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第156配信 GTR 3日目 鉄は熱いうちに叩け、Mも熱くなっているうちに叩け

「これは……死んだわね」


 気まずい空気の中、最初に口を開いたのはドS聖女アンナマリーであった。彼女と同じ事を全員が思っていたのもあってか、これを機に会話再開。


「あら~、こうなったのはあたしのせいよね~。ごめんなさいね、デルタさん。安らかに眠って頂戴ね」


「フェニママが気に病む事なんてないですよ~。そもそもあのニセ社長はルー達を追い詰めていたんですから。ヤっていいのはヤられる覚悟のある奴だけだって言いますし結果オーライでしょ。ね、シャロン先輩」


「その通りだよ!! シャロン達を追い回した報いを受けたって事さ。でもこのままじゃ可哀想だし、火を消して……あれ?」


 火だるまになっているダンプカーを見つめていたシャロンは突然何度も目をしばたかせる。それに気が付いたガブリエール達が視線をダンプカーに戻すと炎の中で何かが動いていた。やがてそれは少しずつ近づいて来て人の形が浮かび上がる。

 炎の中で人影は身体を左右にくねらせながら歩いており、遂に炎の壁から外に出てきた。


「ハァァァァァァァァァァァァイ!!」


 両手を挙げて勢いよく現れたデルタはスーツこそ燃え盛るも全くの無傷であり白い歯を見せてニカッと笑っていた。


「ウソでしょ!? だって爆発してたじゃん! 燃えてたじゃん! 絶対おかしいよぅ、もう何なんだよあれぇ……」


 ここに至るまで何度も感情の波に襲われたシャロンは疲れ果てその場に座り込んでしまう。

 蝋燭ろうそくプレイの余韻から回復しつつあったクロウはショットガンが効かなかった事からデルタが無敵であるという事実を受け止めていた。


「あっはぁ……次は鞭をお願いしますぅ、アンナぁ」


 前言撤回クロウは余韻に浸るどころかM(マゾ)衝動が止まらなくなりデルタの事など頭からすっぽ抜けていた。頭にあるのは女王様アンナマリーにしばいて貰うことだけ。


「口のきき方がなっていないわね。豚がため口なんて百万年早いのよ。こういう時は何て言うのかしら?」


「お願いしますぅ、アンナ様ぁぁぁぁぁぁぁん!! このド変態でドMなわたしを鞭で叩いてくらひゃい!」


「豚の分際で人語を使うなんておこがましい! このっ、豚が!」


「ぶひぃぃぃぃぃぃぃぃぃん!!」


「あっははははははははは!! 本当に豚になってるわぁ。クロウ、あなた人としてのプライドは無いの? ほら同期と後輩たちがあなたの恥ずかしい姿を見てるわよぉ。どんな気持ち? ねえ今どんな気持ちっ!?」


「さ、最高れしゅう……」


 ドS女王様のスイッチが入ったアンナマリーは鞭でクロウを何度も叩き罵声を浴びせ、その度にクロウの恍惚とした嬌声が響き渡る。突如始まった路上SMプレイは豚がその場で果てた事で終了となった。

 

「ふぅー、いい汗かいたわ」


「ありがとうございまひた、女王しゃまぁ」


「ちょっとあんた達、少しはワタシに興味を持ってくれても良いんじゃないノ? ほら燃えてル。ワタシ燃えてるデショ? ダンプ爆発して炎の中から無傷で出てきたのヨ。驚いてくれたのシャロンちゃんだけじゃないノヨ!!」


 シャロン以外からの反応が薄かった為ショックを受けたデルタが必死にアピールしているとルーシーがクスクス笑っていた。


「だってあなた無敵なんでしょ? ショットガンで撃たれても火だるまになってもノーダメージだから放っておいても問題ないでしょ。ていうかぁ、スーツ燃えたままだけど替えの服あるの? このままだと下着姿になっちゃうけど、それはさすがにヤバいでしょ」


「それは心配ご無用よルーシーちゃン。ワタシの本当の姿を見せてあげるワ!」


 スーツが燃え尽きる瞬間デルタが突然輝き出す。眩さの中、彼女たちが目撃したのは全身ゴールドタイツ姿のデルタであった。ぴったりフィットの全身タイツは筋肉隆々の身体で膨れ上がっていた。

