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第159配信 GTR 3日目 バーター

 GTR三日目終了メンテナンス開始の三十分前。『ネオ出島』の各所にゲートが出現、そこから多数のロボットが現れ建物を破壊し始める。それは昨日の出来事の再来であった。

 混乱渦巻く渦中で『ネオ出島』のメイン道路を歩く人物が一人。サングラスを掛けゴールドの全身タイツを身につけたスキンヘッドのオカマ――デルタ。


「イッツショータイム! さあ来なさい、ワタシの可愛い<ポチョムキン>!!」


 デルタの呼びかけに応じるように付近の建物が砕け散り、粉塵の中から十五メートル級のマッシブなロボットが出現した。両腕に巨大なシールドと堅固な装甲を有したその姿はまさに動く城壁のようである。

 デルタは胸部コックピットに乗り込むとオーロラブリッジを目指し道路上を真っ直ぐに進み始める。路上に放置された車が蹴り飛ばされ建物に衝突して爆発、火事が次々に発生し市街地はオレンジ色の炎光に照らされた。


 街中では<ザァコ>と<萌式>が暴れ回り、その蛮行を食い止めるべく<パトライバー>と<ガンライバー>全機が出撃していた。

 メイン道路付近に配備されたガブリエールは敵機集団を相手にしている際に巨大なシールドを両腕に装備している機体が悠然と歩いて行く姿を目撃する。


『あれは……今まで見た事の無い機体。もしかしてあれにデルタさんが乗ってるんじゃ!? 見えてるのに敵が多すぎて近づけない……! あの先にはオーロラブリッジがあるはず。そこに向かっているの?』


 敵機の群れに阻まれて<ポチョムキン>に近づく事が出来ないガブリエールは、この情報をメンバー全員へと拡散した。

 その通信はデルタ本人にも聞こえていた。一瞬だけガブリエールの方を振り向くもすぐに視線を戻しオーロラブリッジ方面へ<ポチョムキン>を向かわせる。そして難なく橋の出入り口へとやって来た。


『量産機がおメスちゃん達を阻んでくれているみたいネ。このまま行けばメンテナンス前に『ナロンゼルス』に到着できるカシラ』


『――なるほど。あなたの目的は『ナロンゼルス』で何かをする事みたいですわね』


 デルタが独りごちるとその言動に何者かが返答した。その直後<ポチョムキン>の頭上を巨大な機体が飛び越えオーロラブリッジへの道を塞ぐように着地する。

 蜘蛛を模した八本脚の下半身、上半身は寸胴のドラム缶のようになっているアンバランスな機体<パピヨンロボ>。

 そのサイズは<ポチョムキン>を超える二十メートル。コックピットには先程までデルタとガールズトークをしていたキャバクラ改め怪盗パピヨン三人娘――メルア、セリーヌ、ネプーチュが搭乗していた。


『そんな動きが鈍そうな機体でここまでやってくるなんて意外だったワ』


『この<パピヨンロボ>の脚力は凄いんですのよ。結構高くジャンプ出来ますし。――話を元に戻しますが『ナロンゼルス』で何をなさるおつもりですか?』


『独り言を盗み聞きするなんてお姫様にしては行儀がなっていないんじゃないカシラ? でもまあそうネ。別に隠す事でもないし、教えてあげましょうカ。ワタシの目的は『ナロンゼルス』の破壊ヨ』


『でもぉ、どんなに壊しても運営さんがメンテナンスの時に修復するでしょお?』


『それはソウ。でもね修復プログラムを運営が実行する時にコンピュータウイルスを忍ばせておいたらどうなるカシラ』


『えーと、どうなるのー?』


『修復プログラムがウイルスに感染したまま実行されれば、ぶいなろっ!!サーバーはバグまみれになるワ。修復の規模が大きければ大きいほど、それに応じてバグの規模も拡大するノヨ』


『なるほど。それで『ナロンゼルス』で大暴れをしようとしていたのですね。あちらの方が『ネオ出島』よりも建物が密集していますから短時間で被害を拡大できますものね』


『その通りヨ。理解が早くて助かるワ』


『でもでもぉ、それなら最初から『ナロンゼルス』の方にゲートを出して暴れれば効率的じゃなぁい?』


『ネプーチュちゃん、あなた中々勘が冴えてるワネ。ワタシ達がゲートを展開できるのは『ネオ出島』の中だけなのヨ。だから『ナロンゼルス』を壊すにはこうしてロボットを出した状態で行かないといけないノ』


