃんに手を差し出す。

 心春ちゃんはそれをギュッと握ると、空いた方の手を俺に差し出してきた。


 「えっと…」


 「繋いであげなよ。お兄ちゃん。」


 ニヤニヤと見てくる笹川はムカつくが、ここで拒否をしてまた泣かれても困るので、俺は心春ちゃんの手を握る。

 

 「自力で探すよりも、迷子センターに行った方が良くないか?」


 「それもそうだね。じゃあ自力で探しつつ迷子センターに向かおっか。」


 俺達はトラブルに巻き込まれ、心春ちゃんと手を繋ぎ彼女の両親を探すことになった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