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ぶいなろっ!!~デビュー3分で前世バレする伝説を作ったVTuber。そんな推しライバーの俺に対する距離感がバグっている件。俺はいちリスナーであって配信者ではない!~  作者: 河原 机宏
第2章 変態VTuber集団ぶいなろっ!!

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第90配信 パリオカートぶいなろっ!!杯⑩

 ミラクルメーカーケースその二、バハーム・ウインドさん。この終盤まで派手な活躍を見せていなかった彼女がこの土壇場で運の強さを見せた。

 白熱するレースの最中、不思議なメロディが聞こえ始める。それはとてもレトロなメロディだった。ノスタルジーな電子音とでも言うのだろうか。

 どこか遠い昔……幼い頃に聞いたような聞いていないような……そう思わせるDNAに刻まれた懐メロが皆の心を揺さぶり、そしてそいつは姿を現わした。


 バハームの操作キャラであるスーツパリオの普通車が変形し昔の遊園地の人気アトラクション『パンダカー』へと姿を変えた。


『遂に僕のターンがやって来たみたいですね。――計画通り!!』


 パンダカーは懐かしいメロディをまき散らしながら爆走を始めヘアピンカーブを慣性の法則を無視した走りで曲がりきっていく。

 ジャイアントパンダを模したそいつの双眸は赤く発光し動きもキモいので何かもう怪物にしか見えない。

 バハームはパリオカートのアイテムの中で超激レアアイテムのパンダカーを引いた事でテンションがぶち上げになっていた。

 ソシャゲで言い換えれば一日一回の無料ガチャで激強のSSRキャラを引いた様なものだ。アドレナリンがドバドバ出ている事だろう。

 いつもはクールな雰囲気を装い同じ箱のメンバーを口説いて勘違いさせるしょうもないライバーではあるが、この瞬間は化け物を乗りこなすヤバいライダーと化していた。


『勝てる! このパンダカーの力で僕は新世界の神になる!!』


 ちなみにバハームは漫画のデ〇ノートが大好きでその主人公をオマージュしたキャラ付けをしている。

 彼女の配信は途中までは凄く順調なのだが終盤は色んなトラブルが発生し計画が頓挫する場合が多い。オマージュ先の人物とは違って計算高さは皆無と言っていいだろう。


 快進撃を続けていたパンダカーに突如異変が発生、レトロなメロディーはノイズだらけの不協和音になりパンダカーはガタガタと音を立てて震え出す。

 パンダカーは最強の性能を持つアイテムである一方、使用限界を超えるととんでもない事態に陥る。


『あ、あれ? 何か操作を受け付けなくなったんですけど。え、ちょ、ま……うわぁぁぁぁぁぁ!!』


 パンダカーはバハームのコントロールを離れ、高速横回転しながらあちこちにぶつかり最終的には一際大きく振動して爆発炎上した。昭和レトロな機械を酷使した者の末路がこれだ。


『くっそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!! 松田ァァァァァァァァァッァァァァァッァァァ!!!』


『バハーム選手、パンダカーと共に大爆発! 死神の力は自分に跳ね返ってしまった模様ですぅ!』


『見事な散り際だったわねぇ』


 その他のメンバーも土壇場で強力なアイテムや自分のキャラと相性の良いアイテムを引き当て、自爆したり順位を上げたり最後まで激しいカーレースを繰り広げる。

 アイテム使用不可の警官パリオは数人に抜かれて二位から順位を落とした状態で五連ヘアピンに突入する。

 一位のエルルは五連へアピンを終えようとしている。普通に考えればエルルの一位は盤石であり、皆の意識は二位争いに傾いていた。

 ――が、まだその判断は早い。この瞬間の為にガブは警官パリオを使って自分のテクニックだけで戦ってきたんだ。


 ガブは五連ヘアピン一つ目のカーブ前にある長い直線に侵入した。そして遂に警官パリオ固有の能力を発動させる。


『ここで決める! ニトロ発動!!』


 ガブが警官パリオのニトロを使うとミニパトが一瞬で近未来を思わせるレーシングカーへに変形した。しかも車体の後ろ側には左右にジェット機のエンジンを思わせるブースターが付いている。


『ブースター作動! エンジン臨界点へカウントスタート! ――ちなみにレーシングカーのAI音声は私セシリー・ハルパーが務めさせて頂きマス』

 

 セシリーがノリノリでAI役を務める中、左右のブースターが点火し警官パリオもといフォーミュラパリオは急加速して第一ヘアピンカーブから勢いよくコースアウトした。

 けれどこれは事故でも無ければ自棄やけになった訳でも無い。これこそ先日のメン限配信でガブリスが彼女に授けた作戦だ。


 イキナ山の五連ヘアピンの周囲は崖になっていてコースアウトしたら落下してちゅどーん! しかしたった一つだけこの崖を飛び越える方法がある。

 スタートからレース終盤まで溜めたニトロを使い変形したフォーミュラパリオのブースター加速。

 その状態で第一ヘアピンから飛び出し真っ直ぐ飛んで行けばギリギリ崖を越えられる。しかもその着地点は平地エリア――つまりゴール付近なのだ。

 


コメント

:警官パリオが変形した!?