 

「あわわっ、タイツがパッツンパッツンだけど大丈夫けぇ? 破けんか?」


「このタイツは伸縮性抜群なうえにワタシの防御能力で破れることは絶対にないワ。だからセンシティブなシーンには突入しないから安心シテ」


「誰もそんな心配していないと思います。それにしても……おかしい。いつまで経ってもワンユウさんが現れない。あのニセ社長さんは明らかに異常な存在。であればバグ処理班のワンユウさんが駆けつけるハズ……くうううううううん、ワンユウさん会いたいよぅ」


「ワンユウちゃんなら来ないワヨ」


「「なんだって!?」」


 ワンユウ来ない発言にガブリエールとルーシーが食いつく。こんなおかしい奴が居るんだから絶対来ると思っていた二人は愕然としていた。本日のGTRではワンユウとあまり会えていない為、二人は重度のワンユウ不足に陥っていた。


「ワタシの目的はあなた達とのエンタメバトル。管理者のワンユウちゃんは確実にその障害にナル。だから予め彼は脱出不可能のお部屋に隔離させて貰ったノヨ。残念だったワネ」


「ちょちょちょちょっと待ってください! ワンユウさんを何処かの部屋に閉じ込めたんですか!?」


「その通りヨ」


「しかもそこからは自分の意思では出られないっていうの?」


「その通りヨ!」


「おまけにワンユウさんをパンツ一枚にひん剝いて腕を紐でベッドにくくりつけて動けなくしたんですか!?」


「その通り……ってストーーーーーーーーップ!! あぶねーあぶねー、うっかり肯定するところだったワ。ガブちゃん、あなたワンユウちゃんを監禁プレイするって言ったノ!?」


「言いました!!」


「ちったぁ悪びれなさいよアータッ! なに清々しい顔で言い切ってるのヨ。相方がこんなおかしいこと言ってるけど、あなたはどうなのルーシーちゃン?」


「実を言うとワンユウ監禁プレイは元々ルーの発案だったりして」


「ぶいなろっ!!のダブル天使はどっちも頭のタガが外れてんじゃねーのヨ!! 怖いわー、ホント怖いわー最近の天使キャラはヨー。正規の天使だろうが堕天していようがいかれてるワ。ワンユウちゃんが気の毒ネ」


 ダブル天使とデルタのボケツッコミの応酬が一旦区切られるとアマテラスが疑問を投げかけた。


「ふと思うたんじゃけど、ルーシーはワンユウさんを監禁プレイする事に反対じゃったんじゃないの?」


「ああ、それ? ルーはあくまで配信の場でやるのは良くないんじゃないかと思っただけで現実でやるのは問題ないと思ってるの。……ハァ……ハァ……ハハ……自由と尊厳を奪われたワンユウが上目遣いでルーを見る光景を想像しただけで興奮するぅ」


「ルーシーちゃん、それは普通に犯罪ヨ。もう本当になんなのよ、あーた達ハ。この場にいるメンバーだけでもSM嬢とその客、犯罪者予備軍の天使と堕天使が居るじゃナイ! シャロンちゃん、フェニスちゃん、アマテラスちゃんも真っ当な生活が出来るか見ていて心配になるワ」


「ぶいなろっ!!メンバーで雑談している時にもよく言われるわね~。あたしとあまちゃんは人に騙されやすそうだからAVに出演してそうとかシャロンちゃんは自宅警備員になってるとか言われるわね~」


「……聞いていてしっくりくるから怖いワァ。配信者としての道があって本当に良かったわね、あーた達」


「デルタさん、心配してくれてありがとう。なんじゃ、いびせえ(怖い)人かと思うたら優しい人そうで安心したわ」


 こうしてデルタとぶいなろっ!!メンバーによるエンタメバトルが始まった。

 一戦目『峠カーレース』はダンプカー爆発による続行不可能という事でデルタの敗北となった。しかしデルタが心底恐怖したのは高い頻度でボケをかまされ呼吸がままならない現状であった。

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