第5話①
中間テストが終わり、結果発表の日が訪れた。
上位10名は昼休みに廊下に名前が張り出されるので、俺は誠と陸斗共に廊下に出る。
既に人だかりができていて、盛り上がっている。
俺達も確認すると、俺の名前が2位の所に記されていた。
「うお!ケン2位じゃん。すげーな。」
「まあ勉強したからな。これくらいは取れないと。2人の名前はあったか?」
「俺はねえな。いつも通りやったつもりだったけど、やっぱ中学の時みたいにはいかねえか。」
誠は中学の時常に10位以内だったが、高校では逃してしまったようだ。
「俺は間違いなくない。勉強してねえから。」
陸斗が自慢気に言う。
部活があるとはいえ、少しくらいはするべきだろうに。
「てか、ワンツーで1組じゃん。」
陸斗が気づいたように言うが、俺は最初から気づいていた。
1位に記されている名前は冬咲 麗奈だ。
授業を見ている限り、賢いのは知っていたが、負けるつもりはなかったので、悔しい。
「冬咲さんは勉強も出来るのか。ますますファンが増えそうだ。」
誠の言うように、既に1組の教室の前に少しの囲みができていた。
みんな冬咲の姿を見に来ているのだろう。
「他はどんな感じだろう、な。」
俺が他の順位の子を確認していると、8位の所で目が止まった。
「誠、あれ。」
「どうした?・・・え!?」
「2人してどうした?」
陸斗は知らないだろうから、驚かないだろうが、俺達2人からすれば、あるはずのない名前がそこにはあった。
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絢士郎達が順位に夢中になっている頃、花野井みゆうはいつもの3人組である和道 黄名子と笹川 薫の3人で食堂に来ていた。
「今日食堂めっちゃ空いてるじゃん。ラッキー♪」
黄名子が空席だらけの食堂を見回しながら大きめの声で言う。
「今日はテストの結果が出るからでしょ。私らには関係ないけど。ね、みゆう」
「まあ、そうだね。」
薫の言葉に私は力が抜けた感じに答える。
黄名子と薫は私の小学校の同級生だ。
中学の頃も何度か遊びに行って、同じ高校を受ける事を決めてからは、一緒に勉強なんかもしてた親友達だ。
「てかさ、みゆうは最近どうなの?」
「どうって、何が?」
薫が突拍子のないことを口にして、私は本当に意味が分からなかった。
「とぼけちゃって~例の彼だよ。みゆうの好きぴ」
「は、はぁ!?だから、そういうのじゃないんだって!?」
「本当に~?あ、もしかして、この前のイケメンの方?」
薫の言うイケメンの方というのは、誠の事だろうが、彼はケンの関係で仲良くなった友達だ。
「そっちは違うから!」
「はいはい。そっちは違うのね~」
そう言われ、しまったと思う。
「ちょ、今のなし!!」
「みゆう顔真っ赤!可愛い~(笑)」
「2人とも何の話してるの?」
「ん~?みゆうの好き─」
「もう黙って!」
そんなふうに言い合っていると、食堂の扉が急に開けられる。
大きな音がなったので、扉の方を見ると誠が睨みつけるような顔でこちらに向かってくる。
「え?ちょ、なになになに!?」
あまりの迫力に薫と黄名子も後ずさる。
私の目の前まで来て、誠はスマホの画面見せてくる。
「お前、どんな技使ったんだよ!」
怒っているという訳ではなく、困惑しているような顔で誠は言った。
スマホには1枚の写真が写っていた。
そこには、8位 花野井 みゆう と記されていた。