:ニトロってエンジンのパワーが上がるだけじゃないの!?

:パリオカート初心者が戸惑うのも無理はない

:ワハハハハハハハ!! これがパリオカートのニトロなのだよ。つまり何でもあり!

:ニトロという名のサイバー的フォーミュラな演出アル

:中国語を織り交ぜる事でパロディネタを誤魔化している。姑息……あまりにも姑息過ぎてて草

:セシリー、姿が見えないと思っていたらここで登場かぁ。しかも車載AIの役とは……

:AIがAIの役をするって聞いた事ねーよw

:ガブちゃんがマジで崖越えを実行したぞぉーーーーーーー!

:頼む、届いてくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!

:飛べ……

:飛んでくれ……!

ワンユウ:かっ飛べぇぇぇぇぇぇ、ガブーーーーーーーー!!



『いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!』


 ガブのフォーミュラパリオが崖の向こう側の平地エリアを目指し空を飛んでいく。ここまで溜めたニトロの残量はまだ残っている。このまま真っ直ぐ飛べば崖を越えられる。

 いけるかと思いきや空を飛んでいたフォーミュラパリオの軌道がブレ始める。このゲーム、無駄に空力設定が作り込まれていてジャンプ台等からジャンプすると空中で動きが不安定になる。

 この空中での不安定さがこの作戦のネックでありガブは練習中に何度も失速して崖下へ転落していた。頼む、崖を越えるまで持ちこたえてくれ!


『――っ、やっぱり空中でブレが……でもまだ!!』


『第一加速終了シマス。第二加速まであと二秒!』


『二……一……スパイラルブースター、オン!』


 フォーミュラパリオのブースターから炎が噴き出し空中で更に加速するとブレもより大きくなり不安定になった車体が回転し始めた。ここまで酷いブレは初めて見た。

 スパイラルブースターはスピードが段違いに上がるけど空中で使うと不安定さも段違いに上がるので練習では使っていなかったのだが……ガブには何か策があるのか?

 誰もがフォーミュラパリオが落下すると思った瞬間、奇跡が起きた……いや、違う。これは奇跡なんかじゃない。ガブが実力で起こした必然だ。


『いっけぇぇぇぇぇぇぇぇ!! マ〇ナム……トルネーーーーーーードッ!!!』


 フォーミュラパリオの回転はどんどん加速していき、まるで竜巻みたいな高速回転に達すると空中を真っ直ぐに飛び始めた。

 崖に落下すること無く弾丸の如く平地エリアを目指して飛んで行く。


『こここ、これはどうした事かぁーーーーー!! ガブリエール選手のフォーミュラパリオですが、空中で不安定になって落下するかと思ったら回転を始めて真っ直ぐゴールに向かって飛んでイクぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!』


『銃の弾丸って回転する事で真っ直ぐに飛ぶって聞いた事があるけど、きっとフォーミュラパリオ自体を弾丸に見立てて回転させたのねぇ。……本当に何でもありなのね、このゲーム』



コメント

:マグ〇ムトルネード……まさかこのタイミングでミ〇四駆ネタをぶっ込んでくるとは

:ニトロ搭載のミニパト、サイバーなフォーミュラ、そしてマグナムト〇ネード……この短時間で三つもネタを消化した……狂ってやがる!

:ガブリスの反応を見るにこれは想定外の行動っぽいぞ

:ヘアピンからのニトロ全開ジャンプをガブちゃんに教えたけど、まさかこんな技を繰り出すなんて……

:さすがオレ達ガブリスの推し! リスナーの予想を軽々超えていく!!

:それにしてもマグナムトル〇ードなんてよく知ってたなぁ

:そこら辺はガブちゃんのプライベートを熟知してる総帥に訊くのが手っ取り早い

:教えてエロい人ーーーーー! じゃなかった偉い人ーーーーーーー!!

ワンユウ:そう言えばこの決勝戦前にカーレース系の漫画やアニメを色々観て勉強してた。それがまさかこんな奇想天外な展開になるなんて……

:総帥、あんたエロい人言われたぐらいじゃ動じなくなっちまって……フリー素材並に擦りすぎたか……

:隊長、総帥が不感症になってしまいました!!

:擦りすぎたからでしょうか隊長殿?

:軍曹、二等兵……総帥はお疲れなんだ。生暖かい目で見てあげようじゃないか。いつの日かきっと復活するさ

ワンユウ:軍人トリオ、久しぶりに出てきたと思ったらしょうもない事で俺を弄らないでくれますかね!? レースが佳境なんだからガブを応援しなさいよ

:ラジャー!

:レジャー!!

:ブラジャー!!!

:いつも思うけど、この三人ふざけすぎだろwww

:エロいネタの時にしか顔出さないしな。ライバーではなく総帥を弄りに来るとは思わなかったよw

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