第6話①
「あ〜、二者面談だり~」
高校最初のテストも終わり、担任から二者面談の通達が来た。
テストの結果が良くなかった陸斗は憂鬱そうに嘆いている。
「まだ最初の面談なんだ。そんなに嫌がる事も無いだろ。」
「それは甘いぜケン。今は高一からもう進路の話されるらしいからな。」
俺の意見に誠が反論する。
その反論に俺は納得する。
確かに、学歴社会の今は早い段階で進路を決めて準備をする者も多いだろう。
「頭良い奴らは余裕で羨ましいぜ。」
「だったらお前も勉強するんだな~」
「正論はやめてくれ~!」
陸斗と誠のやり取りについ笑ってしまう。
すると足を滑らせた陸斗が少しよろけて、通りかかった女子にぶつかってしまった。
「あ!わ、わりぃ!」
「いやいや、こちらこそ。」
陸斗がすぐさま謝ると、その女子は笑顔を向けてくる。
長い金髪を靡かせなながら教室へと入っていった。
「あの子、俺に微笑みかけたよな。」
陸斗は真剣な表情で今ぶつかった女子を凝視している。
「まあ、笑顔ではあったな。」
一応同意を示すと、陸斗は女子を見ながら言う。
「あの子、俺の事好きなんじゃね?」
「そりゃねえな。」
それを誠がすぐに否定する。
「そんなの分かんねえだろうが!」
「いや、陸斗の謝罪を受け入れただけじゃねえか。それに、あいつみゆうとよく一緒にいるやつだぜ。」
「え?みゆうって、花野井さん?」
「お前も見た事あるだろうが…」
誠の問いかけに陸斗は「そうだっけ?」と返す。
どうやら本気で覚えていないらしい。
かく言う俺も、誠に言われるまで気が付かなかった。
どこかで見た顔だとは思ったが、花野井と出くわすと、大概喧嘩になるので、周りに誰がいたかなど把握していなかった。
「確か名前は…笹川、だったかな。」
「笹川さんか。あんな可愛い子を見落としていたとは。女の子マスターとして恥ずかしいぜ。」
訳の分からない事を言う陸斗にとりあえず愛想笑いで返しておいた。
「こちらアイスコーヒーです。ごゆっくりどうぞ。」
今日の放課後はバイトの日だ。
テストも終わり、少し肩の力を抜いて働けている。
「三井君、今日この後、新人さんが来るから。指導の方頼めるかい?」
「この前言ってた子ですか?」
「そうそう。今日からだから。」
テスト前に面接に来た女の子らしく、俺と同じ高校の子らしい。
別に嫌という訳では無いが、少し身構えてしまう。
「お!噂をすれば、来たみたいだ。」
マスターが言うように、扉が開き、長い金髪のギャルが姿を現す。
「すみませーん。今日から働く予定の笹川でーす。」
「さ、笹川!?」
「ん?あんた誰?」
新人バイトは笹川 薫
今日、陸斗がぶつかった少女であり、花野井の友人のギャルだった。