『今結構重要な事を言ってた気がするけどバラしちゃって良かったのー?』


『構わないわヨ。これくらいのハンデがないとフェアじゃないでショ。それにこの事実を知ったとしてもワタシを止める事はできないワ。<ポチョムキン>はワタシと同じようにどんな攻撃を受けてもノーダメージ、元気ビンビンヨ』


 峠でカーレースをした際にデルタはショットガンの直撃を何度も受けても炎にかれても無傷であったのは周知されていた。それと同様に専用機である<ポチョムキン>も無敵であれば勝ち目は無いに等しい。

 こんな敵と戦う無理ゲーを強いられたメルア達は絶望しているに違いない――と思う者はデルタだけであった。

 メルア達は事態の大変さを理解しつつもライブレッスンの過酷さに比べれば問題ないと思い、彼女たちの普段の破天荒さを熟知しているリスナー達は面白い事になった程度にしか思っていないのである。


『さてと、お話はこれぐらいにしてそろそろ戦いましょうカ。このロボバトルはエンタメバトルの最終戦。今度こそワタシの圧倒的勝利で終わらせて貰うワ』


『そうですわね。このままですと雑談配信になってしまいそうですし、始めましょうか』


 メルアがメインとなって<パピヨンロボ>が動き出す。鈍重そうな見た目とは裏腹に素早い動きで間合いを詰め、八本脚で<ポチョムキン>に蹴りを入れていく。その際、防御は一切行われず全ての攻撃が叩き込まれた。


『ノーガードぉ!? どういうつもりなのぉ?』


『さっき言ったでショ。この機体は無敵ナノ。まずはそれを実感して貰わないとネ』


『随分と余裕ですわね。でしたら遠慮無くイカせて貰いますわ。四十八手ならぬ四十八脚ですわ!』


 八本脚による素早い連続蹴りを食らわせて距離を取る。<ポチョムキン>は何事も無かったかのようにその場で仁王立ちしていた。

 セリーヌが機体情報を確認すると相手への攻撃判定はあったものの与えた損傷はゼロと表示されていた。


『本当に全然ダメージが無いみたい。ヤバすぎー!』



コメント

:ダメージゼロとか敗北イベントじゃないですか

:こんなんどうやっても勝ち目ないじゃん

:逃げてー!

:この世の最強の生物はオカマだという事が決定した瞬間である

:バグでデータ改ざんして無敵になってるのか

:無敵なんてこんなのチートや! チーターや!

:バグでチーターだからバーターや!!

:草草草

:おいおいw

:バーターはあかんやろwww

:それって抱き合わせ商法のことやろw そんな名前だと弱く見えるぞ

デルタ:バーター。良いわね、ソレ。ワタシ達のチーム名に採用させて貰うワ

:なぬっ!? コメント欄にご本人登場だと? 戦ってる最中なのに器用なことするなぁ

:他にも三人仲間が居るんだっけか。強すぎるだろ。もっと強者に相応しい名前の方が良いよ。少なくともバーターは無い

デルタ:そんな事はナイワ。ワタシ達が力を示せばバーターという名は抱き合わせ商法のイメージから強者のイメージにナル。エンターテイメントっぽくて素晴らしいワ

:何てポジティブ! それにしてもお主、ワンユウ総帥に一杯食わせるとはやってくれるじゃねえか

:それよそれ! あの総帥を一番危険と判断し真っ先に封印するとは見る目がありますな。彼は不可能を可能にする男だからね

:封印された総帥って今なにやってるの?

デルタ:隔離部屋から脱出する条件としてエロゲーのヒロイン全員クリアーを設定しておいたワ。今頃脱出のためにヒロインを堕とそうと励んでいるのではないかシラ

:マジかよwww

:草すぎて腹がいてぇwww

:◯◯しなければ出られない部屋というのは聞いた事あるけど、条件がエロゲクリアーなんてのは初めてだw

:しかもそれをやっているのが総帥っていうのが何とも乙ですな

:ワンユウが出てきた時に是が非でもエロゲの感想を訊かなければw

:この場にいなくとも話題を提供する男ワンユウ。どこまでオレ等を夢中にさせるんだよ。課金したいが課金する場所が無い!

デルタ:ワンユウちゃんって、本当にフリー素材のような扱いなのネ。もう存在自体がエンターテイメントじゃないノ

:他人事のように言ってるが、あんたも大概やでwww

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