第1話①
この話を進めるにはまず、俺の親父について話さなければならない。
俺の親父はろくでなしのクズだ。
俺が6歳の頃、親父の浮気が原因で母と離婚した。
母は当時稼ぎが少なかったのを理由に、俺は親父に引き取られた。
その一月後、親父は知らない女性を連れてきて、言った。
「この人が、今日からお前のお母さんだぞ。」
今考えれば、間違いなく浮気相手なのだが、子供だった俺は理解出来ていなかった。
でも、その女性は優しかったし、料理も美味かった。
母親とは思えなかったが、別に嫌いでも無かった。
その時、女性の連れ子だったのが、1人目の義妹冬咲 麗奈である。
冬咲の最初の会話はと言うと・・・
「金輪際話しかけないでください。」
これだった。
突然他人が家族になって戸惑っているのかと考えたが、親父には普通に接していた。
俺にだけ異常に当たりが強かったのだ。
この妹は意味不明な行動が多く、話しかけるなと言う癖に勝手に俺の部屋に入っていたり、学校に行く時は後ろからついてきたり。
意味が分からなかった。
結局、俺が10歳になる頃、親父の浮気が原因で、冬咲の母親と親父は離婚し、冬咲とは離れた。
ほとんど会話も無かったせいか、寂しさというものは無かった。
その一年後、親父は再び再婚した。
その時の女性の連れ子が、花野井 みゆうである。
花野井は冬咲とは違ってうるさい奴だった。
もちろん懐かれていたわけでなく、「ケンが入ったお湯に浸かりたくない」だとか、「同じ空間に居たくない」だとかの思春期特有のやつである。
さすがにムカつくことも多く、花野井とは喧嘩ばかりの毎日だった。
学校でもからかわれる事が多く、その度に反発しあったものだ。
そして、花野井もやばかったが、その母親もやばかった。
まあその話は今度するとして、色々とあり俺が14の時に親父が離婚し、花野井とも離れた。
学校は同じだったが、関係が無くなった事で、話す事は無かった。
そして昨年、15歳になった頃、親父はまた再婚した。
そして、三井 彩華が3人目の義妹になった。
何度も結婚と離婚を繰り返す親父には呆れたし、毎度出来る妹はウザイやつばかり。
兄が好きな義妹など二次元の話である。
そして3人とも同い年。
最悪と最悪が重なり続けた結果である。
彩華は花野井ほどうるさくは無いが、自分がムカついてる時には俺に当たってくる。
花野井との喧嘩のおかげか、俺はある程度の事を聞き流すようになった。
どうせ嫌われているのだから、関わるだけ面倒だ。
高校はできるだけ離れた所がいいと考え、俺は甲真学園に進路を決めた。
それなのに、入学式の日俺は地獄を見た。
同じ学校に、冬咲も花野井も彩華も全員が揃った。
それを見た時の絶望は凡人に理解出来るものじゃない。
だから決めたのだ。
あの3人とは関わらないと。
それなのに・・・
「三井君、なんですか?その服装。校則違反です。」
唯一同じクラスになった冬咲から乱してもない制服の注意を受けている。
「どこがおかしいんだ?ちゃんと説明してくれよ。」
「そんなことも分からないんですか?これだからダメ男は。」
なんなんだこいつは。
俺と話したくないんじゃないのか?
昔っから本当に
「意味が分からん!」
昼休み、俺は友人の唐沢 誠と冨永 陸斗と共に食堂で昼食を取っていた。
「どうした?いきなり。」
「冬咲の事だよ。あいつ何もしてないのに注意してくるんだよ。」
「それはご褒美では?」
陸斗の言葉に本気で引くと、陸斗はわざとらしく咳をする。
「も、もしかしたらケンの事好きなのかもよ?」
「それだけは無いな。絶対に。」
「何で言い切れるんだ?」
「本人が言っていたから」とは言えず、「何となく」と答えておいた。
「まあ何にせよ、あの冬咲さんから話しかけられるって言うのは本当に羨ましいよ。あんなに可愛い子と会話できるならどんな事でもいいし。」
「ケンは冬咲さんを可愛いと思ったことないのか?」
誠の言葉を聞いて、少し考える。
顔立ちは整っていると思う。
でも性格はよく分からない。
妹だった時から、意味の分からない奴だったし。
「あんまり感じたことないな。どちかと言えばミステリアスな奴って印象だ。」
「それはまじで分かるわ。休みの日とか何してんだろーなー」
昔と変わらなければゲームでもしてるんだろうが、俺は適当に答えておいた。
昼食も食べ終わったので、俺達は食堂を後にした。