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第153配信 GTR 3日目 めぐりあい峠

 ルーシーはシャロンと一緒に大型バイクで『ネオ出島』の峠方面に逃走を開始。遙か後方ではパトカーのサイレン音が聞こえていた。


「どうやらいたみたいですね」


「良かったぁ。さすがにバイクでカーチェイスは勘弁だよ。ジュラルミンケース持った状態じゃ不安定だし、投げ出されたら多分死ぬだろうし」


「試してみます?」


「試さないよ!! ゲームとはいえ人の命を何だと思ってんだ!!」


「もうシャロン先輩ったらムキになっちゃってー。冗談に決まってるじゃないですかぁ」


「ケースを持っていなかったら後ろからその無駄にでかい乳を揉みまくっているところだよ!」


「別に揉んでも良いですよぉ」


「後でよろしくお願いしますっ!」


 二人が峠に入ると前方に見知った車両が走っているのを発見する。その側面には『食堂 亀甲縛り』と書いてあった。

 併走して運転席を見てみると和風メイド姿のアマテラスがハンドルを握っていた。隣をバイクで走るルーシーとシャロンに気が付くと窓を開ける。


「ルーシーにシャロン先輩、こんにちは。二人でドライブしとるん?」


「あまちゃん、こんちわー。ルー達は銀行強盗して絶賛逃走中。多分警察は撒いたっぽい」


「そうなんじゃ? ギャングさん頑張っとるねぇ。たまには食堂に食べに来てね。うーんとサービスするけぇのぉ」

 

「ほぅ、サービス……ねぇ?」


 シャロンは露出の少ない和服衣装にも関わらず存在を主張する二つの山に注目する。そして視線を落として自分のを見てみるとそこには何の凹凸も存在していない。残酷な格差社会がそこにはあった。

 しかしシャロンはめげない。山を持つとか持たないとかで悩む段階はとうの昔に通過した。ぺえが無いなら有る人ので楽しませて貰えば良いじゃない。そんなスタンス。


「ねえ、アマテラス。そのサービスってお触りは有り? それとも無し?」


「え……? それは店主のフェン先輩に確認せにゃ分からんけぇ、うちの一存では何とも言えんよ。でもウチのお店はお触りパブではないんよ」


「ちょっとシャロン先輩! ルーという者がありながら、あまちゃんのオッパイを触ろうとしてるでしょ」


「だってメスガキGカップよりも大和撫子Hカップの方がレア度が段違いでしょうよ! ルーシーなんて胸触られても笑ってるだけで反応つまらなそうだし、アマテラスは恥じらいがあって揉み甲斐ありそう」


「酷いっ!! ルーだって胸揉まれたら恥じらいますよ。こう、俯いて上目遣いで見る的な。それにあまちゃんは六期生の間で揉まれまくってるから反応が淡泊ですよ。今日も揉んだルーが言うんだから間違いない!」


「ルーシーも大概酷いこと言うとるよ。うちだって恥ずかしいんじゃよ、胸触られるの。声が出そうになるの我慢しとるの!」


「おいおい堪んねーこと言うじゃんかよ、この女神様はよー。乳揉まれて声我慢してるとこ見たいなぁ」


「シャロン先輩サイテー! でもルーもやっちゃう」


「二人共酷いんじゃよ」


 峠も半分を終え連続カーブの坂を下りていると後方からバキバキと何かを壊すような音が聞こえてくる。だんだんとその音は大きくなっていき付近の木々がなぎ倒されるとダンプカーが出てきた。


「何事ッ!?」


「ダンプカー!? 林の中を突っ切って来るなんて頭おかしいんじゃないの?」


「わー、派手な登場じゃね。――ん? 運転席に乗ってるの……社長?」


 アマテラスの指摘に反応して運転席に注目すると、そこにはサングラスを掛けた黒光りスキンヘッド男が座っていた。口角を上げて笑っており小麦肌と対照的な白い歯がキラリと輝いている。


「本当だ。見た目は確かにキャニオン社長……だけど」


「でも社長が配信にああして出る事はあり得ないですからね。社長そっくりのNPCってところじゃないですかぁ?」


「それはそれとして社長のそっくりさんじゃけど、うちらの方に凄い勢いで迫ってきとるよ。このままじゃと踏み潰されてしまうかもしれんよ」


「そ、そうだよ。あんなのに轢かれたら確実に死んじゃうよー! ルーシー、逃げてーーーーーー!!」


「了解でっす。シャロン先輩、落っこちないでくださいよ」


 アマテラスとルーシーは速度を上げてダンプカーから逃げ始める。そのすぐ後ろをダンプカーが追いかけ回し、平和だった峠はパニック映画みたいな危険な場所へと変貌した。

 連続コーナーを猛スピードで駆け抜けるバイクと自動車。急カーブを曲がりきれないダンプカーは木々にぶつかり、それらをなぎ倒しながら無理矢理コーナーを曲がってくる。その常軌を逸する行動が恐怖を煽りまくる。


「うぉいっ! 来てる来てる来てる来てるぅぅぅぅぅぅぅぅ!! マジで何なんだよ、あの社長モドキ。何でシャロン達を狙ってくるの? 訳が分かんないよ」


「訳ならあるワ。それはあなた達とエンターテイメント勝負をするためヨ」


「何か話しかけてきた!!」


「わぁ、声も喋り方もキャニオン社長そっくりじゃね。それにしてもエンターテイメント勝負ってこれがそうなん?」


 依然としてダンプカーは殺意マシマシで前方を走る二台を追いかけ回す。

 エンターテイメントとはネット検索すると『喜びと楽しみを提供する活動の形態』とあるが、これはもはや『恐怖と絶叫を提供するグラサンの催し物』であった。


「その通りヨ。ワタシはあなた達ぶいなろっ!!メンバーと色々な方法で競いたいノ。今回はカーレースで勝負しようと思ったワケ。アンダースタン?」


「あなたのやりたい事は分かりましたけどぉ、それよりも基本的な問題があるじゃないですか~。――そもそもあなた誰?」


 ルーシーのド直球正論質問でその場の会話が一瞬止まる。ただその間も峠のデスレースは続いているので木々がぶっ飛ばされる激しいS(サウンド)E(エフェクト)が響きまくる。


「そう言えば名乗っていなかったワネ。これはソーソーリー。――ワタシはぶいなろっ!!サーバーのNPCがバグによって進化した存在。デルタと呼んでくれると嬉しいワ。あなた達のお友達のセシリーちゃんに近い存在と言えば分かり易いカシラ?」


「セシリー先輩みたいな存在? という事はぁ、アル中なん?」


「セシリーみたいって事は高性能AIだっけ? 何か頭良いんだかクセが強いんだかそんな感じだったよね」


「セシリー先輩かぁ。今までクールな性格と思ってたけど割とデンジャラスだったんでギャップが面白いんですよねぇ。飲酒雑談コラボしたいなぁ」


「セシリーちゃんのせいでAIのイメージが酒カスになってんじゃねーノヨ! ってか皆AIにもっと関心持って! そんなフワッとした感想はヤメテーーーーー!!」


「あははっ! 必死で草」


 こうして始まったぶいなろっ!!メンバーVSデルタによるエンターテイメント勝負。実際はメチャクチャな彼女たちに振り回されるのがワンユウからデルタに変わっただけなのだが、その事実に当人が気が付くのは数時間後の話である。

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