第20話①
体調が戻ってきたので再開します。
思った以上に長引いてしまい申し訳ありません。
頻度が落ちることもあるかもしれないですが、ご了承ください。
「ん~!来たぞー!!」
暑苦しい太陽が照りつける中、俺は陸斗と笹川、和道の4人で電車で1時間程の遊園地に遊びに来た。
夏休みということもあり、高校生や大学生が多い印象だ。
笹川が俺を慰めるために計画した企画だったが、あれから数日経ち、俺は案外落ち着いていた。
瞳さんにも謝罪はして、一件落着しているので、企画倒れもいいところだ。
笹川には少し申し訳ない。
それと同時に、陸斗と和道の仲を深めようという計画も含まれているので、そっちに専念しようと今日を迎えた。
「黄名子はしゃぎすぎでしょ。」
「いやいや、久しぶりの遊園地ではしゃがない方が失礼でしょ!ねえ、冨永君!」
「わ、和道さんの言う通り!せっかくだし、楽しまないと!」
若干緊張しているのが陸斗の顔を見れば分かる。
和道は気づいておらず、同意した陸斗に笑顔を向けている。
その笑顔を見た陸斗がまた顔を赤くする。
(分かりやす。)
この場に誠が居ても同じ感想を抱いただろう。
ちなみに、誠は今日は別件で来れなかった。
予定にはないダブルデートのような構図になってしまったが、仕方ない。
「よし!まずはあれに乗ろう!」
そう言って和道が指差すのは遊園地ならではの絶叫アトラクションであるジェットコースターだ。
「いきなりハードなの選ぶな…」
「何言ってるの三井君!まずはテンションを上げるために、あえて1番怖いジェットコースターに行くんだよ!」
「その気持ち、めっちゃ分かるぜ和道さん!」
「だよねー!」
和道の意見に陸斗は迷わず賛成する。
やはり似た者同士、考え方も似ているようだ。
俺達が何もしなくても勝手に付き合いだしそうな勢いである。
「ね、ねえ、絶叫系もいいけど、別のやつにしない?」
勝手に話を進める2人に笹川が提案する。
よく見ると顔が青い。
「そっか~薫は絶叫系苦手だもんね~」
「は!?別に余裕ですけど!?」
ニヤニヤとからかうように言う和道に笹川が反論する。
けれど、表情を見ると、説得力がない。
「強がらなくてもいいよ~じゃあ別のにしよっか~」
「く~!やってやるわよ!ほら、行くんでしょ!」
和道の挑発にまんまと乗り、笹川はジェットコースターに向かって歩き出す。
「そう来なくっちゃ!」
和道と陸斗もそれに続く。
笹川は本当に大丈夫だろうか。
運良くあまり混んでいない時間だったのか、ジェットコースターの順番は早めに回ってきた。
係員の指示に従って乗り込むと、前に4までの数字が書かれたボタンがある。
「では皆さん、好きな曲を選んでくださーい。」
どうやら、このコースターは曲を聴きながら楽しむ物らしい。
このボタンで選曲するようだ。
「乗ってる最中に、曲なんて聞こえないだろ。」
「それはあまいねケンティー」
「け、ケンティー?」
笹川しか使わないあだ名を和道が言った。
「好きな音楽ってのは、どんな時だって聞こえてくるのさ。ね?りくとん」
「間違いないね。ケン、選曲は慎重に行うんだぞ。俺はいつも通り2番の曲だ。」
「お!りくとん分かってるね。私も同じだ。」
本当に気が合う2人だと思う。
まだ俺達は何の手伝いもしていないのに、全てにおいて意気投合している。
陸斗もヘタレだという予想だったが、そうでも無いようだ。
りくとんというあだ名に関しては無視しておこう。
「・・・笹川、本当に大丈夫か?」
「え?何が?全然余裕ですけど?」
隣に座る笹川はずっとニコニコと笑っている。
それが逆に怖かった。
「無理はしない方がいいんじゃないか?」
「嫌だなケンティー、無理なんてしてないよ。楽しみだな~」
口角は上がっているのに、目が死んでいる。
余程苦手なのだろう。
だが、もう後戻りはできない。
安全バーが下がり、係員の「いってらっしゃーい」という掛け声とともにコースターは動き出した。
「うわぁー、景色綺麗だなー」
陸斗と和道がワクワクと目を輝かせているのに対し、笹川は死んだ目で上からの景色を見ていた。
景色が目に写っているかは不明である。
「・・・笹川、頑張れ」
俺にはそんな軽い言葉しか出てこなかった。
そして、コースターが上に到達し、急降下した。
「きゃああああ!」
「うおおおおおー!」
陸斗と和道は楽しそうな悲鳴を上げている。
笹川の方からは、何も聞こえなかった。